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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『人生、ブラボー!』 遺伝子上の子供が533人もいることを知ったらあなたはどうする?

人生、ブラボー!
Starbuck
2011年/カナダ

監督:ケン・スコット(『大いなる休暇』脚本)
出演:パトリック・ユアール、ジュエリー・プルトン、アントワーヌ・ベルトラン
配給:クロックワークス
公開:1月26日よりシネスイッチ銀座にて
上映時間:110分
公式HP:jinseibravo.com/news/


映画が始まってセリフがフランス語なのに気づく。
あれ、これフランス映画だったかな?と一瞬思うが、
この映画となるカナダのケベック州はフランス語が公用語。
そのせいかもしれないが、本作はアメリカンコメディと
フランスのコメディがミックスしたような、
ほんわかとした作品になっている。

カナダのケベックに住むダビッドは42歳。
父親の経営する肉屋で働いているが、遅刻や配達忘れは当たり前。
しかも8万ドルあまりの借金があり、
取り立て屋に暴力も振るわれるダメ男。
婦人警官の恋人の妊娠が発覚してもその頼りなさに、
恋人に自分ひとりで子供を育てると宣言されてしまう始末。
そんなダビッドのもとに弁護士が現れ、
23年前にクリニックに提供した精子から533人の子供が誕生。
そのうち142人がダビッドの身元開示を求める訴訟を
起こす予定だと告げられる。受け取った142人のリストを
ゴミ箱に放り込むダビッドだったが、そのリストの中に
自分の好きなサッカーチームのスター選手がいることを知り、
身元を隠して密かに遺伝子上の子供たちに会いに行き出す。

主人公は42歳だが、大人のような責任感に欠けている。
しかし心は優しく、人に好かれる魅力も持っている。
本作をひとことで言ってしまえば、
子供のように自由に生きていた男が、遺伝子上の子供たちと
出会うことにより、自身が父親(大人)に成長して行くストーリー
だ(同時期公開の『テッド』の主人公と似たような大人だ)。
しかし事はそうは簡単ではない。

最初に知った“遺伝子上の”子供は、サッカーの花形スター選手。
俳優を目指す前途洋々の青年、薬物依存症だが
そこから脱出しようとしている少女…。陰ながら彼らの手助けを
しているうちに、自分は彼らの“守護天使”なのだと意気揚々と
するダビッドだが、未来が開けている青年たちばかりではない。
重度の障害を持って入院している子供に出合った時、
彼はそれも引き受けられるかを突きつけられるのだ。
それまでいい気分となっていた観客も、ここで目覚める。
子供が優秀だろうが、ダメ人間だろうが、健康だろうが、
障害があろうが、本当の自分の子なら、
親は愛して、責任を持って面倒を見なければならない。

このビターさがダビッドを成長させ、また作品の深みでもある。
やがて実の父親が取立て屋に襲われるに至り、
お金のために仕方なく子供たちを逆告訴する状況に追い込まれる。
そして恋人との間にできた自分の子供という現実に
目をそらしてしまっている自分に気づく。
「オレは何をやっているんだろう」。

なぜ彼は20年前にひたすら精子を提供し続けたのか。
マスコミや世間は「カナダの恥」と彼を物笑いにするが、
その理由が分かった時、彼が心優しい人間であることが分かる。
あとは責任感と勇気だ。
甘い結末と言う人もいるだろうが、観客は映画に出てくる
みんなには幸せになって欲しいと願っているはずだ。
人生、家族、親子、そして大人になることとは何なのかについて、
考えさせてくれる。とてもあと味のいい作品だ。
(★★★☆)

旅行人のウエブサイト「旅シネ」に寄稿したものと同じものです。

■映画の背景
原題の「Starbuck」とは、主人公ダビッドが精子を提供する際に使用していた名前だが、これは実際にいたカナダ生まれの種牛の名前だ。世界中に20万頭に及ぶ娘たちがいるという。

■関連情報
ハリウッドで「ドリームワークス」によるリメイクも決定したというが、このオリジナルのほのぼのとした味わいを出せるかどうかが不安。監督のケン・スコットはリメイクにも続投するという。あとは俳優次第か。
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by mahaera | 2013-01-18 23:10 | 映画のはなし | Comments(0)
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