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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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新作映画レビュー『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』映画の未来はデジタルのみか

サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ

2012年/アメリカ

監督:クリス・ケニーリー
出演:キアヌ・リーブス、マーティン・スコセッシ、ジョージ・ルーカス、ジェームズ・キャメロン、デウィッド・フィンチャー、クリスファー・ノーラン
配給:アップリンク
公開:12月22日より
劇場情報:新宿武蔵野館、渋谷アップリンク



いまから30年前、音楽を聴く媒体がLPレコードから
CDに替わったとき、市場だけでなく聴く側にも大きな変化が訪れた。
両方が時間を共有していた期間は、わずか5年程度。
世の中からあっという間にLPレコードは消えた。
そしていまやCDも古い媒体となりつつある。
それと同じような変化が、いま正に映画界に押し寄せているのだ。

およそ100年間の間、映画の記録フォーマットはフィルムだった。
しかしデジタル技術の発達によって、
現在は編集から撮影の現場に至るまでフィルムは消えつつある。
写真の世界では、10年前にフィルムからデジタルにすでに
移行が終わったが、映画はまだまだだった。
ビデオ全盛の80年代でさえ、映画はフィルムのものだった。

初期のデジタルシネマは、ドキュメンタリー風の荒々しい画像が特徴で、
美しく繊細な画像ではフィルムにはかなわないと思われていた。
ラース・フォン・トリアーの映画、
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を劇場で観た時、
解像度の悪い画面がスクリーンに大写しされるものだから、
画面に酔ったものだ。
ところがここわずか数年でカメラの性能が飛躍的にアップし、
フィルムとの差が次第になくなっていく。
それまで導入に躊躇していた監督たちも、次々とデジタルへと移行して行く。

本作はキアヌ・リーブスを案内役に、
現在第一線で活躍する映像派の監督や撮影監督たちへ、
フィルムかデジタルか、そしてフィルムは消えて行くのか
を問うドキュメンタリーだ。

推進派のジョージ・ルーカスから
今もフィルムにこだわるクリスファー・ノーランまで、
肯定派、否定派、中間派、それぞれの意見が並ぶ。

いまではほとんどの観客が、これはフィルム撮影か
デジタル撮影かなどとは気にしない。
それだけ差はなくなっているのだ。
でもLPからCDに移行したとき、実は音は良くなってなかったわけで、
CDの音がLP並みに良くなって来たのは、ようやく2000年代のこと。
それでもデジタルリマスターがみんないいわけではなく、
問題はいくら大もとががんばって向上させても、
安いオーディオで聴いていれば、大した差はないということ。

本作でも、どの作家も、最終的には観客が観る環境次第だという。
映画館がデジタル上映の環境を備え付けなければ、
意味がないと。
でも観客はそこまで望んでいるのだろうか。

この5年が、フィルムとデジタルが共存している最後の時間。
そして、フィルムが製造されなくなったら、
もうどちらがいいと、選ぶことができない。
そんなことをこのドキュメンタリーは映画ファンに教えてくれる。
(★★★)

追記
このドキュメンタリーで一番驚いたのは、
『マトリックス』シリーズの監督ウォシャウキー元兄弟の、姉。
本当に女になっちゃんだねえ。
あと、『アラビアのロレンス』の編集者の女性
まだ存命していたこと。
あの有名な、マッチの火から砂漠の日の出の名カット、
やっぱりフィルムだから生まれたのでしょう。
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by mahaera | 2012-12-27 00:41 | 映画のはなし | Comments(0)
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