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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『アメリカン・スナイパー』勝っても負けても戦場は人間を壊していく

アメリカン・スナイパー
2014年/アメリカ

監督:クリント・イーストウッド
出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:2月21日より全国


昨年末にアメリカで公開され、記録的な大ヒット
(イーストウッド映画史上最高、戦争映画としては
「プライベート・ライアン」をしのぐ興収)を続けている、
イーストウッド監督の新作『アメリカン・スナイパー』を観る。
もちろん今年のアカデミー作品賞候補だ。

これは実話の映画化。
主人公はアメリカ軍の精鋭シールズのスナイパー。
愛国心に燃え、志願して入隊。2003年にイラクに派遣される。
初めて人を殺した最初の狙撃は、
爆弾を持った少年とその母親だった…。
以降、公式記録では160人を射殺した
米軍史上最多のNo.1のスナイパーとなる。
危険な任務、命を落として行く仲間たち…。

“仕事”とはいえ、160人を殺した男は英雄なのか。
観る前にそれが引っ掛かった。アメリカでも、主人公を
“英雄”としてとらえる人も入れば、“人種差別的な殺し屋”
のようにとらえる人もいるという。しかし、
「仲間の命を救うためにたくさん相手を倒した英雄」なんて
映画をイーストウッドが撮る訳がない。
というか、そんな印象を受けるとしたら、
映画を観る力がないだけだ。
主人公は最初の任務の時に、爆弾を持った親子を射殺する。
そのことによって仲間の命は助かるが、
彼の心にあるスイッチが入った瞬間だ。
その後、助けられなかった仲間の命を悔やむ一方、
そうならないように敵を倒すことに全力を尽くす。
命を救うために命を奪う。それが戦争の本質なのだ。
そして主人公には、PTSDの典型的な症状が現れて来る。

イーストウッドは家庭と戦場を交互に描く。
戦場での異常な緊張感(銃器の発射音がカンカン響く音響効果が
迫力たっぷり)と、その後ののほほんとした家族が暮らす米国の暮らし。
この主人公でなくとも、これではおかしくなってしまうだろう。
前に観たイスラエル映画『戦場でワルツを』でも、
人々がふつうに暮らしている町まで半日で帰って
来られるところが戦場で(イスラエルからレバノンはすぐ)、
朝は銃を撃って夜はディスコで踊るギャップに、
主人公が現実感を失って行く様子が描かれていたが、本作もそう。
結局、戦争は勝ち負けに関係なく、
そこにいた者にその後も精神的なトラウマを残す
のだ。

戦場のシーンはアドレナリン出まくり、というか、
ああじやなきゃ前線に出られないだろう。
休暇で帰国しても、心が虚ろになってしまうのもわかる。
そして映画の完成前に、この主人公に実際に起きた事件が、
悲しいかな映画のテーマに沿うことになってしまった。
できれば映画館で見るべき映画。
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by mahaera | 2015-02-21 11:20 | 映画のはなし | Comments(0)
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