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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー 『AMY エイミー』 音楽は素晴らしいが、ダメになっていく友達を見ているようで辛い

AMY エイミー

2015年/イギリス、アメリカ

監督:アシフ・カパディア
出演:エイミー・ワインハウス、ミチェル・ワインハウス、マークロンソン、トニー・ベネット
配給:KADOKAWA
公開:7月16日より角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷で公開中


もう公開が始まっている、ドキュメンタリー映画『AMY エイミー』。
今年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した力作で、
それまで歌手であるエイミー・ワインハウスのことをほとんど知らなかった僕だが、かなり大きなインパクトがあった。
2003年、20歳でデビューしたエイミーは、そのジャージーな歌声でたちまち注目される。
23歳で出したセカンドアルバム『Back To Black』は大ヒット。
25歳でグラミー賞受賞という歌手としての頂点を極める。
しかしその裏側では、アルコール依存症、結婚相手からハードドラッグを覚え、プライベートは破綻していった。
そして2011年7月、エイミーは27歳の若さで亡くなる

このドキュメンタリーは、14歳の誕生日を祝うエイミーからその死までの歩みを、ほぼ時系列に沿って、当時の映像とインタビューなどによって構成している。
まず一番驚いたのは、デビュー前から多くのプライベード動画や音声が残っているということ。
僕が親しんできたミュージシャンたちとは時代が違う。
2000年代は、もうデジタルの時代だったのだ。
ライブ映像はともかく、友人たちと遊んでいるプライベート映像、留守電に残した音声がこんな形で、映画に使われるとは。
彼女の歌には確かに魅力がある
僕はこの映画を見たすぐ後CDを購入し、いまも繰り返し聴いている。(「You know I’m no good」「Love is a Losing Game」「Valerie」はとくにいい)
そして歌詞カードを読むと、人生にリンクしたそのあまりの内容に痛々しさを感じる
きっと彼女の心境に自分を重ね合わせることで、
多くの人たちが「共感」して、癒されたのだろう。

摂食障害、アルコール依存、セックス依存、
ドラッグ依存、ファザコン、、
もし自分の身近に彼女がいたら、
関わり合いを持ちたいとは思わないだろう。
ダメな男に惹かれ崇拝し、自分のことを思って注意してくれるような人物を遠ざける、
人に迷惑をかけ、それをまた繰り返す。
ドキュメンタリーにも出てくる、彼女の夫であり、ヒモであり、ドラッグを教え込んだ、
誰が見ても本当に最低の男に惚れ込んでいる、哀れな女
誰かを求めていながら、それを拒否し、いつでもダメなカードを選んでしまう。

最終的には音楽も彼女の救いにはならなかった。

いくら優れた才能があっても、中身は所詮20代前半の子供なのだ。
女子大生ぐらいの年齢の子が、富と名声を手にし、
いきなりいろいろな人から言い寄られたら、
うまく対処して生きていくことができるのか。
大好きだったが自分を捨てていった父親さえ戻ってきて、
ちやほやする。
娘を食い物にする最低な父親だが、それでも喜び、信頼するエイミーが悲しい。

もうこの子は、小さな頃から周辺にいい大人がいなかったんじゃないか。
そうした孤独や絶望感が、彼女の才能を支えていたとしたら、
不幸なことだ。
あとは、もしもっと長生きできたら、そうしたものから解放され、
人気は落ちても自由に音楽を楽しめたのではないかと思う。
最後の録音となったトニー・ベネットとのデュエットの映像を見ていると、いつかはベネットのような存在になれたかもしれないと、思うのだ。

映画のハイライトのひとつである、グラミー賞を受賞した時のあのエイミーの表情。
無防備な喜びの表情は、結末を知っているがために惜しくも悲しい。
映画を締めくくる彼女の死は残念というより、
「仕方がなかった」という感じに思える。
死ぬつもりはなかったのだろうが、彼女はこれで楽になったのではないかと感じてしまうのだ。

エイミーの曲を1曲も知らなくても、この映画はおすすめできる
僕のように見終わった時は、すっかりエイミーの歌声のファンになっているはずだから。

いまも毎日、僕の頭の中ではエイミーの曲が流れている。
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by mahaera | 2016-07-28 16:34 | 映画のはなし | Comments(0)
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