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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画批評 ソダーバーグ監督の新作『インフォーマント!』 を観る

『インフォーマント!』  スティーブン・ソダーバーグ監督 12月5日より恵比寿ガーデンシネマにて

実際にあった事件をもとにしたコメディだが、当事者たちは笑うに笑えなかったろう。
スティーブン・ソダーバーグ監督の新作は、快作『エリン・ブロコビッチ』に近い、実録コメディだが、ハッピーエンドといっていいのか…。

1992年、イリノイ州にある農業関係の大企業(コーンから添加物を作る)で働くウィテカーは、33歳にして重役、家庭生活も円満。ところがある日、工場でウィルスが発生。それによって失う損失を副会長に責められる。日本企業のスパイから脅迫を受けたと報告したことから、FBIが介入。しかしなぜか録音機を取り付けに来た捜査官に、ウィテカーは会社が違法な価格協定を行っていると告白。その日以来、ウィテカーは巨大企業の内部告発者になるのだが…。

まずウィテカー本人になりきるために、10キロ以上も増量したマット・デイモンの容姿に驚いた。若くして大企業の重役で、年棒も申し分ないのに、なぜ会社を裏切る? 正義のため? この男、愛嬌があり人畜無害でとても頭が切れそうには見えない。しかし成績優秀。つまり、相手を油断させるのは得意なのだ。
その彼が、企業の内部告発者となる。世界中の名だたる企業が談合して、価格を決めているというのだ。しかし告発によって、彼が得るものは? 「そんな不正は許せませんよねえ」と言って高給をもらい、仕事を続けるウィテカー。FBIへの協力に積極的で、盗聴マイクやカメラというスパイもどきの行為に興奮気味。きっかけとなった、「日本企業のスパイが工場にウィルスを撒いている」など、その後どうなったの?という疑問が浮かぶが、何となく次から次へといろいろ重要なことが出てきて、なおざりにされてしまう。そこですでに彼のペースに乗っかってしまうのだ。

で、この映画、後半は意外な展開になっていく。
それはここで書いていいものなのだろうか。でも、こういう人、巷にいるいると感じると思う。
ただそれが、企業の重役にまでなるほど、仕事が出来て信用がある人では少ないから、映画になったのだ。
この事件、アメリカでは「もっとも企業内で地位の高い内部告発者」として有名になったらしい。
しかし、その後の展開で、さらにみな驚いた。

ウィテカーは告訴され、刑務所に入ったが、現在は出所して別の企業の重役になっているという。
彼に悪気かあったのかなかったのかは、本人でもわからないのだろう。

けっこうケラケラ笑えるが、こうした事件はやはり当事者にとっては深刻だが、他の人には喜劇なんだろうなあ。いや、深刻な事件も喜劇になりうるということか。
僕は「姉歯の耐震偽装事件」を思い出した。あれだって最初は、みんな姉歯かわいそうと思っていたでしょ。
で、カツラだったし。あれこそ、日本でコメディで映画化して欲しいですね。

ということで、名作ではないが、なかなかの拾い物かも。
マービン・ハムリッシュ(『スティング』『追憶』)の70年代風映画音楽も聞きどころ。

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by mahaera | 2009-11-19 11:13 | 映画のはなし | Comments(0)
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