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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『JIMI 栄光への軌跡』煮え切らないジミ映画。許可が下りなかったのか。

JIMI 栄光への軌跡
監督:ジョン・リドリー
出演:アンドレ・ベンジャミン、ヘイリー・アトウェル、イモージェン・ブーツ
配給:東京テアトル
公開:4月ヒューマントラストシネマ渋谷


ロック好きなら知らぬものはいない、
伝説のロックギタリスト、ジミ・ヘンドリクスの伝記映画だ。
実は僕はジミヘン、そんなに聴いていない。
もちろん代表曲は知っているし、あの時代の人にしては
映像が残っているので、今までもライブ映像は
何度も見ているのだが、あまりひかれない。
確かにギターはかっこいいのだが、リズムセクションが
(バンド・オブ・ジプシーズ以外)魅力がなく、
なんか弾き語りにバックが付いているだけの感じがするのだ。

映画は27才の短い生涯を送ったジミヘンの、
デビュー前後のほぼ1年の話になっている。
1966年、NYのクラブでソウルシンガーのバックをしている
ジミをキース・リチャーズの恋人のリンダ・キーズが見いだす。
彼女の紹介で、アニマルズを辞めてマネージャーに
転向しようとしていたチャス・チャンドラーが、ジミと契約。
ジミはロンドンに飛び、そこでバンド、エクスピアリンスを結成。
デビュー。たちまち彼の演奏は話題になり、
ビートルズも見に来るほどに。
そして、いよいよモンタレーのフェスに出演が決まる…。

イギリス時代もレコードは売れていたのだが、
アメリカでブレイクするのは、このフェスに出て、
あの有名なギターに火をつけるパフォーマンスを行ってから。
なので映画では、主体性があまりない、
ちょっと自信なげにもとられるジミ像だ。
リンダ・キーズががんばって売り込んでくれたから
デビューできたという感じで、
本人には「オレはデビューするぜ!」
みたいなガッツはない。だいたいギターも持っていなくて、
リンダがキース・リチャーズのストラトを渡すぐらいだから。
ロンドンに行ってからもそれは同じで、
ジミが強力なリーダーシップを示すこともない
もともと、演奏シーンがそんなに多くないので、
ジミのことをあらかじめ知識で知っている人以外には、
この映画からジミのすごさはあまり伝わりにくいのが欠点だろう。

「あいつはすごい」と他人が言うセリフから、
「そうなんだな」と思えるぐらいだ。これは、もしかしたら裏で、
「本物のジミの演奏や曲を使用できない」という
縛りがあったのかもしれない。
だって「パープル・ヘイズ」
「ヘイ・ジョー(ジミの曲ではないが)」
「フォクシーレディ」もないしね。

で、映画は演奏シーンよりも
むしろ女性関係にフォーカスを当てている。
ジミをデビューに導いたが、やがて遠ざけられるリンダ。
グルービーでジミに依存するキャシー。
ジミに社会的な運動を結びつけようと導く女性…。
しかし、ジミは各地で盛り上がる公民権運動や
黒人パワーにも興味を示さない。映画の中でジミが本屋で
購入して読んでいる本が、アーサーCクラークの「都市と星」だ。
ある年代以上なら読んだ方も多いSF小説だろう。
60年代、ヒッピーたちの愛読書で、スピルバーグの
短編デビュー作「アンブリン」にも出て来る時代のアイコンだ。
すべてが満ち足り、人も死なず生まれない10億年後の世界が舞台で、
誰もその都市を出たがないが、主人公は旅立って行く。
ジミはこの映画では、旅立つ前のモラトリアムの世界にいる。
旅立たなければならないことも知っているが、
それにかかる煩わしさ(とくに人間関係)は苦手だ。
女性に「あんたはやろうとしていることが面倒だと、
放り出してしまう人でしょ!」
みたいになじられるが、その通り。
彼にはお膳立てしてくれる人が必要なのだ。
そういうものがあって、
彼は初めて「満ち足りた都市から宇宙に飛び立てる」。
ギターを持つとすごいが、その場は誰かが作ってくれないと
どうしようもない。なので、間に入る人は大変だろう。

監督は「それでも夜は明ける」の人、ジミ役はラップデュオOUTCASTの人。
音楽は懐かしワディ・ワクテル(とリーランド・スクラー、ケニー・アロノフ)。
しかし出来は何となく、低予算のテレビ映画みたいに。
「目指していたものができなかった感」と、
「見たかったものでないものを見せられた感」が。
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by mahaera | 2015-03-27 02:03 | 映画のはなし | Comments(0)
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