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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画評『ラスト・ソルジャー』 ジャッキーは人生のラストランに入っている

ラスト・ソルジャー 2010年/中国・香港

原案・製作総指揮・武術指導・主演:ジャッキー・チェン
監督・脚本・編集:ディン・シェン
出演:ジャッキー・チェン(『ベスト・キッド』)、ワン・リーホン(『ラスト、コーション』)、ユ・スンジュン
公開:11月13日より渋東シネタワーにて
公式HP:www.lastsoldiesr.com

■ストーリー
紀元前、戦後時代の中国。
衛の軍が梁に攻め入るが、待ち伏せに遭い、
激しい死闘の末に両軍共に全滅する。生き残ったのは
死んだふりをしていた梁の兵士(ジャッキー・チェン)
と衛の将軍(ワン・リーホン)の2人だけだった。
兵士は傷ついた将軍を捕虜にして、自国へ帰ろうとする。
農民出身の兵士は、捕虜の報酬の田畑を望んでいたのだ。
戦場で名誉の死を遂げるのが本望という将軍と、
どんな手を使っても生き延びるという兵士は、
ことごとく対立する。途中、さまざまな障害を乗り越え、
2人は梁へと向かうが、その後を衛の捜索隊が追っていた。
しかしその目的は、将軍の救出ではなく、暗殺だった。

■レヴュー
『新宿インシデント』『ベスト・キッド』と最近の出演作を見ていると、
ジャッキーはまちがいなく人生のラスト・ランを意識している。
アクションと笑いをブレンドした娯楽作ばかりではなく、
自分の役柄に、明らかに意味をこめようとしているのだ。
そして、意識的に自分のアクションシーンを減らしている。

この『ラスト・ソルジャー』もそんな傾向を感じさせる作品だ。
時代は戦国時代の中国。私たちは、いくら国々が争っても、
やがて秦にすべての国が飲み込まれてしまうことを知っている。
したがって、この映画の中での衛と梁の二つの国の争いも、
結果的には無意味だということも。
しかし、もちろん登場人物たちはそんなことは知らない。

ジャッキー・チェン扮する名も無き兵士(役名もない)
にとって、戦争の大義よりも、生き残って
家の血統を絶やさないことのほうが重要だ。
彼の兄弟たちはすべて戦争で死んでしまい、
家族で生きているのは彼だけだ。
一方、武人の将軍は、国家や名誉を重んじてはいるものの、
最終的には人々の命を失わせていることに疑問を持たない。

この対照的なふたりの旅が、この映画の主要な骨組みだ。
将軍は何とかして兵士から逃げようとする。
兵士は生きたまま将軍を連れ帰れば、
念願の畑がもらえるので、彼を逃がそうとしない。
そこへさまざまな障害が立ちはだかる。
山賊と化した農民、謎の女、流浪の民、
そして将軍の命を狙う衛の捜索兵。
どうやら将軍は、同胞に裏切られ死ぬ運命にあったようだ。
逃げて国に戻っても、将軍は死ぬことになるかもしれない。

やがて敵対するふたりに友情らしきものが芽生えてくる。
そして、意表をつくラスト。
今までのジャッキー映画だったら、
こんなラストは用意していなかったはずだ。
娯楽映画の枠組みの中での、
精いっぱいの反戦メッセージがそこに込められていた。
ほろ苦い結末に、ジャッキーのラスト・ランを感じた。
(★★★)

(この文は旅行人HPの旅シネに寄稿したものと同じです)
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by mahaera | 2010-10-29 13:49 | 映画のはなし | Comments(0)
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