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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画評 『かいじゅうたちのいるところ』

『かいじゅうたちのいるところ』 1月15日より丸の内ルーブル
監督・脚本:スパイク・ジョーンズ

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原作となったモーリス・センダックの絵本は、
誰もが子どものころ一度は読んだことがあるのではないだろうか。
親に怒られたマックス少年が自分の部屋で謹慎しているうちに、
部屋が変化していって、“かいじゅうたち”が棲む島に変わっていく。
“かいじゅうたち”の王になったマックスだが、やがて島を去るときが来る。

この絵本をどう映画にするのか興味津々だったが、
『マルコヴィッチの穴』や『アダプテーション』といった風変わりな話を
映画にするのが得意なスパイク・ジョーンズは、
ある意味原作に忠実に映画化していた。
大人なら3分で読み終わってしまう絵本を「忠実に」というのは
ストーリーではなく、「印象」のこと。
ストーリーのほとんどは新たに作られたものだが、
映画の印象は絵本の印象とそう変わらない。
むしろ映画を観たあと、絵本もそんな話だったかなと思ってしまうほどなのだ。

とにかく冒頭の20分は最高! 
姉とその友だちに雪合戦を挑む10歳の少年マックス。
中学生か高校生ぐらいの姉の友だちが本気で戦いに応じれば、
たちまち雪の家はぺっしゃんこ。
シングルマザーの母親には、新しいボーイフレンドができて、
マックスをかまってくれない。
急に訪れた孤独に、マックスはとまどい、苛立つ。
そして家出。ここまでは本当にスピーディな展開で、文句なし。

「かいじゅうたちのいるところ」に着いたマックス。
“かいじゅうたち”は原作の絵本同様、ユーモラスだが強暴な面もあり、
マックスを食べようとするものもいる。
小さな子どもなら観ていておびえてしまいそうなほど、ちょっと怖げ。
食べられないようにするため、「僕は王様だ」とウソをつくマックス。

森を駆け出すマックス、“かいじゅうたち”とはしゃぎまわるマックス。
そこにカレン・オーの高揚感をもたらす音楽が流れ、
こちらの気分を大いに盛上げてくれる。
このあたりは音楽の効果がかなり大きい。

映画には高揚感だけでなく、沈み込みがちな暗いトーンの部分もあり、
そのあたりが長く感じられるのがやや難かも。
それでも見る価値は十分にある。
誰でも子どもだったころがあるから。
家に帰ったマックスは、ちょっぴり成長をしている。
大きくなったら、マックスは“かいじゅうたち”のことは忘れてしまうかもしれない。
でも、心の奥底には、きっと“かいじゅうたちのすむところ”はまだ残っているはずだ。
(★★★☆)

旅シネに掲載したものに少し手を加えて転載しました。
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by mahaera | 2009-12-26 21:02 | 映画のはなし | Comments(0)
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