「ほっ」と。キャンペーン
ブログトップ

旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

おすすめDVD 『ラースと、その彼女』 笑ってホロリとさせられた

くだらないギャグ連発のアメリカン・コメディも好きだが、僕が一番好きなコメディはこんなタイプかもしれない。
無理やり笑わそうしているんじゃなくて、人生のちょっとしたことが、人にとっては笑いになる。
『イカとクジラ』、『リトル・ミス・サンシャイン』とか。

この『ラースと、その彼女』もそんな映画のひとつだ。

舞台はアメリカの田舎町。町の住民が皆顔見知りのような小さな町。
27歳の青年ラースは、優しい若者で皆から好かれているが、女性との付き合いは苦手。
彼に思いを寄せる職場の女性もいるが、なぜか逃げてばかり。

いつも自分の家に閉じこもりがちなラースを、同じ敷地内に住む兄夫婦は心配して食事に誘うが、
ラースは応じない。
女っけがなく、遊びにも行かず、一人でひっそりと暮らしているラースだったが、ある日、兄夫婦に
「紹介したい人がいるんだ」
と告げる。大喜びする兄夫婦だったが、ラースが連れてきたのはなんと等身大のラブドール(ダッチワイフ)。

「弟がおかしくなった!」とあわてる兄だが、ラースはふつうにそのラブドール、名前はビアンカと話を始める。
ラースとその彼女ビアンカを騙し騙し病院に連れて行くが、医師は
「ラースの妄想だが、それを受け入れることで、少しずつ事態は解決するかもしれない」と言う。

ラースを愛する町の住民達はそれに協力。ビアンカを生きている人間として迎え入れることにする。
要は、ラースに調子を合わせることにしたのだ。

ビアンカといるラースは明るくなり、今までは絶対に行かなかったようなパーティにもビアンカ同伴で出席するようになる。
またビアンカもずっとラースといるわけでなく、「ブティックのモデル」や「ボランティア活動」をするように。
しかしそのうち、ラースに変化が訪れ始める。

冬の寒さが厳しいアメリカの田舎町。
冒頭、寒々しい部屋にひとり閉じこもっているラースが、彼の心のうちを表しているようだ。
ラースの母は出産後、死亡。
極端に無口な父親に嫌気が差した兄は、父親とラースを残して出て行ってしまった。
父の死後、兄は戻ってきたが、父をラースに押し付けて、逃げ出したことを後悔している。
ラースはきっとそれまで、とても静かな生活を送ってきたのだろう。
人とコミュニケーションをとるのが苦手。そして見かけとは裏腹に、心はまだ少年のまま止まっているのだ。

そんな彼に変化が訪れたのは、兄の妻の妊娠だ。
自分を生む時死んだという母への想い、そして「妊娠」して体型が変わっていくという女性の生々しい姿を見て、初めて女性を意識したのかもしれない。
そんな彼が、インターネットでラブドールを購入する。
しかしセックスのためではない。そもそも彼の心はまだ少年だから、セックスの意味すら知らない。
むしろ、小さな子どもが空想上の友だち(イマジナリーフレンド)を作ったり、ぬいぐるみに話しかけたりするのと似ている。
「大の大人が」と思うかもしれないが、ラースの仕事の同僚だって、仕事場にフィギュアを並べたり、クマのぬいぐるみを飾ったり、それにちょっかい出した出さないなんてで喧嘩までしている。

ふつうだったら薄気味悪い「変態」にされてしまうラースだが、この映画の中では、町の人々の優しさが彼を包み込む。
邦画だったら、「優しさの押し売り状態になってしまいそうな設定だが、このあたりが実にうまい。
周囲の人々が、ラブドールを連れ歩くラースを、優しく受け入れるところがこの映画のキモで、
多くの映画は奇抜な設定は作られるが、ここで失敗してしまうと思う。

やがて、ラースは「ビアンカ」と口論をするようになる。
今まで気にもしなかった同僚の女の子に彼氏ができたのも気になる。
「嫉妬」という感情が芽生えたのだ。

長い冬が過ぎ、町に春が来るころ、ラースは少年から大人へと成長していく。
そして生身の女性を愛することを知るのだ。

僕の好きな映画に『シザーハンズ』があるが、ラースはある意味エドワードのような存在だ。
2人とも孤独だったが、ラースはずっと町に住んでいながら、誰もそれを気づかなかったのだ。

笑いながら、ホロリとさせるこの映画、DVDでレンタル中なので、見つけたら借りてみては。
公式ホームページ
[PR]
by mahaera | 2009-11-27 11:44 | 映画のはなし | Comments(0)
<< インフルエンザが流行っている 毎度お知らせです おださがスク... >>