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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『ピアノマニア』 、究極の音を求めて調律師がピアノに向かう一年を追うドキュメンタリー

ピアノマニア

2009年/オーストリア、ドイツ

監督:リリアン・フランク、ロベルト・シビス
出演:シュテファン・クニュップファー、ピエール=ロラン・エマール、ラン・ラン、ティル・フェルナー
配給:エスピーオー
公開:1月21日よりシネマート新宿

私たちはどのくらいの仕上がりで物事に満足しているのだろう。
ある人は達成率70%で自分を褒め称え、
ある人は90%でも満足できないかもしれない。
しかし本作に登場する名演奏家たちは、もともとの目標レベルが高い上、
99.9%でも満足できない人たちだ。

バッハの《フーガの技法》の録音を1年後に控えた
ピアニストのピエール=ロラン・エマール。
一台のピアノにさまざまな音色を求めるエマールの希望に添うべく
努力しているのは、スタンウェイを代表する調律師のシュテファンだ。
数々の名演奏家たちの要求に応えてきたシュテファンだが、
今回の要求はハードルが高かった。
エマールの目的に合ったピアノを選び、試行錯誤を繰り返す日々。
その傍ら、多くの仕事をこなしていくシュテファンの姿をカメラは追う。

1台のピアノでオルガンやクラヴィコードのニュアンスが欲しい
(といってもシンセのようにそのものの音を出すわけではない)という
リクエストに応じてピアノ選びから始まり、調律へと進むのだが、
正直言ってわかる人にしかわからないという些細なレベルの調整だ。
しかし完璧を求め、最後の0.1%に労を惜しまない人たち
カメラの前に映し出される。
これが真の「マニア(熱中する人)」なのだろう。
最初は「マニア=ファン」だと思っていたが、これは違う。
些細なことを追求するほど、高いレベルの人たちを追い、
そのこだわりを収めたものなのだ。
プロの世界の厳しさ、いや厳しいからこそトップレベル
それを知った。

(★★★)
by mahaera | 2012-01-20 07:39 | 映画のはなし | Comments(0)
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