ライオンは今夜死ぬ
監督 諏訪敦彦(『不完全なふたり』)
出演 ジャン=ピエール・レオー
1月20日よりYEBISU GARDEN CINEMAにて公開中 トーケンズの1961年のヒット曲『ライオンは寝ている』を皆さんも聴いたことがあるだろう。
しかしこの曲のタイトルが、フランスでは
『ライオンは今夜死ぬ(死んでいる)』に
なっていることは、僕はこの映画で初めて知った。
歌詞をチェックしてみると、
「今夜ライオンは寝て(死んで)いるので、
村は安全だから怖がらなくていい」という、
童謡のようなものだった。
もともとこの曲は、1940年代に南アフリカでヒットした曲で、
原題の
「Mbube」とは、ズールー語で「ライオン」の意味らしい。
それが1960年ごろのアメリカのフォークブーム
(自作曲ではなく伝承歌が中心)で紹介され、
コーラスグループのトーケンズが歌い、
全米No.1ヒットになったのだ。
映画はの主人公を演じるのは、
ヌーベルバーグの申し子である
ジャン=ピエール・レオー。
南仏で撮影中の映画で「死」をうまく演じることができない、
老俳優ジャンの役だ。
撮影が数日中断している間に、ジャンは
かつて愛していた女性が住んで
いた屋敷を訪れ、
そこで若いままの彼女の幻に会う。
また、その屋敷に無断で映画作りをしに来た子供達とも出会い、
彼らの映画に出るうちに、生きる感情を
取り戻していくというストーリーだ。
ドラマチックな展開はないが、何気ないしみじみとした時間が
愛おしいことを、子供たちがあらためて教えてくれる。
さて、曲の「ライオンは今夜死ぬ」は、
映画の中で主人公のジャンが子供達にこの歌を歌う。
ジャンが若い頃にヒットしたポップソングというだけでなく、
「恐れるもの(=死)は今はいないから、安心おし」と
子供達に歌いかけ、そしてそれは「死を恐れず、生を楽しもう」という、観客への語りかけでもある。
★★★
ソロモン・リンダのオリジナルはこんなアフリカの民謡のような曲です。
1952年にピート・シガーがいたThe Weaversのカバー「Wimoweh」として発表。これがアメリカでのこの曲の初紹介かな。
映画では、もちろんフランスでNo.1ヒットになったアンリ・サルヴァドールのバージョンです。