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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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シネマ名画館『家族の肖像 デジタル完全修復版』 この歳で見てよかった!

家族の肖像 デジタル完全修復版
Gruppo di famiglia in un interno
1974年/イタリア、フランス

監督:ルキーノ・ヴィスコンティ
出演:バート・ランカスター、ヘルムート・バーガー、シルヴァーナ・マンガーノ、ドミニク・サンダ、クラウディア・カルディナーレ
配給:ザジフィルムズ
公開:2017年2月11日より3月24日まで岩波ホールにて


もう間もなく上映が終わってしまうので、機会がある人は見に行ってみてと思うのが、この名作のリバイバル上映だ。
「名作」と書いてしまったが、
実は僕はオリジナル版の公開時には見ていない。
この映画が日本公開された1978年は僕はまだ高校生。
本作はその年のキネマ旬報ペストテンで堂々1位になったものの、
老人が主人公とした家族の愛憎劇には興味がわかず、
「見なきゃな」と思いつつスルーしてしまった。
また、そのころに名画座で観た
『ベニスに死す』がまったく面白くなかった(当時)こともある。
そのころ僕が熱狂したのは、同年のベストテンに入っている
『スターウォーズ』『未知との遭遇』『アニー・ホール』
といった作品だ。
人生これからの高校生だから、当然と言えば当然だろう。
で、いまはあの時見ていなくてよかったと思っている。
見ても理解できなかっただろうから。

この映画はほとんど室内劇だ。
ローマの高級住宅街の建物に暮らしている
老教授(バート・ランカスター)が主人公。
彼は18世紀に流行した家族の肖像画のコレクションに囲まれ、
ひとり静かに暮らしている。
そこにある日、ビアンカと名乗る伯爵夫人(シルヴァーナ・マンガーノ)が現れ、強引に上階の空き部屋を借りてしまう。
しかし実際にそこに住み始めたのは、ビアンカの愛人である
コンラッド(ヘルムート・バーガー)だった。
そこにビアンカの娘のリエッタ、リエッタの婚約者のステファノといった若者たちが出入りし、教授の平穏は乱されていく。

この老教授(名前は最後まで明かされない)は裕福な知識人階級。
お金持ちだが俗っぽさが鼻持ちならない伯爵夫人ビアンカの一家とはまさに水と油。
何も接点がないといっていい。
しかし彼は、その伯爵夫人の愛人となっているドイツ人のコンラッドに自分と似たものを感じる。
ふとしたことから彼の知識や教養を知り、親近感を得る。
実はコンラッドは学生時代に左翼の過激派に加わり、
挫折していまは仲間に追われていたのだ。
ビアンカの夫はファシズムを支持する右翼の過激派と通じている。

彼らが生活に乱入してきたことは、
教授にとっては迷惑以外の何ものでもない。
見ている観客も、教授と同じ様に苛立つのだが、
後半に向かっていくと、彼らがいなくなったらいなくなったで教授が寂しさを感じるのも理解していく。
今まで、自分の「家族」というものを作らずに
独身を通してきた教授。
その代わりに何も言わず、迷惑もかけない
絵画の中の二次元家族が家族だと思ってきた。
ところが実際のリアル家族は、
ケンカはするし迷惑はかける
し思い通りにはいかない。
とにかく「煩わしい」ことこのうえない。
しかしその年になって教授は悟るのだ。
それが「家族」なのだと。
そしてそれを受け入れる覚悟をするのだが、時はすでに遅かった。

いま、自分の人生の最後が視野に入る年齢になって、
この映画の主人公である老教授の気持ちがよくわかる

自分の人生、家族も持ったが、
熱中したのは音楽、映画、旅、本、美術など、この老教授と変わらず、その分、周囲との煩わしさから逃れていた。
親戚付き合いも含め、肉親とのつきあいが煩わしく感じることがある。とくに若い頃はそうだ。
ただ、歳とともに諦めも付いてきて、
それを受け入れられる様になってきたが。
ということで、この映画をまさに“リアル自分”のように見た
やっと、理解できる年齢になったが、
そこには多くの哀しさも感じる。
ということで、人生の後半に入った人におすすめ。
「映画は娯楽」という人に向かないかも。
★★★★

※イングマール・ベルイマンの『野いちご』も合わせて見るといい。
こちらも老教授が人生を顧みるという話。
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by mahaera | 2017-03-15 10:19 | 映画のはなし | Comments(0)
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