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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』を観る

『カティンの森』 ポーランド映画 アンジェイ・ワイダ監督 12月5日より、岩波ホールにてロードショー

映画の影響か、第2次世界大戦ではいつもドイツが悪役。ドイツが悪役なら、ドイツと戦っている片方は「正義の味方」ということになるが、実際はそうではない。、第2次世界大戦開始のきっかけとなった「ポーランド分割」では、ソ連も一方的にポーランドを占領。そして、その際に行ったこの「カティンの森」事件を起こす。

ポーランドをドイツと半分こにしたソ連は、大量のポーランド軍の兵士を捕虜にしたが、そのうち将校のみを隔離し、カティンの森で1万5千人を密かに処刑する。将来、指導者となりそうな彼らは、ポーランド支配に目障りだったからだ。しかし、まもなく独ソ戦が始まり、ソ連領内に攻め入ったドイツ軍は、虐殺現場を発見。これはドイツにとっては「ソ連もひどいことしていますよ」というプロパガンダには格好の事件で、事件を世界に発表する。もちろん正義のためなんかじゃない。ドイツはドイツで別の虐殺をポーランドで行っていのだから。

映画は、虐殺された将校たちの視点もあるが、中心は残された家族、とりわけ女性たちの視点で作られている。夫が収容所へ送られ、音信不通となり、待ち続ける妻。ワイダ監督の父もポーランド軍の将校で、この事件で虐殺されたが、母は死ぬまでその事実を知らず、夫の帰還を待ち続けたという。戦後、ポーランドを占領したのはソ連で、この事件のことは長らくタブーだったのだ。ソ連とドイツという強国に蹂躙されたポーランド。しかし、戦後の戦争裁判でもそのことは取り上げられなかった。何しろソ連は「勝った」側なのだから。

日本同様、ポーランドでも現在の若い世代は戦争のことを知らず、この事件のことも風化寸前だという。高齢のワイダ監督は、自分が生きている間に何とかしてこの資源のことを伝えたいと思ったのだろうか。戦争に正義はなく、人々は権力者に利用され、殺された人々の家族に深い傷跡を残す。ヘヴィな作品かもしれないが、重量感のある骨太の、映画らしい映画だ。★★★★

この映画のレビューはこちらにも書きました(旅行人「旅シネ」)

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by mahaera | 2009-11-18 09:51 | 映画のはなし | Comments(0)
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