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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー 『シチズンフォー スノーデンの暴露』 政府はあなたを監視している

 『シチズンフォー スノーデンの暴露』 

 昨年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した『シチズンフォー スノーデンの暴露』を観る。
もう忘れている人もいるが、2013年に元CIAとNSA(国家安全保障局)に所属していたエドワード・スノーデンが、内部情報をリークした事件だ。それによれば、アメリカ国家がネットや電話などを通じて、国民の情報を収集しているという。映画は、ドキュメンタリー作家であり、本映画の監督の元にスノーデンから連絡があり、香港で落ち合ってその事実を発表する様子をカメラに収めたもの。つまり、事件の発端から、すでにカメラは回っていたのだ。

 映画はこれといったギミックもなく、実に淡々としたもので、マイケル・ムーア的エンタメもない。正直、ちょっと退屈するところもある。それでも本作が受賞したのは、当事者であるアメリカ国民に与えた衝撃が、いかに大きかったかを表している。アメリカ人はなんだかんだと言って、法や正規な手続きを重んじる。個人の電話の盗聴だって、ギャング映画を見ればFBIが裁判所の許可を得るのに手間取っているシーンがよくある。いくら反米的な言動がある人でも、勝手に盗聴できるわけではなく、正しくは法的手続きが必要で、それがなければ証拠にはならない。ところが、911以降の愛国法の成立の流れで、裁判所の許可なしで勝手に国民のデータを収集するようになったというのだ。もちろん国民には知らされていない。国家は電話会社はもちろん、Facebookや検索エンジン、クレジットカード会社、スイカ的な交通パスに至るまで、民間会社から情報の提供を受けているので、ある特定の人物の行動をほぼ把握できる。こうして個人の自由は、制限されてしまう。もし政府から注意でも受けたら、その人はきっと萎縮してしまうだろうから。

 多分、日本でアンケートをとったら、個人の自由より治安の安定を選ぶ人が多いだろう。日本は「自分で何かする」より、「政府に何とかしてくれ」って感じで100年来ちゃったしね。で、今、世界史を学んでいるけれど、アメリカは建国時から今に至るまで、「強力な政府」と「個人の自由」の両派閥の間で揺れ動いている。「強力な政府」は個人の自発的な自由、権利を制限する怖れ。スノーデンはリバタリアンだから、当初、オバマ政権に期待したが、結局は国民に隠れて監視社会を進めていく方針に失望し、リークに踏み切った。

 同じ頃、公開されたマーベル映画「キャプテン・アメリカ/ウインターソルジャー」では、テロ対策に国家監視システムが導入されるが、それが国に批判的な人間数百万人を抹殺しようとする話だ。これは国が情報を集めていた国民の数が120万人と言う数字から来たもの。120万人もテロリストがいるわけないだろ、じゃあ国は何をしたいんだと言うことである。スノーデン同様、愛国者だがリバタリアンのキャプテンは、「何が正義か、国家が決めるのは間違っている」とシステムを破壊する。

 人間は自由に発言し、意見が違う他人と話し合うことができる。
もし、日本が中国のように、自分の書いているメールの中身が全て検閲されていたら、誰も本当のことを言わなくなるだろう。それは民主主義とはほど遠いものだ。
インターネットは当初、自由な意見が言える場だったが、
そのうち、国民管理の端末になるのかもしれない。
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by mahaera | 2016-04-10 00:42 | 映画のはなし | Comments(0)
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