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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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遅ればせながら 『シークレット・サンシャイン』を観た

昨年、僕と旅行人の映画サイトをしている金子君と今野君が2人とも年間ベストテンの一位にあげた、『シークレット・サンシャン』。見逃していたが、昨日DVDでようやく観ました。

いやー、すごい映画だった。ラース・フォン・トリアーの『奇跡の海』を観たときと同じぐらい、息詰まりながら、主人公がどうなってしまうんだろうと、のめりこんでしまった。

監督は韓国の文化大臣もしているイ・チャンドン。前作の『オアシス』は、僕が韓国映画を本格的に観出したきっかけになった映画のひとつ。これも見てない人はソンをしていると思うくらいすごい映画で、この『シークレット・サンシャン』もそれに匹敵する映画だと思う。なぜ、キネ旬ベストテンで無視されたのかがさっぱりわからない。

夫を交通事故で亡くしたシネが、夫の故郷だった町へ小さな息子を連れてやってくる。そこでピアノ教室を開いて再出発しようというのだ。ちょっとしたきっかけから知り合った自動車整備会社の社長キムは、なにかと彼女の世話をする。知的で陰のあるシネと、俗っぽく明るさを失わないキムは対蹠的。シネは息子を塾に通わせる。土地を買いたいというシネに、キムは地元の有力者を紹介しようとしたり面倒を見るが、シネはそんな彼にまったく興味がない。シネが「土地を買いたい」ということを聞きつけたのか、シネの息子が誘拐される。取り乱すシネ。やがて犯人がつかまるが、心の平穏は訪れない。シネはキリスト教に入信するのだが…。

話の展開上、ストーリーを詳しくかけないのだが、犯人探しの物語ではなく、犯人はあっさりつかまる。そこからがこの物語の真髄だ。映画のほとんどはシネを中心に動き、キムは常に後ろに配置される形で描かれている。が、シネのアップダウンが激しすぎれば過ぎるほど、常に彼女を見守っているキムの存在が大きくなっていく。キリスト教に入信し、神に救いを求めるシネだが、そこは偽善の世界だ。しかしこれは神の存在を否定する映画ではない。絶望の中、最後にうっすらと希望の光が差してくる。陽の光はすべての人にわけへだてなくさしていく。この映画の中では、主人公を教会にさそう信者ではなく、常に暖かく見守っているキムがそうだ。

主人公が不幸体質ということもあるのだが、どんどん精神的に追い詰められていく場面の連続には息が詰まる。しかし次を観ずにはいられない。この女性に幸せは訪れるのだろうか。的確な撮影プランが、彼女の心情を見事に映像化している。

主演のチョン・ドヨンは本作でカンヌ国際映画祭最優秀主演女優賞を受賞した。そしてキムを演じたソン・ガンホ。実にすばらしい。韓国映画最高の俳優だと思う。テレビドラマにも出ないし、イケメンじゃないのでオバサマ方には知られていないが、『殺人の追憶』『大統領の理髪師』『JSA』にも出ていた名優だ。

シリアスでヘヴィなドラマだが、ずっしりと重量感ある映画を観たい人におすすめだ。
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by mahaera | 2009-10-31 00:34 | 映画のはなし | Comments(0)
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