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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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DVD評 オリバー・ストーン監督『ブッシュ』

前の書き込みで「2本紹介」と書いて、『バーン・アフター・リーディング』しか紹介していなかった!

もう一本はオリバー・ストーン監督の『ブッシュ』。
大のブッシュ嫌いのストーンだけに、『華氏451』以上にブッシュをけなす作品かと思われていたが、
ふたを開けてみると「意外にブッシュに同情的」との評が。

原題は『W.』
ブッシュ大統領の父ブッシュも同じ名前で大統領だったため、
区別するためにアメリカではミドルネームの「ダブリュー」で呼ばれるのが、普通だとか。

若い頃から何をやっても半人前なW。
厳格な父親はいい加減なWよりも、優秀な弟を愛しているとWは引け目を感じてしまう。
仕事をやってもすぐ辞めてしまい長続きはしない。
やがてアル中になったWだが、キリスト教原理主義教会に救われ、更正
政治家としての道を歩みだす。

映画の中のブッシュは、悪人でも偽善者でもない。
むしろ、偉大な父親を乗り越えようと努力し、
私利私欲ではなく真面目に正義を行おうとする男だ


若い頃から、常に父親の存在が重くのしかかっていたため、
認められたい思いが、いつしか父親を超えたいという望みに変わり、
ついには父が倒せなかったサダム・フセインを倒すことが目的となる。
イラクで勝利してこそ、父を超えることになると信じて。

「流れに近づくな」
と父ブッシュはWに警告する。
しかしWは、何が何でも戦争をしようという側近達を信じ、いいように操られてしまう。
側近達は「正義」など関係なく、金儲けのために戦争を遂行しようとする。
唯一の反対派だったパウエルも、多数派の意見に従うしかない。

ホワイトハウスの側近達のシーンが、コメディと思われるほどおかしいが、
その結果、多く人々が無駄な血を流したことは事実。


で、ふと思ったのだ。
この物語の骨組みは、ギリシャ悲劇やシェークスピアにつながる非常に古典的なものだと。
偉大な父王の跡を継いだ平凡な息子が、父を乗り越える業績を上げようとするが、
その野心を側近達に利用されて、悲劇を迎える。
ストーン監督の『アレクサンダー』もそんな感じだったし。
現実は、側近に裏切られて死ぬという結末はまだないけれど、
それがあれば悲劇として完成できた、Wの物語だった。
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by mahaera | 2009-12-15 11:34 | 映画のはなし | Comments(0)
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