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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ブラック・ブレッド』 隠された村の真実を知ったとき、少年は…。スペイン発ミステリー

ブラック・ブレッド

2010年/スペイン、フランス

監督:アグスティー・ビジャロンガ
出演:フランセスク・クルメ、ノラ・ナバス、ルジェ・カザマジョ、セルジ・ロペス
配給:アルシネテラン
公開:6月23日
劇場情報:銀座テアトルシネマ、ヒューマントラストシネマ渋谷


スペイン内戦の悲劇は今まで何度も、映画で語られている。
ただ、直接的に描くのは、見ていて辛いのか、
子供の目から見た作品に印象深いものが多いような気がする。
傑作『ミツバチのささやき』もそのひとつだし、
ダークファンタジーの傑作『パンズ・ラビリンス』もある。
本作は、宣伝ではホラーのようだがファンタジー色は薄く、
むしろ子供の目から見た謎解きミステリーだ。

舞台はスペイン内戦終了後のカタルーニャ地方の山あいの村。
ある日、少年アンドレウは、森の中でディオニスと
その息子クレットが息絶えるのを目撃する。
クレットは最後に「ピトルリウア」という言葉を残すが、
それは子供たちの間で洞窟に住むと信じられている怪物の名だった。
かつてディオニスと左翼の同志だったアンドレウの父に
殺人の疑いがかけられ、父は追及を逃れるために姿を隠す。
アンドレウは祖母の家に預けられるが。。

自分たちに都合が悪いことを、子供たちに隠す村人たち。
背中に羽が生えた怪物のうわさ、
爆弾で手を失った少女、
村でかつてあった忌まわしい事件、、

思わせぶりな人物が登場し、謎が深まる展開は、
金田一もののような味わいがあるが、名探偵は登場せず、
真実は子供たちが知らなかっただけで、
大人たちは知っていたこと。
その真実も内戦後の勝ち組と負け組が生んだ事件というだけではなく、
閉塞的な社会ならどこでもありうる話なのだ。

羽が生えた怪物、裸で鳥のようなポーズを取る青年、
少年と父親が育てている小鳥たち…。
“飛翔”のイメージが随所に散りばめられているが、
閉鎖された世界では誰も飛び立つことはできない。
そこから飛び立つために、少年が最後に選択するのは、
苦い決断だった。。

設定としては面白いのだが、どうも話が散漫になっているようで、
うまく有機的に噛み合っていかない。
これはもっと時間を長くして、各部の説明をしっかりするか、
あるいは余計なところを、もっと落としてしまったほうが良かったのかも。
たぶん、全部を描写しようとすると
小説「八つ墓村」ぐらいのボリュームが必要なのだ。
なので映画化に際しては、もっとシンプルにしたほうが
よかったのかも。話があちこちに飛んで、
誰にも感情移入できないうちに、謎が解けてしまうのだから。
そうした意味では、燃焼し切れていないのが残念だ。

(★★☆)
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by mahaera | 2012-06-25 09:58 | 映画のはなし | Comments(0)
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