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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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最新映画レビュー『ストーンウォール』 宇宙人は撃退できるが、人間ドラマは下手だったエメリッヒ

ストーンウォール
Stonewall
2015年/アメリカ

監督:ローランド・エメリッヒ
出演:ジェレミー・アーヴァイン、ジョナサン・リース・マイヤーズ、ジョニー・ボーシャン、ロン・パールマン
配給:アットエンタテインメント
公開:12月24日より新宿シネマカリテにて上映中


この映画は、1969年の夏にニューヨークのゲイタウン、
クリストファーストリートで起きた、同性愛者たちが初めて警官に立ち向かった「ストーンウォール事件」を描いたものだ。
映画を見て初めて知ったが、1960年代のアメリカでは
まだ同性愛者に対する差別が法制化されていた。

映画は、田舎町からニューヨークのクリストファーストリートに、高校を中退した青年ダニーがやってくるところから始まる。
ダニーは自分がゲイであることがばれ、高校にも自分の家にも居づらくなって逃げるようにしてここにやってきたのだ。
最初に彼を仲間に向かい入れたのは、
街娼として生きている少年や青年たちの集団のリーダー、レイだ。
ほかにも、ゲイの社会的地位の向上を訴えるインテリグループ、
ゲイを顧客に稼ぐバーのボス、
そしてそこから小銭を巻き上げる警官たちがいた。
しかし、1969年6月28日、ゲイたちが集まるバー
「ストーンウォール・イン」に警察の捜査が入ったとき、
今まで差別や迫害を受けていたものたちの怒りが爆発する。

ウッドストック・フェスの2ヶ月前といえば、
音楽ファンなら時代の空気がわかるだろうか。
黒人の差別撤廃を求める公民権運動、ヴェトナム戦争反対運動、ウーマンリブなど、人々は政府や社会に向かって、
大きな声でNOと言えるようになっていた。
しかしLGBTの権利を求める運動は、
それらに比べてさほど高まっていなかったという。
時代がまだ、そこまで追いついていなかったのだろう。

そうした歴史や社会、文化的な部分を知るにはこの映画は
興味深いのだが、映画の出来はとなると、
残念ながら繊細さに欠ける。
テレビドラマのように出来事が続き、
登場人物の心のうちの掘り下げが足りないのだ。
監督・製作は、かなり意外なのだが、『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』『2012』など、ひたすら人類が危機に陥る大作ばかり撮っているローランド・エメリッヒ。
彼自身はゲイであるとカミングアウトしている。

エメリッヒらしさがよく出たのは、
CGなどを使いながら再現した1969年のニューヨーク、
これは見せ方としてかなりいい線いっている。
ただし、人間ドラマとなると、どうしても映画の駒として登場人物が話を進めているだけにしかみえない。
もちろんいいシーンもある。主人公を演じる
ジェレミー・アーヴァイン(『戦火の馬』の少年だ)が
ストーンウォール・インで、ジョナサン・リース・マイヤーズと
出会う場面は、何かが始まりそうなミステリアスな雰囲気(プロコル・ハルムの「青い影」がジュークボックスから流れ)で
期待させる。
しかし、クライマックスで盛り上がるはずの“反乱”も、
それまでの人間ドラマの助走が足りなかったせいで、
高く飛び損ねてしまった。
ということで、志はよかったのだろうが、
残念な出来となってしまった作品。
★★
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by mahaera | 2017-01-12 09:58 | 映画のはなし | Comments(0)
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