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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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DVDで観た最近の映画2013 -1『ダークナイト・ライジング』『J・エドガー』『ニーチェの馬』『ドライヴ』

旅行雑誌「旅行人」のウエブサイト、旅シネのベストテン
毎年1/20ごろアップしているため、
TSUTAYAに行って見逃していた2012の映画を
何本か借りてまとめて観ました。
忘れないよう、感想を簡単に上げておきます。

1/12 『ダークナイト・ライジング』(クリストファー・ノーラン監督)
“超”期待してみたのだが、映画が進むにつれて、
その盛り上がらない内容に、不安とイライラがつのる。
「どこから面白くなるんだ」と。
“意外な悪役”を最後に登場させたおかげで、
今までのベインの悪役ぶりがすべで“無”になってしまった
のはいかがなものか。「恋するベイン」「下っ端ベイン」
そりゃあ、がっかりだよ。最強の敵ってウソじゃん
バットマンと警官たちが閉じ込められている辺りも、
かったるい。ここで活躍しているのは、ゴードン警視。
とにかく、演出のテンポが悪いので、乗り切れない。
あと、政治やアメリカ社会を反映させるのもいい加減に。
あくまでヒーロー映画なんだから、それを忘れちゃ困る。
『アベンジャーズ』を見て、ノーランには勉強して欲しい
ラストも『アベンジャーズ』とまったく同じだが、
あちらは闘う社長が身を挺してNYを救い、感動させるが、
ブルース、自動操縦ってオチはないんじゃない。
最後の「彼がロビンだった」というのは良かったけど。
(★)

1/13 『J・エドガー』(クリント・イーストウッド監督)
FBIフーパー長官の伝記映画だが、彼の一生を追う訳ではなく、
彼の晩年の日々と、彼がFBIを立ち上げ、
躍進していく様子が交互に描かれていく。
母親(007のMことジュディ・デンチ)の歪んだ期待に
応えようと、昇進して権力を手に入れようとする
エドガー(ディカプリオ)だが、実は彼はゲイだった
世間体を気にする彼はそのことをひたすら隠し、
副長官への気持ちもストレートに表せない。
彼が上昇していく時期と、すでに下降している時期を
交互に見せることにより、この男の孤独に迫った作品。
そのため、FBI史や、裏権力史的な内容を求めると
肩すかしをくらう。そのあたりはほぼ語られていない。

ディカプリオのフーバーは、まるで大物に見えない。
実際のフーバーも小男で、アメリカを裏で支配するような
男にはまるで見えなかったのだろう。それに支配する
意識もなかったに違いない。ただ、特権を乱用し過ぎた
だけで、それも「よかれ」と思ってやっていたのだろう。
晩年のフーバーの家の描写がわびしい。
この家にフーバーの遺体に毛布をかけるものも
いないところに、この男の孤独がよくわかる。

イーストウッドの演出はいつもながら古くさい所もあるが、
安心して観られるし、しっかり作っているところは好感。
だが、彼の作品としては、ちょっと落ちることは確か。
(★★★)

1/14 『ニーチェの馬』(タル・ベーラ監督)
モノクロの画面に、荒涼とした土地に住む父と娘の
生活が淡々と描かれる一週間。
最初のナレーションをのぞくと、
セリフが出るのが始まって30分ぐらいで、
それまで字幕があることを忘れていた。
馬を引いて帰って来た父、ゆでたジャガイモを
ひとつずつ食べる父娘。
何の映画かさっぱりわからず2時間、
その間に馬は働かなくなり、人々はよその土地に逃げ出し、
井戸の水は枯れてしまう。
ジャガイモを食べる行為が毎日くりかえされる。
そして火がつかなくなり、太陽も昇らなくなり、
生のジャガイモを食う父。ここで初めてこれは
聖書の最初の7日間を逆行していることに気づき、
「世界の終わり」の話であることがわかる。
とはいってもSF的な世界の終わりの話ではない。
これは自分にとっての世界、つまり人生の最後の話でもあり、
映画内時間が後半に向かって加速度的に早くなっていくのも、
人生末期の時間の早さを感じさせる。
毎日同じように暮らしていても、ある日いろいろなものが
できなくなり、やがて最後の命も消えてしまう。
しかしその日が来るまで、人は気づかないものだし、
ゆでることも焼くこともできなくなったジャガイモでさえ、
食べていかねばならない。
もうあの荒涼とした風景は、映画館で他の観客と共有して
見るべきものだなあ。DVDで見るなら、
なるべく天気が荒れて、ものさびしい日曜の昼間がいいかも。
(★★★★)

1/18 『ドライヴ』(長い名前の監督)
昼間は自動車修理工場で働き、夜はときどき犯罪者の逃がし屋を
している流れ者の男(ライアン・ゴズリング)。
同じアパートの同じ階にすむ母子と知り合い、
彼は彼女に惚れる。しかし出所して来た彼女の夫が、
ヤクザに質屋強盗を強要され、その逃がし屋を手伝うことに。
ところがそれはただの強盗ではなく、マフィアの金の強奪だった。
依頼したヤクザは口封じのために、関係者の命を狙う。
彼女の夫は強盗時に死亡、強盗仲間も殺されるが、
ドライバーは反撃し、殺し屋たちを返り討ちにしていく。

ゴズリングはアメリカでは有名な子役がキャリアのスタート。
映画によってさまざまな役をするため、
すぐに「あの人ね」と浮かばないので日本では人気がないが、
アメリカでは実力も兼ね備えた、人気俳優だ。
ここでは、寡黙なドライバーが困っている母子を助け、
ギャングたちと対決するという、本来は高倉健的な役柄なのだが、
相手を殺す描写が過激で、病的な暴力男に見えてしまう
何かヘンだなと最初に感じるのが酒場のカウンターで、
かつて逃がしてもらった強盗が彼に話しかけるのだが、
「このまま黙って立ち去るか、歯をへし折られたいのか」と
すごまれる。ドライバーは一見、ヤサ男にも見えるし、
優しい所を見せたあとだけに、ドキっとするシーンだ。
そのあと、モーテルを襲う殺し屋を返り討ちにするのだが、
その手際の良さに、ただ者ではないことがわかる。
流れてこの町にやってくるまでは、
彼はいったい何者だったのだろう。
(ジェイソン・ボーン級)
そして、彼は基本的に銃を携帯しないで闘う。
エレベーターのラブシーンのあとの殺し屋との戦いは、
ミュージックビデオからスプラッターへの移行のようで、
観客の神経を最高に逆なでする。そこまでやるか。
そこまでやっておきながら、ボスキャラ2名との戦いは、
いきなりカメラが引いてしまうのだ。
そこがとてもクールだ。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』好きな僕としては、
もちろん外せない1本だ。


(★★★★)
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by mahaera | 2013-01-27 12:46 | 映画のはなし | Comments(0)
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