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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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映画紹介 『倫敦から来た男』

なかなか面白い映画をひとつ。ただし見る人を選ぶかもしれない。

『倫敦から来た男』 タル・ベーラ監督 12月12日シアターイメージフォーラムにて公開

『サタンタンゴ』『ヴェルクマイスター・ハーモニー』といった作品で、一部の映画マニアに評価が高いハンガリーの鬼才タル・ベーラ。しかし僕は彼の作品は今回が初めてなので、比較は出来ないが、本作を見て他の作品も見たくなってしまった。

映画はモノクロ。まず冒頭、夜、水面からカメラが上昇していくと停泊している船のへさきが映る。そのままカメラは静かに船上へとゆっくりと上昇していく。長い。このまま永遠に物語が始まらないと思っていると、船上の男達の会話にいきつく。その後、カメラは左右に動き出す。下船する人々、船上の男達、桟橋に止まっている列車に乗り込む乗客たち、船を降りた男が桟橋の反対側へ行き、船上の男が放り投げるカバンを受け取る。出発する列車、そして殺人。ここまでを、桟橋に面したホームを見下ろす制御室にいる主人公の目線と時間で語る、30分近いワンシーン(しかもほぼワンショット)に圧倒された。この30分で、観客である僕の時間間隔は、完全に現実ではなく、この映画時間に引き込まれたのだ。ここが圧倒的にすばらしく、緊張が解けた次から続くシーンで、僕は10分ばかり寝てしまったのだが(笑)、映画は後半に向かって再び緊張を取り戻していく。

主人公は桟橋を見下ろす制御室で、毎晩、線路の切り替えをしている鉄道員のマロワン。その晩、マロワンは、ロンドンから来た船に乗っていた男ブラウンの殺人を目撃してしまう。ブラウンが逃げ去った後、マロワンは殺された男が持っていたトランクを海中から拾い出す。中には大金が入っていた。やがてロンドンから刑事がやって来る。

主人公は感情表現が苦手で無口な男。犯罪者からネコババした大金を手にした主人公は、悪人なのか。それとも最初は興味本位、そして魔が差したのだろうか。家では妻にののしられ、娘にもいいところを見せたい。こんなにあるなら、ちょっとぐらい使ってもいい。そんな思いだったのか。主人公の感情の動きは、ただカメラの動きだけで示される。切り返しのショットはほぼなく、ほぼワンシーン・ワンショットないので、映っていない部分は、観客が想像するしかない。途中で他の人物の表情を知りたくても、カメラは動かない。しかしそれが余計にこちらの想像力を刺激する。

ああ、昔、まだ僕が高校生ぐらいのとき、こんな映画を背伸びして観ていたな。
高田馬場のACTミニシアターだっけ? モノクロの古い映画。座席などなくて、床に座布団を敷いてみていた。
そんなことを、ふと思い出した。ラストシーンからの余韻もその時の雰囲気に似ている。
最後は、むなしさが残る。たぶん、倫敦から男さえ来なければ、貧しいながらも男の一生は平凡なまま終わったろう。でも運命にあがなえない。元に戻ることは出来ないのだ。

でも、この映画、アメリカ映画ばっかり見慣れた人には、無理だろなあ。

こちらにもこの映画の映画評をアップしています。
http://www.ryokojin.co.jp/tabicine/manfromlondon.html
公式HPはこちら
www.bitters.co.jp/london/


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by mahaera | 2009-11-13 17:11 | 映画のはなし | Comments(0)
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