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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『アジョシ』 ウォンビン主演の2010年韓国No.1ヒット作

アジョシ

2010年/韓国

監督:イ・ジョンボム
出演:ウォンビン、キム・セロン
配給:東映
公開:9月17日より丸の内TOEI2にて

町の片隅で、世間を避けるように質屋を営む青年テシク。
お客以外に訪ねてくるのは、隣の部屋に住む少女ソミだけだ。
ダンサーの母親と二人暮らしのソミには
“アジョシ(おじさん)”と呼ぶテシクだけが唯一の友だちだった。
ある日、ソミが家に帰ると見知らぬ男たちが待っていた。
ソミの母親が組織から盗んだ麻薬を取り返しに来たのだ。
組織の男たちはソミをさらい、
テシクを警察へのおとりにする計画を立てる。
しかし、彼らが知らないことがあった。
テシクは過去を消した情報特殊部隊の元要員だった。

ふだんは地味で目立たないが、実は「過去を消した凄腕の工作員」
というのは、映画では定番のパターンで、意外性で見せるものと、
観客は最初から只者でないことがわかっていて(知らないのは悪者)、
いつそれが明かされるかと、ハラハラしなが見るものがある。
もっとも、本作は見る前から、ウォンビンが活躍するとわかっているので、
意外性はない。むしろ、死人のように生きている彼が、
少女を救うということで、次第に生きる力を取り戻していく姿を
見せていくのが、見所なのだ。

“二枚目スター”というイメージが強かったウォンビンだが、
『母なる証明』の演技で批評家たちもうならせ(ある種、汚れ役)、
さらに本作で従来のイメージとは異なる、
“陰のある強い男”という役柄を演じて見せてくれた。
「守ってあげたい」と思わせるような役が多かった今までと、
180度の転身だ。
ぼんやりと無気力に生きている男が、巻き込まれたとはいえ
徐々に過去の戦闘能力をよみがえらせていく。
アクションはあってもアクションのためのアクションではなく、
クローネンバーグの『ヒストリー・オブ・バイオレンス』のように、
敵の急所を徹底的に狙って息の根を止めるというもの。
とにかく、圧倒的に強い

対する組織のボスのマンソク兄弟、
そしてベトナム系の寡黙な殺し屋と悪役も魅力的。
やっぱり悪役がとことん悪い(人を殺して臓器売買している)と、
主人公の活躍ぶりに応援したくなるものだ。
少女ソミを演じるのは、『冬の小鳥』の主人公で
名演技を見せてくれたキム・セロン

韓国で2010年の年間No.1ヒットを記録した話題作だ。
でも、もうひとつ食い足りないところがあるのも確かで、
これは、ウォンビンありきなら、もっと設定とか、
脚本上にひとひねり欲しかった。
というのも、元の脚本では、主人公のアジョシ(おじさん)は、
50~60代で、その意外性(回りが油断する)というものが、
この脚本のあちこちに残っているのだ。
たぶん、家族を亡くした暗い過去というのも、
オリジナルの設定では、何十年も前というのがピッタリくる。
ウォンビンだと、まだ若いから数年前だろうし。
しこから質屋まで、流れてくる過去とかががあまり見えない。

そして、少女とも、あんまり仲良く良さそうに見えない。
ストーリー上ではいちおう説明されているんだが、
どうも描写に説得力がないのか、ただ段取りを見せられている
ぐらいで、命をかける執念まではなかなかいかないような。

そんなわけで、アクションは○、少女との心の交流は△。
(★★★)
by mahaera | 2011-09-21 11:15 | 映画のはなし | Comments(0)
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