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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』 インドのジャイプルが舞台

マリーゴールド・ホテルで会いましょう
The Exotic Marigold Hotel
2011年/イギリス、アメリカ、アラブ首長国連邦

監督:ジョン・マッデン(『恋に落ちたシェイクスピア』『Queen VIvtoria至上の愛』)
出演:ジュディ・デンチ(『007/スカイフォール』『Queen VIvtoria至上の愛』)、ビル・ナイ(『ラブ・アクチュアリー』『パイレーツ・ロック』)、トム・ウィルキンソン(『イン・ザ・ベッドルーム』『フィクサー』)、マギー・スミス(『ミス・ブロディの青春』『ゴスフォード・パーク』)、デヴ・パテル(『スラムドッグ$ミリオネラ』『エアベンダー』)
配給:20世紀FOX映画
公開:2月1日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ
上映時間:124分
公式HP:marigold-hotel.jp

こういう映画、好きです
いや、別に舞台がインドだからというわけじゃなくて、
派手さがないけど観客を楽しませ、
しっかりと俳優の演技も見せてくれるから。
同じインドが舞台でも、アメリカ人の
ウエス・アンダーソンが撮った『ダージリン急行』などに
比べるとインド目線が「普通に感じる」のも、
良くも悪くもインドと長く関係を持っている
イギリス製作だからだろうか。
インドに近すぎもせず遠すぎもせずという距離感がいいのだ。

老後をインドのリゾートホテルで過ごそうと、
イギリスから7人の男女がジャイプルにやって来た。
40年間連れ添った夫を亡くしたイヴリン、
退職金を失い予算の都合でインドを選んだダグラスとジーン夫妻、
人種偏見を持つが手術のために仕方なくやって来たミュリエル、
離婚と結婚を繰り返し今はお金持ちの夫を捜しているマッジ、
異国の地で最後のロマンスを咲かせたいノーマン、
そしてかつての友人に会いたいと思っているグレアムだ。
しかし到着早々、彼らの夢は砕かれる。
リゾートとはほど遠い、ボロホテルだったのだ。
経験不足の若い支配人のソニーは、
「最後にはうまくいきますよ」と言い、少しも悪びれない。
お金も戻らず仕方なく暮らし始める7人だったが、
インドに馴染む者、馴染まない者、
それぞれに変化が訪れ始める。

日本でも今やふつうになって来ている、リタイア後の海外生活
日本ならタイやフィリピンといった東南アジアが主なのだろうが、
イギリスではかつての宗主国ということもあり、
インドという選択もあるのだ。
広告に引かれてやってきた男女7人のイギリス人だが、
ホテルは想像と違いボロでまだ改装中。ゴージャスにはほど遠い。
出される料理はインド料理ばかり。
しかし、支配人の青年(『スラムドッグ$ミリオネラ』の主人公役の
デヴ・パテル)は別にだますつもりはなく、
がんばってはいるのだが、どうも現実とズレてしまっている。
これがアメリカ人とかフランス人だったら、
もっとガンガン怒り出す人とかいるんだろうけど、
ここに出てくる人たちはだいたい、不満を持ちながらも
受け入れる人がほとんど。これはイギリス人だからというより、
不満を言うのはみっともないというクラスの人たちだからだろう。
しかし、もともとインドに住んでいたことがあるグレアム以外は、
別にインドが大好きという訳ではないし、
インドのことは何も知らない。
当然ながら現地に溶け込める人もいるし、
拒否反応を示してホテルの中に閉じこもってしまう人もいる。
そのあたりの描き方がさらりとしているのは、
映画的な仕掛けというより俳優の演技力に委ねているからだろう。
ハリウッドスターではそんな感じにはならず、
本当にそういう人がいそう、というのがイギリスの俳優の良さだ
(もっともジュディ・デンチはその数日前に観た『007/スカイフォール』が頭に残って、最初は“M”に見えた)。

老人はもう余生を静かに過ごして終わりなのかという問いは、
これから老人になる僕にとっても興味あるところ。
この映画に出てる老人たちはインドを訪れたことがきっかけで、
みな新しいことを始めだす。
そしてそれができない人は、もといたところに戻るしかない。
若い人たちは「老人にとってはもう何も起こらず、何も変わらないほうがいいんじゃんない」と思っているかもしれないが、それは勘違いかもしれない。
映画に確かこんな台詞があった。
「変わることが怖いんじゃない。このまま何も変わらないことが怖いんだ」
老人たちだって、ハプニングやロマンス、
そして思いがけない変化や感動を望んでいるのだ。
実際、海外をあちこち旅行していると、
若者たちより老人のほうが好奇心が強く、元気だったりする。
きつい階段を上った展望台で、若者がへばって座り込んでいるのに、
老人が「いや〜、来て良かった」と元気な場面に遭遇するし(笑)

それはさておき、この国宝級の俳優たちのやり取りに比べると、
若いインド人カップルのエピソードはややドタバタ気味。
でも、このカップルの恋愛と親の反対、という流れがないと
ドラマが停滞するので、ここはアクセントとして必要だろう。
ただ、いくら進んでいるからといって、インドの若いカップルが
町中で気軽にキスはしないと思うのだが(笑)
(★★★★)

■映画の背景
映画のロケは、主にラージャスターン州のジャイプルと
ウダイプルで行われた。マリーゴールドホテルがある設定の
ジャイプルでは、ピンクシティといわれる旧市街や町中、
空港が映るが、とくに観光名所は出て来ない。
ホテル自体はジャイプルではなく、ウダイプルの
ケンプールにあるラウラ・ケンプールホテルを利用して撮影した。
ホテルは4つ星のヘリテージホテルだが、
映画ではまったくそう見えないから一部を使っているのだろう。
若いカップルのデート場所の階段井戸は、
監督がインタビューで「アンベール城のそば」と答えている。
郊外のカノータフォートでは、マッジがお金持ちの男を
捜してやってくるヴィセロイクラブViceroy Clubを、
ウダイプルのレイクパレスを望むテラスがあるホテルは
Jagat Niwas Palace Hotel。このホテル、
テラスレストランのほうが有名のようだが、湖が見える部屋はRs3250〜。
くわしくは監督インタビューを。
http://www.fodors.com/news/story_5457.html

旅行人のWEBサイト「旅シネ」に寄稿したものと同じ原稿です。
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by mahaera | 2013-01-13 22:53 | 映画のはなし | Comments(0)
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