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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『私が、生きる肌』  肌の下に隠された危険な愛を描く、 ペドロ・アルモドバルの新作

私が、生きる肌
The Skin I Live In

2011年/スペイン

監督:ペドロ・アルモドバル(『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』)
出演:アントニオ・バンデラス(『デスペラード』『マスク・オブ・ゾロ』)、
エレナ・アヤナ(『この愛のために撃て』『ウェルカム!ヘブン』)、
マリサ・バレデス(『ハイヒール』『オール・アバウト・マイ・マザー』)
配給:ブロードメディア・スタジオ
公開:5月26日よりTOHOシネマズシャンテ、シネマライズにて
上映時間:120分
公式HP:www.theskinilivein-movie.jp


いつもまったく次の展開が読めないアルモドバル映画。
人は人に見える以外に、思いもよらない過去や感情を秘めている。
いつもそんなことを教えてくれるのが、アルモドバルだ。
登場人物たちはいつも愛に飢え、全身全霊を込めて人を愛し、
そして憎んでいる。日本人には強すぎる、
“危うくて美しい愛”を描かせたら、彼の右に出るものがいない。
そしてドロドロとした内容を、軽妙に描けるのも、彼のすばらしさだ。
今回は、一歩ズレるとほとんどホラーかサイコサスペンスという
極限状態の“愛”の物語を作り上げた。

トレドの郊外、人工皮膚の権威で世界的な形成外科医の
ロベルの邸宅の一室に、ベラという若い女性が幽閉されていた。
食事の世話をするのは、初老のメイドのマリリア。
カーニバルの日、音信不通だったマリリアの息子のセカが、
トラのコスチュームに身を包んで邸宅にやってきた。
久しぶりの再会に喜ぶマリリアだったが、
犯罪者であるセカは本性を出し、ベラを襲う。
それを救ったのは帰宅したロベルの銃弾だった。
話は数年前にさかのぼる。
ロベルは亡くなった妻を救えるはずだった“肌”を創造するために、
“ある人物”を監禁して実験台にし、
妻そっくりの“ベラ”として創り上げていたのだった。

人は見た目にはわからない関係や過去を隠しているという点では
以前の作品に共通するが、今回はそれを押し進め、
人工皮膚で全身と顔を変えてしまった人間を描いている。
外見はまるで別人でも、内面にあるものまで変わるのだろうか。
そんな問いへの答えがこの作品だ。
ストーリーは、悲しみから常軌を逸した博士が
人をさらって人体実験をするホラー映画のようだが、
バンデラスが外科医を演じることで、嫌悪感より親近感を抱く
計算の上にこの映画は成立している。
ジョージ・クルーニーのように、悪役をやっても憎めない男が
メスを持つから、その異常さに私たちは気づきにくい。
物語は途中から流れが大きく変わり、
バンデラス演じる外科医の物語から、“ベラ”の話へと変わっていく。
そして外科医とその母親、“ベラ”とその母親(どちらも父親が不在だ)
の関係が語られる。驚くような展開になるが、
このアイデアはすごい(これは知らないで観たほうが絶対に面白い)。
本当におすすめできる逸品だ。
(★★★★前原利行)
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by mahaera | 2012-05-25 14:32 | 映画のはなし | Comments(2)
Commented by apakaba at 2012-05-25 21:47
アルモドバルは全作品見ているので、新作もすごく楽しみです。
バンデラスの使い方もうまいんですよね。
しかし「エレナ・アナヤ」さんが「ウエルカム!ヘブン」でどのシーンに出ていたのか、いくら思い出そうとしても思い出せません。
大好きなペネロペちゃんに目が釘付けでしたので。
南米の映画は、展開が読めず、においがしてくるような感覚でとても好きです。
Commented by mahaera at 2012-05-26 12:05
バンデラスだからこそ、映画を見ている間は、バンデラス側の視点に立ってしまうのですが、観終わった後、それが別の視点からだったらどうか、と考えてしまいます。これを狙った、スター効果が活きているというか。トリックが効いている映画なので、前知識なく見たほうが面白いですよ。
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