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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『脳男』日本版『ダークナイト』を目指したのだろうが、2つの異なる演技プランがダメに

脳男
2013年/日本

監督:瀧本智行
出演:生田斗真、松雪泰子、江口洋介、二階堂ふみ、太田莉菜、夏八木勲、石橋蓮司
配給:東宝
公開:2月9日より全国東宝系にて

原作は2000年に刊行され、江戸川乱歩賞を受賞した
首藤瓜於の小説。それを『八月の蝉』の監督の成島出が脚本化し、
『犯人に告ぐ』の瀧本智行が監督した
アクション・ミステリーがこの『脳男』だ。

都内近郊で起きていた連続爆破事件を追う刑事・茶屋は、
遺留品から犯人のアジトを見つけ出すが、
踏み込むと同時にアジトは爆発。
犯人は逃走し、代わりに傷を負ってそこにいた男を逮捕する。
男は“鈴木一郎”と名乗るが、肝心なことは何も話さない。
爆破事件の現場にいた精神科医の鷲谷真梨子が、
一郎の精神鑑定を担当する。
真梨子は、「彼には生まれつき感情がないのではないか」と
疑いを抱き、一郎の生い立ちを調べる。
しかし連続爆破犯の緑川紀子も、その後を追っていた。

東宝試写室で始まる前の30分、ずっとキングクリムゾンの
「21世紀の精神異常者」が流れていた。
ここの試写室はテーマ曲を鬼リピートしてかけるのだが、
まだこの曲だからいいけど、前に来たとき中島みゆきを
10回ぐらい聴かされて、映画を観る前から嫌になった。
中島みゆきが嫌いって訳じゃなくて、同じ曲をかけるにも
ほどがあるでしょ。

さて、原作は読んだことがないのだが、調べてみると
犯人役は中年サラリーマンというように紹介されているので、
発表から10年以上たったためか、犯人のキャラが変更されている
中年サラリーマンから若い女の子に(笑)
で、その世界観や“脳男”と悪役の緑川の対決の図式は、
明らかに『ダークナイト』の影響が感じられる。
というか日本版『ダークナイト』やりたかったんでしょ
爆弾魔の緑川紀子は、「さあ、どっちの命をとる?」
と、ジョーカーと同じように選択を迫るが、
「映画秘宝」のインタビューで緑川役の二階堂ふみが
「『脳男』で爆弾魔を演じることになったんで、
役作りのために何度も見直した」

て、言っているので、たぶん監督から指示があったのだろう。

バットマンとは異なり、この「脳男」には
正義を果す原動力ともなる“怒り”がない。
その点、生田斗真の“脳男”はまさに適役。
悪役もいいだろう。高速道路での車のアクションシーンとか、
けっこういい感じ
出し。続編も作られそう。

ただねえ。松雪泰子と江口洋介、まったくダメだよぉ
ダークヒーローと悪役が、人間性を捨て去っているので、
人間代表として、性善説の精神科医と、
悪人は許さねえ的な刑事というキャラにしたのだろうが、
オーバーアクトもいいところ。いや、彼らはいつもの
演技をしているのかもしれないけれど、
若手たちの演技のトーンと、まったく合ってなくてちぐはぐ。
江口洋介の熱血刑事はテンション高すぎて、
だんだん失笑気味
になってくるし、
松雪泰子の精神科医は、もう善意の押しつけと、
テレビのような“わかりやすい”感情表現にうんざり
してくる。
おかげで、若手がダークな世界観をクールに演じているのに、
何か台無しになってしまう。つまり芝居が古くさいのだ。

バランス取りたくてそういうキャラにしたのかもしれないが、
そこが非常に残念。
あと「殺人を犯した犯罪者は更正しない」とも捉えかねない
結論はどうかね。「悪い奴は治らない」じゃなくて、
状況次第で「悪」と「善」のどちらにもなってしまうというのが、
『ダークナイト』だと思うのだが(ジョーカーのぞく)。

ラストもねえ。そうじゃないだろって突っ込み入れたくなった。
たぶん、脚本の段階では良かったのだろうけれど、
役者の演技プランを仕切れなかった監督がダメなんだろうなあ。
邦画、そんなのばっかりだけど。
いい所もあっただけに、残念。
(★★☆)
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by mahaera | 2013-01-26 00:53 | 映画のはなし | Comments(0)
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