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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『マルティニークからの祈り』こんな領事館員はいらない

マルティニークからの祈り

2013年/韓国

監督:パン・ウンジン
出演:チョン・ドヨン(『シークレット・サンシャイン』)、コ・ス(『高地戦』、カン・ジウ
配給:CJ Entertainment Japan
公開:8月29日よりTOHOシネマズシャンテほか
上映時間:131分
公式HP:martinique-movie.com


■ストーリー
頼りないが優しい夫ジョンベと幼い娘ヘリンと幸せな日々を過ごしていたジョンヨン。しかし夫が連帯保証人になったことで多額の負債を抱え、ジョンヨンは夫の友人に持ちかけられた“金の密輸”の仕事を引受けてしまう。しかし荷物の中身は大量のコカインで、ジョンヨンはパリのオルリー空港で逮捕されてしまう。夫のジョンベは妻の無実を訴えるが、国の役人の仕打ちは冷たいものだった。収監から三ヵ月後、ジョンヨンはカリブ海の島マルティニークの刑務所に移送される。そこで囚人や看守たちに酷い扱いを受け、ジョンヨンは心身ともにボロボロになっていく。

■レヴュー

自分がよく海外に行く身だから余計そうなのだと思うが、映画の中盤から最後まで怒りがこみ上げてきた。「あんな領事館職員、こそ島流しにしろよ!」

平凡な一家に経済的な危機が訪れ、それを打開するために妻が違法な“運び屋”に手を出し、捕まってしまう。主人公はそれが密輸だとは知っていたが、まさか重罪になる“麻薬”だとは知らされていなかった。英語もうまく話せない彼女なので、フランス語で自分の潔白を訴えることもできない。まあ、フランス人はフランス語を話さない人には実に不親切なのだが(とくに公務員は最悪)、韓国の公務員はもっと酷かった。通訳をつけることもせず、まして自国民を保護しようという気もさらさらないのだ。映画の中盤から、この職員たちにイライラさせられていく。

フランス人が冷たいとか、刑務所の看守や囚人のイジメを受けるというのはまあ想定内として、領事館員がまるで親身にならないというのはどういうことだろう。「公務員に雑用をさせる気か」とつぶやき、韓国から出張して来た上役にはひたすらへいこらし、挙げ句の果てには重要な裁判書類を失くし、そのことにも気がつかない。「助けてあげよう」という発想がまるでない。韓国で主犯を捕まえようとする夫の努力に対しても、検察は非人間的に接し、おまけに無能。むしろヤクザたちのほうが頼りになるような描かれ方だ。こうした「上から体質」というのは、どの国でもあるが、韓国はちょっと酷すぎるのだ。

物語の中心となる一家が、典型的なブルーワーカーでなかったら、もう少しうまくやりようがあったのかもしれない。頼りがいがないながら、それでも必死で妻を助けようとする夫役のコ・スは、ちょっと“いい男”すぎてリアル感が薄いが(もっとオッサン顔の俳優が良かったかも)、韓国人女優の中では美人とはいえないチョン・ドヨン(もう40歳)は、うまく“学のないおばさん”感を出している。無知が人を不幸にしていく辛さが、伝わってくるのだ。

ちょっとベタだが、夫と妻の再会シーンでは、試写室では涙する人も。それだけに、そのあとの領事館職員の酷さは、石を投げたいくらいである。フランスの判事も「あなたの国の領事館は怠慢だ」と嘆くぐらいだから。まあ、昔は日本の領事館員も横柄な人がいたのだろうけど、いまどきこんな人はいないと願いたい。僕が行くような日本領事館は、たいてい途上国なだからか、職員の方々は親切な人が多い。結局、この職員たちは左遷させられるのだが、行き先がウズベキスタンかカザフスタンかって噂され、あれらの国の領事館は韓国外交部の左遷先なのかって思った。まあセリフはフィクションだろうけど、「ウズベキスタンかカザフスタンかって御免だねー」と映画を観ている人が思うのを想定しているんだろうけど、両国に失礼だぞ(笑)(★★★)

■映画の背景
マルティニークのシーンは、やはりカリブ海にあるドミニカ共和国で撮影された。

(このレビューは旅行人のサイト「旅シネ」に寄稿したものと同じです)
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by mahaera | 2014-07-09 16:27 | 映画のはなし | Comments(0)
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