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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ふがいない僕は空を見た』 本屋大賞と山本周五郎賞を受賞した作品の映画化

ふがいない僕は空を見た

2012年/日本

監督:タナダユキ
出演:永山絢斗、田畑智子、原田美枝子
配給:東京テアトル
公開:11月17日よりテアトル新宿、銀座テアトルシネマほか にて上映中


2011年本屋大賞2位、
2010年本の雑誌が選ぶベスト10の1位に選ばれ、
山本周五郎賞を受賞した窪美澄の小説の映画化が本作だ。
原作は主人公が異なる5つの短編からなる連作らしいが、
映画はそれを1本にまとめあげている。
その名残か、主婦と不倫関係の高校生の話と思って観ていると、
突然その友人が主人公になったり、
また時間が巻き戻って同じ場面が別の視点で語られたりするのだ。

まず語られるのは、助産院を営む母とふたりの
母子家庭で育った高校生・卓巳と、
あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美の関係。
卓巳はコミケで里美にナンパされ、
コスプレをした情事を重ねていた。
しかし同級生から告白されたことをきっかけに、
卓巳は里美と別れる決意をする。
里美は子作りを求める姑と頼りにならない夫との生活の中で、
卓巳との情事だけが心の拠り所だった。
一方、卓巳の友人の福田は、コンビニでバイトをしながら、
出口の見えない貧しさに絶望を感じていた…。

登場人物たちはみなふつうに生きたいのに、
周りの状況に追い込まれてしまう。
各キャラクターは、脇役に至るまで
その過去や背景が感じられる人たちばかり。
1シーンだけ搭乗する卓巳の父親、
友人の福田のバイト先のバイト仲間である
親切な病院の息子、そしてクラスメイトの女の子、
福田とその女の子が校庭でビラを巻くシーンは、
残酷な美しさに満ちていた

監督は『百万円と苦虫女』のタナダユキ
“性”に始まり、“生”につながる視点は、
原作も監督も女性ならではのものだろうか。
何度も時間が戻って同じシーンが語られるうち、
田畑智子演じる“あんず”の心の行き場のなさが
迫ってくる。
これから登場人物たちがどこへ向かって行くだろうと、
ハラハラしてながらも、
画面から目をそらすことができない作品だった。
(★★★☆)
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by mahaera | 2012-11-19 09:36 | 映画のはなし | Comments(0)
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