ブログトップ

旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

最新映画レビュー 『ブルーに生まれついて』 おしゃれな雰囲気には浸れるが、やや食い足りないかな

ブルーに生まれついて
Born to be Blue
2015年/アメリカ

監督 ロバード・バドロー
出演 イーサン・ホーク
公開 11月26日より渋谷Bunkamuraル・シネマ、角川シネマ新宿ほか


トランペット奏者にしてシンガーのチェット・ベイカー。
代表曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、
多くの人に聴かれてきた名演だ。
中性的でボソボソと歌う彼の歌唱は、
多くのフォロワーを生んだと思う。
1950年代には短い間だが、マイルスをしのぐ人気もあった。
しかしドラッグ依存のため、破滅的な人生を送っていく。

本作はそのチェット・ベイカーをイーサン・ホークが演じる。
ジャズファンには思い入れのある人物なので、
なかなか難しいだろう。
僕はそれほどベイカーには詳しくはないが、
なるほど、たぶんこんな感じだったんだろうなあと思うほどの
リアリティをうまく出している。
ペッターの友人によれば、指と音が合っていないところがあるようだが、普通の人はおそらくそこは気づかない。

本作はすでにドラッグに溺れて、売人にお金を払えずに
チェットが前歯を折られるところから始まる。
伝記映画の撮影シーン、そこで知り合った恋人との生活と
ドラッグ依存からの立ち直り、現役に復帰するための努力
といった“現在”に、人気絶頂の頃に見に来たマイルスに
冷淡にされた“過去”の回想シーンが織り込まれていく。

チェットは、音楽に関しては有り余る才能がありながら、
人間関係をうまく築けないし、ドラッグで人の信頼を裏切り、
女にもだらしないという、今でいう“ゲス”な男。
ただし、彼が唯一しがみついて、裏切らないものは音楽だ。
最高の音楽を演じるためには、
彼にはドラッグが欠かせないものになっている。
依存癖のない僕にはわからないが、
おそらく絶対的な自信が生まれ、
そこからキレのいいフレーズが出てくるのだろう。
しかしホークが演じるからかどうかわからないが、
どんなにダメな男でも、演奏中はカッコよく見える。
それはチェットが音楽に関して全身全霊で打ち込んでいるのがわかるからだ。
チェットが音楽に身を捧げているのは、疑いのないこと。
だから恋人やかつての仲間がカムバックに協力するのだ。

映画のムードはおしゃれな雰囲気で、
その雰囲気に浸りながら見るならいい感じだろう。
ただ、全体がさらっとしすぎて、
「食い足りないなー」というのが正直なところ。
悪い映画じゃないとは思うけれど、
映画としての面白みが薄いというか、
おしゃれにしすぎて、チェットの“エグい”ところも
もっとあったんじゃないのーという感じがする。
まあ、そんなブルーに生まれついた男(ジャズマン)に惚れちゃいけないよ、という映画でした(笑)。
★★★
[PR]
by mahaera | 2016-12-05 11:53 | 映画のはなし | Comments(0)
<< 2016年11月2日 上原ひろ... 子供に教えている世界史 〜「雪... >>