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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『シュガーマン 奇跡に愛された男』本年度アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作品

シュガーマン 奇跡に愛された男
Searching for Sugar Man
2012年/スウェーデン、イギリス

監督:マリク・ベンジェルール
出演:ロドリゲス
配給:角川書店
公開:3月16日より角川シネマ有楽町ほか
上映時間:87分
公式HP:www.sugarman.jp


ポップミュージックの歴史は、ヒットせずに消えていった
無数のアーティストの屍の上に成り立っている
ところが、彼はそうではなく実は「売れていた」。
しかもアメリカから遠く離れた地で。
そのことを本人がまったく知らなかったことは大きな驚きだ。

1960年代末、デトロイトにひとりのミュージシャンが現れた。
彼の名はロドリゲス。プロデューサーの目に留まり、
2枚のアルバムを出したが全く売れず、契約を解除され姿を消す。
アメリカではそのまま彼は忘れ去られたが、
思わぬところで彼の音楽はヒットしていた。
1970年代の南アフリカでは、反権力のシンボルとして
若者たちに愛され、アメリカから渡って来た彼の2枚のレコードは
いずれも大ヒット。ロドリゲスはビートルズと並ぶ
ポピュラーなミュージシャンとなる。しかしプロフィールは謎で、
ステージ上で自殺したという噂も流れていた。
90年代に入り、ファンがこの謎のアメリカ人ミュージシャン、
ロドリゲスの真実を探るため情報を集め出す。。

このドキュメンタリーでは、前半はロドリゲスの謎に迫る一方、
その曲が南アフリカでなぜ好まれたかを描き出す。
1970〜80年代の南アフリカはそのアパルトヘイト(人種隔離)政策
で知られるが、抑圧は黒人だけに向けられた訳ではなかった。
報道の自由などさまざま自由を禁じ、音楽も検閲の対象だった。
また、世界のニュースが入らないようにと、
外国文化の流入も制限されていた。
いわば「鎖国」状態だったのだ
それに対して自由を求める若者たちが愛聴したのが、
ロドリゲスの歌だった。反権力、社会の風潮を
皮肉った歌詞、それらに共感したのだ。

中盤になり死んだと思われていたロドリゲスが、
まだ健在だということを明かされる。
インターネットでロドリゲスの消息について尋ねるサイトを
立ち上げたところ、“彼の娘”と名乗る女性から、
「父は健在だ」というメールが来たのだ。そこから話は転がり出す。
歳を経たロドリゲスがいい。彼の南アフリカ公演が実現し、
彼を待つ大勢の人々が映し出される。しかし突然の人気にも
動ずることなく、少しも浮ついた所がない。
その飄々とした様が、またカッコいいのだ。

彼の身の回りの人にとっては、70歳近い隣人が
外国でそんなに人気があることなんて信じられない話だろう。
しかし本作が作られたことにより、アメリカ本国でも
ロドリゲスはほとんど初めてだが、知られるようになった

しかし、そんな奇跡のような話が、現代にあるのだ。
不遇のミュージシャンの成功物語には
心情的にどうしても弱い僕だが、そうでなくとも
彼が観客に歓声で迎えられる姿には、拍手を送りたくなるだろう。

本年度のアカデミー賞では、長編ドキュメンタリー賞を受賞した。
(★★★★前原利行)
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by mahaera | 2013-03-01 22:38 | 映画のはなし | Comments(0)
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