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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『クラウド アトラス』手塚治虫の名作「火の鳥」をイメージさせる大作

クラウド アトラス
Cloud Atlas
2012年/アメリカ

監督:ウォシャウスキー姉弟(『マトリックス』シリーズ)、トム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』『パフューム』)
出演:トム・ハンクス 、ハル・ベリー、ジム・ブロードベンド、ヒューゴ・ウィービング、ペ・ドゥナ、ベン・ウィショー、スーザン・サランドン、ヒュー・グラント
配給:ワーナーブラザース映画
公開:3月15日より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他、全国
上映時間:172分
公式HP:www.cloudatlas-movie.jp


もうこれは、手塚治虫の「火の鳥」でしょう、と言いたいぐらい
その世界観は似ている。もっとも「火の鳥」だって何
かにインスパイアされたわけで、
「いくつもの異なる時代に転生を繰り返す人間たち」
という発想は、アジアでは珍しくないのかもしれない。

1849年、若き弁護士ユーイングは仕事で行った
太平洋の島からの帰り、船で生死の境をさまよう。
1936年、青年音楽家フロビシャーは老作曲家の採譜をするうち、
あるメロディーが浮かぶ。しかし運命は悲劇を呼ぶ。
1973年、ジャーナリストのルイサは原子力発電所の陰謀を探るが、
関係者が次々と殺され、やがて彼女自身も命を狙われる。
2012年、老編集者のカベンディッシュは自らが生んだトラブルから
養老院に監禁される。そこから脱出を試みるが…。
2144年、全体主義国家ネオ・ソウルで、クローンのソンミ451は
自我に目覚めた。革命軍に加わったソンミが伝えたメッセージとは。
そして数百年後、文明が崩壊した地球で、人々は弱肉強食の世界で
生きていた。しかし人類には最後の時が迫っていた。

過去、現在、未来…。500年にわたる時間軸で、
6つのドラマが平行して描かれるうち、そこに共通して流れる
“つながり”が見えてくる。そしてそれぞれのドラマの
主人公は別で、異なるドラマでは脇役だったり、
あるいはまったく出て来なかったりする。
ベストセラーになったらしい壮大な原作を、野心を持って
映画化したのは、『マトリックス』の監督ウォシャウスキー姉弟
『ラン・ローラ・ラン』の監督トム・ティクヴァだ。
ウォシャウスキー姉弟は熱心な日本文化のファン。
とりわけコミックに影響を受けている。
姉の方はもともと男性だったが、「マトリックス」シリーズ後に
女性に性転換。前世や来世を信じ、「別の世界では女性(男性)
だったかもしれない」というようなコメントから、
この作品にひかれたのだろうか。

6つのドラマは時系列に進む訳ではなく、それぞれの話が
少しずつ進んで行く。毎回同じ順ではなく、何かしらの
キーワードが結んでいくのだ。そして出てくる人物も、
キャラばかりか性別さえ変わる。
たとえばトム・ハンクスなら、太平洋の話なら
主人公の弁護士の持ち物に目がくらみ彼を殺そうとする悪徳医師だ。
この時に出てくる宝石は、最後の未来の話にも再び登場し、
そこではハンクスが主人公として話が進む。
同じ太平洋の話に出てくる奴隷農園を経営する牧師は
ヒュー・グラント
彼は最後の話にも悪として登場する。生まれ変わっても
ひたすら悪人もいれば、少しずつ良くなっていくものもいる。
そこから浮かぶ言葉は「カルマ」である。

少し間違うと、ひたすら複雑な話になる所だが、
そこは壮大な実験作だがハリウッド映画。6つの話のテイストは、
ある意味リアルさを排除してデフォルメし、
わかりやすぎるぐらいわかりやすくしているので、難しくはない。
海洋冒険ドラマ、文芸ドラマ、70年代サスペンスドラマ、
コメディ、チープなSFアクションなどなど。
それも手塚治虫の「火の鳥」みたいで、
黎明編と未来編と鳳凰編と望郷編がすべて入っているといえばいいだろうか。
すべての物語がクライマックスを迎えるラストには、
かなり興奮した。3時間近い大作だが、少しも飽きさせない。
僕の中では、かなり好きな部類に入る映画で、
すぐにもう一度見たくなった。しかし人を選ぶ映画だろうなあ。
(★★★★前原利行)

■関連情報
オスカー狙いで昨年秋に全米で公開されたが、映画は大コケしてしまった。オスカーも無冠。不思議でしょうがないのだが、アメリカ人には、いくつもの時代が同時進行するのと、輪廻はわかりずらいのか?
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by mahaera | 2013-03-10 21:41 | 映画のはなし | Comments(0)
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