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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ザ・ヴァンパイア 〜残酷な牙を持つ少女〜』才気あふれる新人監督のデビュー作

ザ・ヴァンパイア 〜残酷な牙を持つ少女〜
A Girl Walks Home Alone at Night

2014年/アメリカ
監督:アナ・リリ・アミリプール
出演:シェイラ・ヴァンド、アラシュ・マランディ
配給:ギャガ映像事業部
公開:9月19日より新宿シネマカリテほか
http://vampire.gaga.ne.jp

●ストーリー
イランのどこかにある町、バッド・シティ。そこは犯罪と死と絶望にあふれた町。青年アラシュは、ヤク中の父親の借金の返済の代わりに、売人のサイードに愛車を盗られてしまう。一方、夜の町では黒いチャドルに身を包んだ少女が、町をうろつく男の首筋に牙を立てていた。盗んだ宝石と愛車の交換を申し出ようとサイードの家に向かったアラシュは、そこで無惨にも死体となっているサイードの姿を発見する。やがてハロウィーンパーティーの夜、アラシュと少女は偶然出会い、恋に落ちる。

●レヴュー
モノクロの画面にスタイリッシュな画面構成。陰鬱な音楽と、画面を左右に行き来する、極端に省略された登場人物たち。しかも会話はすべてペルシャ語だ。イラン系の両親を持つイギリス出身のアナ・リリ・アミリプールによる長編劇映画デビュー作は、「何か新しいスタイルの作品を見せてやろう」というデビュー作らしい野心に満ちている。舞台は架空の町“バッド・シティ”。解説では「イランの」とあるが、それがとくに明示されているわけではない。確かにイランにありそうな町並みだが、実際にイランで撮影された訳ではないし、どこかの地方都市のさらに外れの風景は、あえて特定のイメージを出さないようにしているためだろう。実際には存在しない町として、“シン・シティ”や“ゴッサム・シティ”を思い浮かべてくれればいい。

全体的なスタイルとしては、ジム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」、フランク・ミラーの「シン・シティ」、デビッド・リンチの「イレイザーヘッド」、そしてタランティーノ作品などの影響を受けていることはすぐわかるだろう。ヴァンパイアものとしては「僕のエリ、200歳の少女」の少女に近いのかもしれない。全編に流れるのは、無国籍風のロックやテクノ。少女をヴァンパイアだと知らずに恋に落ちた青年。少女も自分をヴァンパイアだと打ち明けることなく、青年にひかれていく。登場人物たちの服装や背後にある小物、時代を超えたアイコンが散りばめられた画面は魅力的だ(画面の奥まで見たくなる)

このようにスタイリッシュでムードたっぷりなのだが、ストーリーがなかなか転がっていかない。後半になってもドラマチックな展開がないのだ。つまり、この映画の魅力は前半の雰囲気作り(人物の背景説明含む)の部分で、後半、そこからどう展開していくかが弱いのが残念。設定と世界観だけで乗り切ろうとしているのだが、短編ならともかく、長編だと、ちとそれには無理がある。ということで、人によっては「退屈」してしまうかもしれない。「ただスタイリッシュな画面が続いていれば、話はどうでもいい」という人は問題ないだろうが。(★★★)

旅シネに寄稿したものを転載しました
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by mahaera | 2015-10-16 00:40 | 映画のはなし | Comments(0)
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