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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『オブリビオン』ディック的世界をT・クルーズ主演のビッグバジェットで描く

オブリビオン
Oblivion
2013年/アメリカ

監督:ジョゼフ・コシンスキー
出演:トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、モーガン・フリーマン
配給:東宝東和
公開:5月31日より全国


映画のタイトル「オブリビオン(忘却)」
表されているように、本作はSF映画であると共に、
記憶を失った男の、アイデンティティ探しの物語でもある。

2077年、地球は“スカブ”と呼ばれるエイリアンによって壊滅した。
侵略者は撃退したものの、自然災害や核戦争により地球は荒廃し、
人類は他の惑星へ移住を果していた。
荒廃した地球に残っているのは、高度1000mの管制塔に
勤務するジャックとその妻ヴィクトリアだけだった。
彼らの任務は地球から残された資源を集める機械と、
無人偵察機を管理すること。
機密保持のために、記憶を消されて送り込まれた2人だが、
ジャックは毎夜、見知らぬひとりの女性の夢を見ていた。
勤務期間終了まであと2週間に迫ったとき、
パトロール中にジャックは地下に潜むスカブの攻撃を受ける。
しかしなぜかスカブたちはジャックを生け捕りにしようとしていた。
数日後、地球に宇宙船の救助カプセルが墜落。
その中に眠っていた女性は、
ジャックが毎夜夢に見ていた女性だった。。。

映画の中盤までは、登場人物はジャックとそのパートナーである
ヴィクトリアのみ。無人の地球で、時おり“スカブ”の
攻撃を受けたりして故障した偵察機の修理をしているジャック。
自分の任務に関して何の不満も疑問もなく、
宇宙空間にある母船との交信だけが外界とのつながり。
記憶を消されたはずのジャックだが、夢の中にはいつも
同じ女性が登場する。しかも場面は
生まれていないはずの壊滅前のニューヨーク、
エンパイアステートビルの屋上だ。

出だしはいくつかの謎が散りばめられていても、
荒廃した地球をSFXで見せてくれるスペクタクル
注意を引かれて、主人公ジャックと同様に
映画を観ている私たちもさほど疑問には感じない。
それが変わるのは、中盤、“スカブ”たちの誘導電波により、
宇宙船の救命ボートが地球に落下するところから。
救助カプセルの中には、ジャックが毎夜夢見る女性が。
そして、彼女はジャックのことを知っているようだ。

勘のいい人なら、このあたりで謎の答えに気づくだろうが、
映画はさまざまな展開を用意し、観客の気をそらして、
答えを後半まで先延ばしして行く。
そして、私たちは後半になり、この映画は
“自分はいったい何者なのか”という
フィリップ・K・ディック的世界の映画化であることに気づく。
ディックの映画化で有名なのは『ブレードランナー』だが、
監督のリドリー・スコットは原作を全く読んでなかったので、
あまりディック的な感じはそこにはない。
主人公のハリソン・フォードも
自分自身について悩むキャラにはみえない。
むしろ『トータルリコール(追憶売ります)』
『スクリーマーズ(変種二号)』
『クローン(にせもの)』
『ペイチェック消された記憶(報酬)』
や、ディック作品ではないが『マトリックス』の1作目、
『月に囚われた男』などにその影響を感じる。
そういえば、クルーズが前に出た
SF『マイノリティ・リポート』もディックが原作だった。

トム・クルーズ主演ということで、抵抗がある人もいるだろうが、
それを抜きにして考えれば、内容はかなりハードなSF。
むしろ彼が出ることにより予算が増えたことで、
スケール感が出るCGや、未来のメカなどの
造形デザインがかなりお金をかけて凝ったものになり、
そちらも楽しめるようになっている。
悲しくも希望の持てる結末は、なかなか僕好みでもある。

人類がいなくなる前に建てられた小屋で
クルーズが針を落とすアナログレコード。
何の曲がかかるのかなと思っていたら。
レッド・ツェッペン「ランブルオン」
プロコルハルム「蒼い影」
という選曲でした。なぜ?
(★★★☆)
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by mahaera | 2013-05-09 11:10 | 映画のはなし | Comments(0)
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