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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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イギリスの少年A 映画『BOY A』

さて、『手紙』を観た翌日、試写で11月公開のイギリス映画『BOY A』を観た。
タイトルどおり、主人公はもと「少年A」。
10歳のときに犯したある罪で服役し、刑務所の外に24歳になって出る。
貴重な青少年時代に服役してたせいか、体は大人でも中身は子どものようだ。
彼はジャックと名前を変え、誰も知らない場所で新たな人生を送り始める。
そんな彼を支えるのは、父親のように親身になってくれるソーシャルワーカーのテリーだ。
運送会社で働く彼に、やがて友人や恋人ができる。
愛する人には本当のことを打ち明けたいと思うジャックだが、テリーは絶対に口外するなと思いとどまらせる。

世間では、かつて社会を騒がせた「悪魔の子=少年A」が出所し、どこかで暮らしていることが話題になっていた。
現在の顔がモンタージュで作られ、新聞のトップを飾る。ネットでは懸賞金がかけられる。
ジャックは目立つことを避け、真面目に生きようとするが、世間はそんな彼をまだ許していなかった。

前日に観た『手紙』と設定は似ているが出来は雲泥の差。
『手紙』は犯罪者の家族なのに対し、こちらは出所した犯罪者だが、世間の目を避けてなんとか生きようとしているところは同じだ。
同じように工場で働き、友人や彼を好きになる女性も出てくる。
ただしこちらのヒロインは沢尻エリカじゃなくて、「白鯨」とあだ名される太目の女性。
地方の運送会社に沢尻エリカがいたら、リアリティがない。
この彼女は沢尻エリカのように目立つショットもなく、すんなりジャックの物語に溶け込んでいる。

観ていて思ったのは、こちらはちゃんと時間をかけて少しずつ主人公ジャックの良さが観客にわかり、
彼に共感できるように作られていること。
『手紙』で足りなかったのは主人公の魅力だ。
ただ暗いというだけで、何で彼が女性にもてるかもサッパリだった。
暗い中にもちょっとしたやさしさを垣間見せるとか、そうした描写がなかったので説得力がなかったのだろう。
本作のジャックは、少年のような無垢さと小動物のような怖れを併せ持っている。
俳優の力量かもしれないが、ここはやはり演出力の差も大きいのだろう。

日本でも「酒鬼薔薇」少年が社会復帰したことが前に話題になっていた。
興味本位に彼を探し回ることは、この映画で世間が主人公を追い詰めていくことと同じだろう。
そんなことを考えさせてる佳作だった。
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by mahaera | 2008-10-10 10:01 | 映画のはなし | Comments(0)
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