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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『赤い靴 デジタルリマスター・エディション』 必見のリバイバル上映

赤い靴 デジタルリマスター・エディション
The Red Shoes
1948年/イギリス

監督:マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー(『黒水仙』『ホフマン物語』)
出演:モイラ・シアラー、アントン・ウォルブルック、マリウス・ゴーリング、レオニード・マシーン
配給:デイライト、コミュニティシネマセンター
公開:7月2日より渋谷ユーロスペースにて公開中
公式HP:www.red-shoes.jpn.com

もうすでに公開中だが、僕の最も好きなバレエ映画
いや全音楽映画の中でもトップ10にまちがいなく入るし、
英国映画史上の名作である本作を紹介する。
『SUPER 8』や『パイレーツ・オブ~』に使う時間があったら、
僕でさえ『赤い靴』を見なさいと断言できる。


観ていない方に、ざっと物語の説明を。
時代は映画が製作された当時、おそらく戦後間もないころだろう。
映画はボリス・レルモントフが主宰するレルモントフ・バレエ団のロンドン公演から始まる。
レルモントフのモデルは、バレエ通でなくてもその名を知っているだろうディアギレフ率いるバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)。
フォーキン、ニジンスキー、マシーン、バランシンといった舞踊史上に残るダンサー(振付家)を輩出し、
ドビッシー、サティ、ラヴェル、ストラヴィンスキー、プロコフィエフなどの作曲家、ルオー、ピカソ、マティス、ユトリロ、ローランサン、キリコなどの画家がその舞台に参加したバレエ・リュスは、簡単に言ってしまえば、
ロック界におけるビートルズのようなもの。

さて映画では、ロンドンでレルモントフは2人の逸材を見つけ出す。
ダンサーのヴィッキーと新進作曲家のクラスターだ。
レルモントフはアンデルセンの童話「赤い靴」をモチーフにした
バレエ「赤い靴」の作曲にクラスター、プリマにヴィッキーを起用。
本拠地のモンテカルロでの初演は大成功を収め、
2人は一夜にしてスターになる。やがてヴィッキーとクラスターは
愛し合うようになるが、「芸術にすべてを捧げるべき」と考える
レルモントフの怒りを買うことになる。

監督は、『天国への階段』『黒水仙』など、
イギリスならではの名作を生み出したパウエル&プレスバーガー
この『赤い靴』は、名撮影監督ジャック・カーディフと共に、
カラー映画の真髄を追及した名作中の名作。
とにかくその人工的な色彩美は、まるで古い絵ハガキのようであり、
今回、マーティン・スコセッシが監修して、デジタルリマスター版を作りたくなったわけもわかる。

原作のアンデルセン童話では、赤い靴で踊ることばかり考えていた娘が、神の怒りを買い、靴を脱ぐこともできずに踊り続け、
死刑執行人に足を切り落としてもらうが、
靴は彼女の足を残したまま踊り続ける。
改心した彼女は神に祈りを捧げ、やがて天国に召されていく。

パウエル&プレスバーガーはこの物語を、途中のパレエ演目と、
愛(私生活)と芸術(仕事)に引き裂かれていくドラマに重ねた。
ダンサーとして、芸術家として、「赤い靴」を選べば、
一生踊り続けるか、死ぬしかない。
プリマに抜擢されたヴィッキーは、一度は愛を取って舞台から足を洗うが、踊る誘惑に勝てず、夫に内緒でステージに戻ってくる。
一方、夫は自分の音楽の初演をすっぽかして彼女を追ってくる。
彼は芸術より、愛を優先したのだ。
踊りを取るか、家庭を取るか、両立できなくなったヴィッキーは、
「赤い靴」の舞台直前に、夫を追い、
彼が去っていこうとした列車にバルコニーから身を投げる。
死に行く彼女は夫に、赤い靴を脱がしてくれるよう頼む。
彼女は死んで芸術(仕事)から解放されたのか、
それとも芸術(仕事)から解放されたら、もう死ぬしかないのか。

どちらにでも取れる幕切れだ。

一方、舞台では序曲が終わり、観客が待つ中、幕が下りたまま。
観客がざわめく中、レルモントフが登場し、
ヴィッキーが二度と踊ることができなくなったことを告げる。
しかし彼はヴィッキーの遺志(いやレルモントフの意思か)を継ぎ、
彼女抜きで、「赤い靴」を上演すると告げる。
幕が開き、バレエが始まる。
彼女の姿はないが、スポットライトがまるで彼女が踊っているかのように、後を追っていく。
ショウ・マスト・ゴー・オン。


ドラマもすばらしいが、圧巻は、映画の中盤に登場する
17分のバレエ演目「赤い靴」

『巴里のアメリカ人』のダンスシーンに匹敵する、
映画史上屈指の名ダンスシーンだ。プリマのモイラ・シアラーもいいが、ニジンスキーに代わってバレエ・リュスの花形ダンサーとなった
レオニード・マシーンのコミカルな振付と踊りは絶品
(★★★★★)
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by mahaera | 2011-07-07 14:03 | 映画のはなし | Comments(0)
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