ブログトップ

旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

新作映画レビュー『ポエトリー アグネスの詩』  『オアシス』のイ・チャンドン監督の新作

ポエトリー アグネスの詩
Poetry
2010年/韓国

監督:イ・チャンドン(『オアシス』『シークレット・サンシャイン』)
出演:ユン・ジョンヒ、イ・デビッド、キム・ヒラ
配給:シグロ、キノアイ・ジャパン
公開:2月11日より銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館
上映時間:139分
公式HP:www.poetry-shi.jp


川面を中学の制服を着た少女の動かぬ体が流れてくる。
66歳になるミジャは、中学3年生の孫息子と2人暮らし。
ある日、体の不調から病院を訪れたミジャは、
身投げをした少女の母親が取り乱している姿を目撃する。
自殺した少女は孫の同級生だったが、
ミジャが孫に尋ねても「よく知らない」と素っ気ない。
そのころ、ミジャは詩作教室に通い始め、
教えに従って感じた言葉をメモに残し始めた。
やがてミジャは孫の仲良し6人組の保護者たちに呼ばれ、
死んだ少女が孫たち6人から性的暴行を受けていたことを知る。
そしてミジャは、アグネスという洗礼名を持っていた
少女の足跡をたどるようになる。

前作『シークレット・サンシャイン』を公開当時見逃し、
旅シネの他の執筆者のおすすめで観た。
『オアシス』も傑作だったが、これには思い切りノックアウトされた。
韓国のイ・チャンドン監督は寡作ながらも、
まったくハズれがない高水準の作品を作り続けている。
そして新作である本作もそれらの作品と並ぶ傑作で
あることはまちがいない。2時間20分の長尺だが、
一度も時間を気にすることがなく最後まで夢中になって観た

本作の主人公は少し浮世離れした感がなくもない老女だ。
詩作教室で「美しいものを見つけてそれを詩にするように」と教わるが、
なかなかまとまらない。その一方、孫息子のしたことに罪悪感を抱き、
それまであまり気にかけることがなかった、
人間の“負の部分”にも直面せざるを得なくなっていく。

詩を作ることに悩むミジャの姿は、世の中の悲惨な出来事に
心を痛めながら作品を作るイ・チャンドンの姿でもあるのだろう。
純粋にすばらしいものを求めて映画にしたいと思っていても、
現実の“負”の部分がどんどん目に入ってきてしまう。
その中では美しい言葉も断片的に浮かんでは
消えていく絵空事に過ぎない。
他のイ・チャンドン映画同様、主人公、
いや登場人物すべて(孫の仲間の保護者たちを除く)
が何を考えているかは深く説明せず、それは私たちの判断に
ゆだねられている。とはいえこれは難しい映画ではない。
なぜなら、次にどうなっていくのか決して目を離すことができない
一流のサスペンス映画と同じで、登場人物に感情移入ができるからだ。
しかし、答えはひとつではない。
観客それぞれが自分なりの答えを探していく。
これは映画なのだから。

(★★★★)

旅行人のWEBサイト「旅シネ」に寄稿したものを転載しました
[PR]
by mahaera | 2012-02-03 22:18 | 映画のはなし | Comments(0)
<< キミは『夕やけ番長』を知っているか 2月19日練馬Be-bornに... >>