ブログトップ

旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

最新映画レビュー『コーマン帝国』  早く!安く!儲ける!それがコーマン流!

コーマン帝国

2011年/アメリカ

監督:アレックス・ステイプルトン
出演:ロジャー・コーマン、ジュリー・コーマン、マーティン・スコセッシ、ジャック・ニコルソン、ロン・ハワード
配給:ビーズインターナショナル
公開:新宿武蔵野館にて公開中


「こーまん1枚!」
劇場で女性がチケットを買うとき、こんな言葉を発していると
思うと、しもネタが嫌いな僕でも、かなりドキドキしてしまう。

数十年前、映画少年だった僕は、
中学生のときに映画研究会に入り、
ヌンチャクを振り回すクラスメートや、
エクソシストの真似をして緑のスライムを投げつけるアホ
やつらと一緒になって、「コーマン!コーマン!」
と名前を連呼していた。

その後の“キッチュ”のように変なものを祭り上げる文化はなく、
コーマン映画は“ダメ映画”の代名詞だった。
それでも、テレビ東京(当時は東京12チャンネル)の昼の
映画劇場では、そのタイトルに引かれてコーマン映画には
ずいぶんとお世話になったものだ。

ロジャー・コーマン。
映画好きならその名を知らぬものはいないというB級映画の帝王だ。
1950年代、ロジャー・コーマンは芸術性とは無縁だが
大衆のニーズがあるSF、怪奇、若者の風俗を取り入れた
低予算映画を次々と作り、ヒットを飛ばした。
(このあたりのモノクロ映画をよく当時テレビで見た)
ロジャー・コーマン自体は名作の類を撮ることはなかったが、
60年代末に彼の下にいた人々で、
後にアメリカンニューシネマの重要人物になり、
大成したものも少なくない。
大手スタジオの作品の“隙間産業”的なコーマンの映画作りは、
“アンチ体制”なニューシネマと相性がよかった。

60年代に入ると、コーマンの下には成功を夢見る
若き映画作家たちが集まり、その中から
アメリカンニューシネマを生み出す多くの逸材が現れる。
ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、モンテ・ヘルマン
といったニューシネマ最重要人物以外にも、
80年代に花開いたスコセッシ、ロン・ハワード、ジョナサン・デミ
がコーマンのもとで初期の作品を撮った。
ロン・ハワードのデビュー作『バニシングIN TURBO』とか
それなりに面白かったと思う。

本作は彼に関わった人々と彼自身へのインタビューを通し、
コーマンの足跡をたどるドキュメンタリーだが、
印象的だったのが、そのコーマン帝国の衰退が
『ジョーズ』と『スターウォーズ』の二大ヒットが原因だと言及していること。
スピルバーグとルーカスは大手スタジオの復権を果たし
ニューシネマと共にコーマン作品に引導を渡した
のだ。

これは当時はまったく気がつかなかったが、
アカデミー作品賞がその前年が『カッコーの巣の上で』という
最後のアメリカン・ニューシネマ的な作品が受賞したのに
翌年はもう『ロッキー』『スターウォーズ』だもの。
そんな映画史が見えてくる上でも興味深い。

で、このドキュメンタリー、コーマンのもとで映画に出たり
撮ったりした映画人がいろいろ出てくるのだが、
デビュー作が『殺人魚フライングキラー』だったことを
自分の経歴から抹消している、ジェームズ・キャメロン
登場しなかった。きっと彼は、ヌンチャク振り回していたり、
緑のスライム投げつけるやつらと一緒に仕事をしていた過去は、
なかったことにしたいのであろう。

(★★★)
[PR]
by mahaera | 2012-04-28 09:44 | 映画のはなし | Comments(0)
<< 最新映画レビュー『バトルシップ... 旅行人文化祭通信4.22 来て... >>