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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー 『ハドソン川の奇跡』 ただの美談にせず、ひとりの男の物語として成功

ハドソン川の奇跡
Sully
トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督


前情報を入れていなかったので、
なんでこの事件をイーストウッドが撮るのか不思議だった。
だって当時ニュースでよく流れた有名な事件だし、
「奇跡の生還物語」として再現映像もよくやっている。
誰もが全員助かった事件と記憶しているので、
ゴールが見えている話だ(それも感動を呼ぶ結果が見えている)。
よほどうまくやらない限り、安っぽい感動ドラマになりかねない。
「わざわざ感動しに行くの、いやだなー」と思って
ノーマークだったが、評判がいい。
で、観に行ったのだが、これがいい意味で期待を裏切ってくれた作品だった。

エンジントラブルからハドソン川に着水したUSエアウェイズ機。
映画はもうその事故が終わったあと、サリー機長が飛行機がビルに激突する悪夢をみるところから始まる。
彼は生還したが、「もしも」という墜落の夢を見てしまうのだ。
マスコミは「彼は英雄」と持ち上げる。
しかし調査委員会からは、
「管制塔の指示に従っていれば無事に他の空港に着陸できたはず」
という意見が出される。
サリー機長の決断は、大惨事を招く
大きな判断ミスだったかもしれないと。
離陸から着水までわずか4分半ほどしかなかった。
エンジントラブル発生からは3分ほどしかない。
考える時間はたった30、40秒。

そんなそう、これは
「俺の判断にミスはなかったか。
俺は本当に正しい選択をしたのか」

といういつものイーストウッド映画だった。
人々は彼を英雄に祭り上げるが、その一方で非難をする人もいる。
悩む機長だが、その一方で何度考えても
「あれはあの状況では最善の選択だった」と確信する。

この映画で感銘を受けたのは、操縦士、客室乗務員、
そして救助にかけつけた人々のプロフェッショナルさだ。
それをいやらしく感動的に盛り上げるのではなく、
「仕事ですから」というスタンスなのがいい。
プロフェッショナルの格好良さを見せてくれるのだ。

そして、これは911の後の事件だということ。
ニューヨークでビルにまた旅客機が激突したら、、。
たぶん、ニューヨーク市民、いやアメリカの人々にとって、
悪夢が再びということになったろう。
だからこの全員が助かったハドソン川の着水事故は、
ただの事故以上のものがあったのだ。

ということで、「君の名は。」が現実世界ではできなかったことを
映画の世界で果たしてカタルシスを味わう「ポスト311映画」(「シン・ゴジラ」も)だったが、
この事故は「ポスト911」を
現実世界で果たしたものだったといえよう。
上映時間90分台と大作にしては短い上映時間だが、満足いく内容。
(★★★☆)
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by mahaera | 2016-11-02 11:58 | 映画のはなし | Comments(0)
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