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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『だれもがクジラを愛してる。』 クジラたちを救った実話をもとにしたドラマ

だれもがクジラを愛してる。
Big MIracle
2012年/アメリカ

監督:ケン・クワピス(『旅するジーンズと16歳の夏』『そんな彼なら捨てちゃえば』)
出演:ドリュー・バリモア(『チャーリーズ・エンジェル』『ラブソングができるまで』)、ジョン・クラシンスキー(『かけひきは恋の始まり』)
配給:東宝東和
公開:7月14日よりTOHOシネマズシャンテほか
上映時間:107分
公式HP:love-whale.jp


1988年10月、アラスカの最北の小さな町バローで、
テレビリポーターのアダムは、取材中に偶然
3頭のクジラが氷の下に閉じ込められているのを発見する。
開けた海までは8km。冬が近づいており、
息継ぎをする穴が氷に覆われてしまうのは時間の問題だった。
アダムが配信したニュースは、最初は
小さなローカルニュースだったが、やがて全米、世界を駆け巡る。
アダムの元恋人でグリーンピースの活動家レイチェルもやってきて、
州知事に州兵の派遣を依頼するが断られてしまう。
やがてレイチェルと対立している石油会社社長、
再選を狙う大統領陣営のスタッフなど、
さまざまな立場の人間の思惑が交差し、
クジラ救出に向けて事態は動いていく。

日本で大量生産される、家族向けの“甘~い”動物映画か
とタカをくくって観に行ったら、意外や意外、
大人の鑑賞に堪えるエンタテイメントだった。
脚本が巧みで、演出も的確なのだろう。わずかな時間で、
セリフに頼らずに大勢の登場人物を説明してしまうのが実にうまい。
この映画にとくに主人公はなく(リポーターは狂言回し的存在)、
クジラ救出劇に関わった人たち全員を、
それぞれの立場を簡潔にわかりやく、
うまく交通整理していかなくてはならない。
職人芸的な手綱さばきが要求されるのだ。

さて、このクジラ救出劇は1988年10月に実際に起きたことだ。
実話を基にしているが、もちろん実話そのものではなく、
キャラクターは多少誇張されたり、作られたりしている(モデルはいる)。
80年代後半は衛星回線が充実し始めたころで、
CNNの普及などでニュースがリアルタイム、
あるいはリアルなレポートが世界中からライブ中継されるようになった。
インターネットはまだない時代だが、ニュースのスタイルが大きく変わった。
本作はそれを象徴する出来事だろう。

クジラを救うという目的のために、異なった立場の人々が協力する。
とはいえ皆が動物愛護のためではなく、それぞれの立場の思惑がある、
というのが大人の視点だ。
レポーターも最初はこれが中央への出世のネタとしてとらえるし、
地元のイヌピアト族の人たちはこのクジラを食用にしたら
世界の人たちがどう自分たちを見るかを考え、救出に協力する。
日頃、環境団体から攻撃を受けている石油会社社長は、
これが自社のイメージを良くするいい宣伝と考えるし、
時のレーガン政権の大統領補佐官はリベラル派の支持を取り付ける
いい事件だと考えている。正直、“動物愛”で動いているのは
ドリュー・バリモア演ずるグリーンピースの活動家だけ
だ。
とはいえ彼女が長々と正論を演説し、私たちをゲンナリさせることもない。
彼女がテレビカメラの前で話し出したら、
元恋人のリポーターがそれをさえぎるのだ。
そんな正論は誰も聞きたくないし、すぐにチャンネルを替えるだろうと。
そんな立場が異なる人たちが最後は一致団結するところが、
きれいごとではなく描かれるからこそ、感動的なのだ。

もっとシリアスなドラマとしても描けただろう。
しかし、こうしたライトコメディのようにしたのは
映画としては正しい選択だと思う。
目的実現のためには、人それぞれの思惑があり、
目的がバラバラでもいい。実現させることが大事なのだということを、
説教臭くなく示してくれるのだから。
(★★★☆)

(旅行人のWEBサイト「旅シネ」に寄稿したものを転載しました)
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by mahaera | 2012-07-02 09:20 | 映画のはなし | Comments(0)
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