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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『THIS IS NOT A FILM これは映画ではない』 映画を撮ったら逮捕って…

THIS IS NOT A FILM これは映画ではない
This is not a Film by Jafar Panahi and Mojtaba Mirtahmasb

2011年/イラン

監督・製作・脚本・出演:ジャファール・パナヒ(『白い風船』『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』)
配給:ムヴィオラ
公開:9月22日より渋谷シアターイメージフォーラムにて
上映時間:75分
公式HP:eigadewanai.com


映画監督のジャファール・パナヒは、現在、映画制作を禁止され、
自宅軟禁中だ。映画を撮れないパナヒに代わり、
友人の監督がやってきてパナヒにカメラを向ける。
その前でパナヒは、かつて当局の許可が下りなかった
映画の脚本を読み上げ、その内容を再現しようとするが、
それも行き詰まってしまう。
「脚本を読むだけなら映画ではない」と、
パナヒは過去の自作を見ながら、
映画を映画たらしめているものについて解説をする。
外では火祭りが行われ、花火が打ち上げられているが、
パナヒは外に出ることができない。
やがてパナヒは自分でカメラ手に取り、エレベーターに乗りこむ。

表現活動がほぼ自由な日本からすると驚きだが、
『チャドルと生きる』『オフサイド・ガールズ』などで知られる
イランの名匠ジャファール・パナヒ監督の作品の大半は、
イラン国内では上映禁止になっている。
2009年の大統領選で改革派を支持した報復か、
また海外での名声を恐れたのか、パナヒ監督は2010年以降、
当局により自宅軟禁の状態が続いている
その上、“出国と20年間の映画製作禁止”という信じられない判決。
これは表現者にとっては、地獄の苦しみだろう。

別にパナヒが過激な活動家というわけではない。
しかし作品が良質なだけに、当局は厳しい処分に出たのだ。
そこでパナヒ監督は、映画の定義そのものを問うような
すれすれのラインで撮影し、タイトルも
『これは映画ではない』にした(もちろん皮肉だ)。
見つかれば没収されるため、自宅で撮影した映像は
密かに協力者によってUSBファイルで国外に持ち出され、
本作はカンヌ映画祭に出品された。

劇映画でないならこれはドキュメンタリーかというと、
そうは思えないような演出が多少見え隠れする。
しかし、あくまで偶然と言い切れる余地もある。
友人の監督と入れ替わるように現れた管理人の青年は本物なのか。
彼がするパナヒ監督が連行された日の話は、
なぜいつも途中で終わってしまうのか。
表現活動を禁じられた作家のギリギリの表現が見えてくる。
当局ばかりか観客をもうまくはぐらかすような
虚実入り乱れた感じが本作の魅力だ。
(★★★☆)

■映画の背景
本作が撮影された(であろう)2011年3月15日は、
イランの新年ノウルーズのイベントのひとつ
チャハールシャンベ・スーリー(本作では「火祭り」)」だ。
その年(イラン暦)最後の火曜日の夜に、
人々は町のあちこちで枯れ草に火をつけ、その上を飛び越して
無病息災を祈る習慣がある。しかしテヘランではけっこう過激なもので、
爆竹やロケット花火が打ち上げられ、
毎年死者やけが人が出るようなものらしいが、
これが若者たちの不満のガス抜きにもなっているという。
本作では、テレビのニュースに日本の津波の映像シーンが映る。
ちょうどそのころの撮影なのか、それともアリバイ作りなのか。

■関連情報
本作は2011年のカンヌ国際映画祭でキャロッスドール(黄金の馬車)賞
を受賞した。過去には『白い風船』がカンヌ国際映画祭で
カメラドールと東京国際映画祭グランプリを、
『チャドルと生きる』がヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を、
『オフサイド・ガールズ』がベルリン国際映画祭審査員グランプリを受賞している。
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by mahaera | 2012-09-17 17:33 | 映画のはなし | Comments(0)
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