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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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マハエラ的カルト映画館 『ラ・スクムーン』 ジョゼ・ジョバンニ監督 その2

この映画、まずオープニングにしびれる。
教会の中で、殺し屋にお金を渡して、指図する男。
日の当たる屋外で、イスに座り、靴磨きの少年に足を出すベルモンド。
その景色の後ろのほうに、突然殺し屋が現れる。
さっと振り向き、一瞬のうちに、殺し屋を打ち倒すベルモンド。
画面奥のほうへ歩いてくベルモンド。死んだ殺し屋の後ろの家の扉があき、
手回しオルガンを抱えたメキシコ人が出てきて、映画のテーマが流れ出す。

画面はそこからタイトルシーンに変わり、暗闇の中から
映画のテーマを弾きながら手前に歩いてくるメキシコ人のアップに切り替わる。
そして『ラ・スクムーン』(死神)のタイトルが。まるでホラー映画だ。

この映画で一番印象に残るのは何かと聞かれたら、十中八九の人が
この手回しオルガンによる、メインテーマと答えるだろう。
僕もそうで、小学校のときに親が買った
映画音楽のオムニバスLPのなかでこの曲を見つけ、繰り返し聴いていた。
映画をテレビで見たのはその数年後だったが、そのメロディーはしっかり覚えていた。
とてもいいメロディーだ。この映画自体では音楽が流れるシーンが少ないので、
要所要所にこのメロディーが流れるたびにほっとする。
悲しいんだか、陽気なんだか、わからないメロディー。
音楽はフランソワ・ド・ルーペ。

二挺拳銃のベルモンドがカッコいい。
とくに映画が始まって1時間ほどのアメリカ黒人ギャング団との戦い。
ここが映画で一番の見せ場なのだが、ふつうの映画と違い、
このあとの刑務所のシーンが長い。
刑務所なので、撃ち合いもなく、兄貴分とただ、出所を待っているのだ。
もちろん脱獄計画を練るのだが、ベルモンドの片腕のメキシコ人が、
あっさり殺されてしまい、ちょっと驚く。この男がいれば、安心なのに。

映画は大きく三つの部分に分かれていて
兄貴分の復讐を果たし、暗黒街でのし上がっていく
刑務所の中で兄貴分に再会、戦後は地雷撤去の仕事を
初老になって出所し、用心棒をしながら再起をはかる
という構成だ。その真ん中の部分が、意外に長く、映画全体としてはバランスが悪い。
妻はここの部分で、映画から脱落してしまった。

そして、映画のラストは、ふつうだったら派手な銃撃戦で盛り上がってほしいところだが、
兄貴分を殺され、愛する女性も入院と痛めつられた後、
殴りこみにいく後姿で終わってしまうのだ。
今だったら、きっとここで終わらないだろうなあ。
しかし、あらためて見ると、主人公のベルモンドの行動はすべて兄貴分のためで、
自分のために自らが暗黒街でのし上がろうという意欲はなくみえる。
そんな彼が、兄貴分(腕っ節は強そうだが頭は悪そう)が死んだら、
もうやることはないのだろう。

このDVD、一時期は高値がついていたそうだが、今は廉価版で買える。
ぜひ、あの哀愁のメロディーを聴いてほしい。
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by mahaera | 2010-05-29 10:15 | 映画のはなし | Comments(0)
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