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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ひつじ村の兄弟』 アイスランドの大自然の中で、絆を取り戻して行く老兄弟

ひつじ村の兄弟
Rams
2014年

監督:グリームル・ハゥコーナルソン
出演:シグルヅル・シグルヨンソン、テオドル・ユーリウソン
配給:エスパース・サロウ
上映時間:93分
公開:12月19日より新宿武蔵野館ほか
公式ページ:http://ramram.espace-sarou.com


●ストーリー

アイスランドの辺境の村に住む老兄弟のグミーとキディーは、家も敷地も隣同士なのに、40年間、口もきかない絶縁状態だった。彼らの育てたヒツジは国内随一の優良種とされており、独身のふたりは生活のすべてをヒツジに賭けていた。その年、村のヒツジコンテストでは兄のキディーが1等、弟のグミーが2等だったが、グミーはキディーのヒツジに異変が起きていることに気づく。やがてそのヒツジは治る見込みのない伝染病に犯されていたことがわかり、その地域のヒツジすべてが殺処分されることになる。断絶していた兄弟が、ヒツジを救いたい一心で再び結びつく。

●レヴュー

すみません! かわいらしいタイトルやビジュアルから、モフモフしたヒツジとホッコリしたおじいさんたちの、のほほんとした話だと見くびってました。キャッチコピーの「まじめでおかしな大騒動」はまちがっていなけれど、そんなんじゃなくて、もうとても厳しい、そして苦しい話だった。

私たちはときどき、鳥インフルエンザや狂牛病などで多くの家畜が殺処分されるニュースを目にする。いずれ食べられる家畜だとしても、飼い主は手塩にかけて育てているはずだ。きっと心が引き裂かれるような気持ちだろう。そして、伝染病を防ぐため、疑わしきものはすべて殺すという、本当に人間勝手な仕打ち。もし伝染病にかかった人間が見つかって、その地域の人間が全部殺されたらと思うと、ゾッとする。できれば、隔離してもいいから、寿命までは生きさせてあげたいと思う。

本作の主人公となる老兄弟には、ほかには家族がいないのに、口もきかない険悪な仲だ。直接会話しないので、手紙をいちいち犬に運ばせる所がおかしいもっとも最後に口をきいたのは40年前で、本人たちも何が原因かうろ覚えのようだ。そんな孤独に生きているふたりにはヒツジがすべて。もちろん優良な種を代々育てているという自負もある。それが全頭処分だなんて納得できないだろう。そこで、ふたりが取った行動は異なるが、それぞれヒツジを守ろうとするものだった。たとえそれは犯罪でも。

動物好きには、このヒツジを処分しなければならないシーンですでに辛いだろう。そして苦しむ老人の姿も辛い。だから、彼らの取る行動がまちがっていて、悲劇を招くしかないとわかっていても、何とかこの老人たちに救いを与えて欲しくなるのだ。後はもう、画面を見ているうちにぼーっとして終ってしまった。まったく予期せぬ、終り方だった。どうなるんだ。
たぶん、この映画を観に来た人は、甘いデザートを食べに来たら、和風醤油味のせんべいを出されたように驚くだろう。現代の話だが、神話的な雰囲気さえ漂うエンディングだった。ということで、かわいらしい映画ではありません! ヒツジはかわいいけれど。
★★★☆

●関連情報

・第68回カンヌ国際映画祭 ある視点部門グランプリ
・日本ではR15指定公開だが、残酷なシーンやエロいシーンはない。ではどうして?というと、このおじいさんの全裸シーンがダメなようだ。お風呂入っていてあわてて出てきたりとか…。って誰が欲情するんだよっ!
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by mahaera | 2015-12-19 17:22 | 映画のはなし | Comments(0)
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