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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー 『アンチクライスト』 観たことを後悔するほどインパクト大。ある意味スゴイ映画だ

アンチクライスト/Anti Chirist

2009年/デンマーク、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、ポーランド

監督:ラース・フォン・トリアー
出演:ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール

配給:キングレコード
公開:2月26日より新宿武蔵野館、シアターN渋谷ほかにて
上映時間:104分
公式HP:www.antichirist.jp


 とっくにブログで紹介していると思い込んでいたら、
ここに書いてなかったことをさっき知った。
賛否両論まちがいなしのスゴイ映画。
セックスとバイオレンスが支配するが、ホラー映画でもあり、
アート映画でもある。好き嫌いはともかく、
しばらくこの映画のことが離れないだろう。
 
夫婦がセックスの最中、その幼い息子が命を落とす。
妻は悲しみを夫とのセックスで埋めようとするが、
セラピストの夫は精神を病んでいく妻を救おうとする。
夫は催眠療法で、彼らが“エデン”と呼ぶ山小屋が
妻の怖れている場所であることを聞きだす。
その場所は、妻が夏の間、論文を仕上げるために
過ごしていた場所だった。夫はそこで心理療法を妻に試みるが、
妻の精神状態はさらに悪化。
さらに激しいセックスを夫に強要する妻。
そして夫は、妻の隠された姿を知る。
 
『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で、
それぞれカンヌ国際映画祭のグランプリとパルムドールを制した
ラース・フォン・トリアー監督。いまや世界の巨匠だが、
本作はそのキャリア初期の『エレメント・オブ・クライム』や
『キングダム』にも通じる、アンダーグラウンドなホラー趣味全開の
異色作だ。ホラー映画と言い切ってもいいだろう

『ドッグヴィル』で全開したトリアー監督の人間不信は、
この作品にも引き継がれている。彼の作品世界には、
ただ善良な人間はいない。
本作も幼い息子を亡くした夫婦が心の傷を癒す映画かと思うと、
不意打ちを食らうだろう。山小屋へ向かう途中で、
出産途中の鹿に出くわすグロテスクなシーンがそうだ。
このあたりから、映画に不気味な雰囲気が漂い始め、
キツネが「カオスがすべてを支配する」と夫に話しかけるなど、
ようやくこれが一種のホラー映画であることに気づく。

とはいえ、本作はショックやサスペンスを主体とした、
アトラクション的なホラーとはまったく違う。
映画に流れ続ける低音のノイズといい、
その不可解さのテイストは、
たとえていえばデビッド・リンチの作品に通じるだろう。
常軌を逸した妻の激しいセックスシーンと、
血まみれのバイオレンスと、オカルトが一体となり、
私たちの神経を逆なでする。シャルロット・ゲンズブールは
「何もそこまで」と言いたくなるほど、
全裸で気のふれた妻を熱演し、
夫のデフォーはただ、受身に徹するしかない。
夫が屋根裏部屋で見つけた、妻が1年前に書いていた論文用の
ノートの筆跡が徐々に乱れていくのは、
『シャイニング』で妻が夫のタイプ原稿を見つけた時を彷彿させ、
ゾっとする。果たして、妻は最初から狂っていたのか。

そのあと、見ていて“痛い”シーンが続く。
アクションやスプラッター映画で、
腕を切り落とされても痛さは感じないが、
ここで夫デフォーが受ける痛さは、
『ミザリー』をさらにリアルにした感じ。
後味も悪い。不快な映画といえばそうなのだが、
気持ち良くさせてくれるだけが、映画ではない。
もう一度、見返すことはないかもしれないし、
絶対DVDを買ってみたい映画ではないが、観たあとは、
しばらくこの映画のことが頭から離れられなくなった。

とっても「痛そうな」場面があるので、
あらかじめ心の準備をして観て下さい。。。
(★★★★)

(旅行人のウエブ「旅シネ」に寄稿したものを転載しました)
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by mahaera | 2011-02-25 16:59 | 映画のはなし | Comments(0)
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