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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『マイルス・デイヴィス 空白の5年間』 全然似ていないチードルの成り切りぶり!

マイルス・デイヴィス 空白の5年間
Miles Ahead
2015年/アメリカ

監督:ドン・チードル
出演:ドン・チードル、ユアン・マクレガー、エマヤツィ・コーリナルディ
配給:ソニーピクチャーズ エンタテインメント
公開:12月23日よりTOHOシネマズシャンテにて公開中

ジャズばかりでなく、音楽のパイオニアとして
20世紀を駆け抜けた巨人、マイルス・デイヴィス。
常に第一線に立っていた彼だが、そのマイルスが唯一、
一切の音楽活動を休止していた5年間があった。
その間、彼は何をしていたのか。
そしてそこからどうやってカムバックしたのか。
本作は、そのカムバックにいたる空白の時期を、
フィクションを交えて映画化したものだ。

1975年、マイルス(ドン・チードル)は一切の音楽活動をやめてニューヨークの自宅に引きこもる。
過去の手術の影響による股関節の痛み、ドラッグ中毒、
そして何よりも音楽への情熱が失せていた。
一向に新作を発表しないマイルスだが、
新作用のレコーディングは行っているようだった。
そこへ雑誌ローリングストーンの記者だと名乗る
デイブ(ユアン・マクレガー)が訪ねてくる。
半ば強引にマイルスの家に上がり込んだデイブだが、
インタビューではなく、マイルスの小間使いのように使われる。
一方、悪徳プロデューサーのもとで働く、かつての自分のような
有望なトランペッターのジュニア(エマヤツィ・コーリナルディ)がいた。
マイルスの家のパーティで、リハーサルテープを見つけた
悪徳プロデューサーはそれを盗み出す。
マイルスはそれを取り戻すために、
デイブとジュニアの家に向かうのだが、、、。

『ホテル・ルワンダ』、あるいは『アイアンマン』シリーズのウォーマシン役で知られる俳優のドン・チードルが以前から温めていた企画で、チードルは製作、脚本、監督、主演をつとめるほどの熱の入れようだ。
で、これがちょっと変わった映画で、
まず、伝記映画のようで伝記映画ではない。
マイルスが隠遁生活を送っていたのは事実だが、
実際にあったのはそのくらいで、マイルスに絡む記者や、
若手トランペッター、悪徳プロデューサーは架空の人物だし、
マスターテープをめぐる争奪戦やカーチェイスも
まったくのフィクション。
時おり入るマイルスの回想シーンには、有名なエピソードもあるが、ほとんどは事実とは違うかもしれない。
じゃあ、マイルスとは関係ないじゃないかと思うかもしれないが、そうでもない。
これは、ドン・チードルが考えた「マイルスはこうだ」
「マイルス大陸ならこれはこうなる」
というエッセンスをちりばめた作品だからだ。

何年か前にディランの“伝記映画”と呼ばれた
『アイム・ノット・ゼア』という映画があったが、
あれはディランのエピードを散りばめながらも、
6人の俳優がそれぞれディランを演じるという方法で撮られ、
見事にディランの“ある面”を描いていた。
本作も事実をありのままに描くのではなく、
チードルの思う“マイルスなら”というエッセンス、
あるいは妄想(笑)で描かれている。

まず、チードルの顔がまったくマイルスに似ていない(笑)
マイルスの過去に登場するバンドメンバーが、
実際のメンバーにまったく似ていないし、
似せようと努力もしていない(笑)
しかし、「似ていないが、俺はマイルスだ!」
という意気込みは伝わってくるのだ。

正直、監督デビューとなるチードル演出は、
あまりうまくない(青い)。
カーチェイスとか、空回りしているシーンもある。
しかし、チードルのなりきりマイルスは嫌じゃない。
もうファン映画のようでもあるし、またチードルに“チードルの考えるマイルス”が憑依した映画でもある。
そこにほほえましいほどの「マイルス愛」が感じられ、
憎めない一品に仕上がっているのだ。

エンドクレジットに流れるコンサートシーンは、本来カムバックコンサートを再現するのが映画としては正しい。
しかしそうではなく、「いま、マイルスが演奏したら」という形で新旧の素晴らしいミュージシャンが揃い、そこに“なりきりマイルス”のチードルが加わっているのが、この映画のスタイルなのだ。
曲もマイルスのではなく、まったくの新曲だしね。
しかし「マイルスなら」らしさはしっかり入っている。

ちなみに演奏メンバーは、ドラムはアントニオ・サンチェス(映画『バードマン』のドラマー)、ベースはエスペランサ・スポルディング、ギターはゲイリー・クラーク・Jr、ピアノにロバート・グラスパーといった、現在の音楽シーンの第一線のメンバーに、元マイルスのグループのハンコックとショーターが加わるという豪華なもの。

というわけで、出来は確かに微妙だが、
マイルスのファンの僕でも、憎めない作品であることは確かだ。
https://www.youtube.com/watch?v=W_RLLvh6aSQ
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by mahaera | 2017-01-09 10:59 | 映画のはなし | Comments(0)
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