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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画評『ステロイド合衆国~スポーツ大国の副作用~』

ステロイド合衆国~スポーツ大国の副作用~

2008年/アメリカ

監督:クリス・ベル
配給:アップリンク
公開:12月25日より渋谷アップリンクファクトリーの「未公開映画祭」で上映


映像作家のクリスの幼い頃のヒーローはハルク・ホーガン、
アーノルド・シュワルツェネガー、シルベスター・スタローン

兄弟ともスポーツの道へと進み、それぞれが身体を鍛えていた。
しかしクリスはステロイド剤を使用し続けている兄弟に対し、
疑問を抱く。兄弟は薬の使用のことを両親には話していなかった。
逆にステロイド剤を使わないクリスは、自分の限界を感じていた。
そこでクリスはステロイド剤の影響を調べるため、
プロスポーツ選手や医療関係者、研究者、サプリ業界、
そして国会議員にいたるまでインタビューに挑む。

本作の原題は「より大きく、より強く、より速く」。
今ではヤサ男のジョニー・デップが人気俳優だし、
軟弱に見えるトビーが演じるスパイダーマンガ共感を呼ぶ時代だ。
しかし、監督自身やその兄弟が育った80年代はアメリカでは、
マッチョなヒーローが全盛時代だった。
そのころのドル箱スターは、シュワルツェネガーやスタローン
といった肉体派の俳優たちで、
CGでヤサ男でもアクションができる以前は、
彼らが問答無用で悪者たちをなぎ倒していた。
政治もちょうどレーガンの“強いアメリカ”の時代だったのだ。

その頃のアメリカ人の男の子たちは誰しも、
“筋肉モリモリ”に憧れていたらしい。
このドキュメンタリーでもインタビューに答えているが、
ベン・ジョンソン、カール・ルイスといったスター陸上選手が、
次々とドーピング検査に引っかかったのもこの頃だった。
ステロイド剤の副作用については、
本作のインタビューでも明快な結論が出ていないようだ。
しかし、このドキュメンタリーが進むにつれてわかってくるのは、
「それは肉体的な病だけでなく、むしろ勝者のみ称えられる
アメリカ社会の精神の病ではないか」
と監督が考えるようになってきっていることだ。
“自分をより強く見せたい”
というマッチョ願望が、その根底にあると。
称えられるのは勝者のみ。敗者は忘れられる」というアメリカ。
ステロイド剤による筋肉増強に、
アメリカ社会の縮図が見えてくるのだ。
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by mahaera | 2010-12-22 16:39 | 映画のはなし | Comments(0)
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