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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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子供に教えている世界史・戦後のアジア3   インドネシア(1942〜1949年)

中から戦後にかけてのアジア。
今回は蘭領インドシナ。つまり現在のインドネシア。
ここは、自分のよく行くフィールドだが、各地の博物館に独立を扱った展示が多い。
また、独立戦争を扱った映画もよく作られている。

太平洋戦争が始まってまもなくの1942年2月に、日本が侵攻。
目的は石油やゴムなどの、戦争に必須の天然資源だ。
日本はインドネシアを、早急に、しかもお金をかけずに統治するため、オランダ統治下で投獄・流刑されていたスカルノやハッタといった民族主義者たちを解放し、味方につけた。
軍政下ではオランダ語教育を廃止し、
日本語とインドネシア語教育を始めている。
これがもとで、独立後も「インドネシア語」が国語になる。
また、駐屯する日本軍も多くは置けなかったので(8000人程度しかいなかった)、現地の人々を郷土防衛義勇軍として軍事教練を行った。

ベトナムのホーチミンなどのような強力な反政府組織を持たなかったインドネシアでは、こうして日本に協力する形で、スカルノたちは力をつけていく。
やがて、日本の敗戦が濃厚になっていくと、日本は仕方なくインドネシアを独立させる方針に転換していく。
しかし、独立宣言を出す前に日本は降伏してしまった(おいおい)。
つまり、無条件降伏だから、そのあとに日本がインドネシアの独立を認めることはできない。
それにオランダは独立を認める気もなく、落ち着いたらまた植民地支配を始める気は満々だった。

そこで、1945年8月17日、スカルノらは独立宣言を行い、
スカルノが大統領に選出された。
一方、現地の日本軍は連合軍が上陸するまで、
インドネシアの治安を維持するようにとの通達を受ける。
日本軍が連合軍に武装解除されてしまっては、
共和国側に武器がなくなってしまう。
そこで日本の武器庫が襲われる事件も起き、
スマランでは日本も敵だったオーストラリア軍とともに、
今まで自分たちが育てていたインドネシア人に銃を向けた(スマラン事件)。
10月、インドにいたイギリス軍がスラバヤに上陸するが、
ここでインドネシア共和国軍との激しい戦闘が始まる(スラバヤの戦い)。

これには現地の日本人兵士たちも困った。
日本軍人である以上、降伏したので連合軍の命に従わねばならない。
そこで日本を捨て、軍から逃亡したり、武器を引き渡したり、共和国軍に加わった兵士も2000人余りいた。そのうち約半数が戦死している。

アホウヨはよく
「日本人はインドネシアの独立に協力した」
と美談にするが、現実は違う。
彼らは日本人であることをやめることを選択した人々なのだ。
独立に協力した元日本人兵士は、もしかして鎮圧側の日本人兵士に銃を向けたかもしれない。
彼らは、軍を勝手に離脱した「現地逃亡兵」なので、
日本に帰ることもできない。
軍人恩給ももらえない。
そんな“苦い”存在を、美談にして、日本の美徳に取り入れ、
無知なアホが、自分の手柄のように書いたネット記事には、
イライラさせられる。

さて、イギリスはインドネシア独立の争いに巻き込まれても何のいいこともないので、
1946年にオランダと交替してインドネシアを去る。
オランダ軍は、共和国を潰そうと全土で攻撃を加え、
独立戦争は激しさを増した。
戦争は5年続き、オランダは各地で軍事的勝利を収めたが、
度重なる国連(発足したばかり)の停戦にも応じず、
住民の虐殺を行うなど、国際世論の激しい非難を浴びた。
アメリカもオランダへの経済援助の停止を通告し、
圧力を加えた。

同時期のベトナムと違ってインドネシアは共産国家ではなく、議会制民主主義国家を目指していたので、
西側国家の同情も得やすかったのだ。
こうして、1949年12月27日、オランダのハーグで開かれた会議で、インドネシア連邦共和国の独立が達成される。
ただしこの段階では、まだオランダの影響力が
決議に盛り込まれていた。
独立時には、ジャワの半分やスラウェシ島、カリマンタン島など、インドネシア共和国以外にも10以上のオランダの傀儡国家があったが、まもなくこれらの国のほとんどはオランダから離れ、インドネシア共和国に合流していく。
1950年8月には、すべての国がまとまり、
単独のインドネシア共和国に。
1954年には、オランダとの連合国家も破棄される。

議会制民主制国家としての道を歩みだしたインドネシアだが、国内はバラバラだった。
外交的には手腕を発揮していたスカルノ大統領も、
国内に自分の支持基盤を持たないことから、
国軍とそれに対立している共産党との微妙なバランスの上に
成り立っていた。
それがのちに、大きな政変を生むことになる。

続く。
by mahaera | 2016-11-13 09:58 | 世界史 | Comments(0)
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