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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『クロニクル』 飛行機の機内で見た思わぬ拾い物。ボンクラ高校生が超能力を

クロニクル
Chronicle

監督 ジョシュ・トランク
出演 デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン
TOHOシネマズ日劇ほかにて公開中


アメリカではヒットしたというこの映画、
なぜか日本では公開のメドが立たず、
今、ひっそり公開されているが、
これがなかなか面白い。
僕は「面白い」という噂は聞いていたが、見る機会がなく、
たまたま乗った国際線の飛行機の機内映画で鑑賞。
ノースター映画ながらも、それこそこの映画にふさわしい。
アメリカでは低予算なのかもしれないが、
ちゃんと使うべきところでは特撮を使っているので、
安っぽい感じもしない。何で日本では邪険にされているか不思議だ。

高校生のアンドリューは孤独だ。
父親は暴力をふるい、母親は寝たきり、学校では友達もいない。
そんなアンドリューが日課にしているのは
ビデオカメラに向かって話しかけることだった。
ある日いとこのマットにパーティに
アンドリューは連れて行かれるが当然馴染めない。
しかしその夜、マットとアメフトの人気者のスティーブに
近くの洞窟探検に誘われ、不思議な物体に触れた3人は、
超能力を身につけてしまう。
最初は物を動かす程度だったが、その力は使っているうちに
どんどん力を増し、ついには自分を浮かせて飛行もできるように。
そして、アンドリューはその力を
自分の思い通りに使うようになって行った。

念動力を、ふつうの高校生が身につけたらどうなるか。
本作では、いじめられっ子、インテリ、学園の人気者
3人が、ふとしたことからそれぞれ力を身につける。
学校内では、それぞれ所属するグループが違うが、
そのことにより3人の間に友情が築かれるが、
やがて亀裂が入って行く。
普段の生活に何の不満も無い2人にとっては、
新しい遊び方を手に入れた程度だが、
不満の中に生きているアンドリューにとっては、
生活を一変させる大きな力だ。
“力”を使って、学園の人気者になるだけでは、
変わらない。それに所詮高校生なのだ。

映画は最初は、ボールを動かしたり、
女の子のスカートをめくったり、車を勝手に移動させたりと
いたずらで満足してる3人を映し出すが、
アンドリューは次第にエスカレートし、
ついには人に危害を加えるまでにいたる。
「これは自分に特別に授かった力なのだ」
そんなアンドリューを、他の2人は救うことができない。

映画は「ブレア・ウッチ・プロジェクト」や
「パラーノーマル・アクティビティ」のように、
すべてカメラ目線で動いて行く
最初はアンドリューが回しているカメラの映像という
語り口だ。しかしアンドリューが“力”を手に入れると
カメラはその力によってアンドリューから離れ、
客観的にアンドリューを含む3人を映し出して行く。
それまでアンドリューに共感していた観客は、
それとともに共感を失い、彼の怪物性を目の当たりに
していくという仕掛けだ。

見ていて大友克洋の「AKIRA」が浮かんだが、その通り。
監督はそれをイメージして脚本を書いたというのだ。
ラストの都市破壊、超能力者の空中戦は見もの。
そして社会的弱者が力を得て、
それをネジ曲がったほうに使ってしまうという悲劇が
やるせない。
ということで、「マン・オブ・スティール」よりも
「ワールド・ウォーZ」よりもおすすめの作品でした。

★★★☆
by mahaera | 2013-10-01 11:01 | 映画のはなし | Comments(0)
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