ブログトップ

旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2017年 02月 09日 ( 1 )

最新映画レビュー『スノーデン』 人々は安全のためなら、簡単に自由を投げ出す

スノーデン

2016年/アメリカ、ドイツ、フランス

監督:オリバー・ストーン
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、シャイリーン・ウッドリー
配給:ショウゲート
公開:2017年1月28日より全国で公開中


数日前、映画館のレイトショーで本作を見ていて、
現実の世界とのあまりのシンクロさに怖いものさえ感じた。
ニュースでは連日トランプが出した大統領令による、7か国の国籍を持っている人の入国拒否問題をとりあげていた。
そして劇場のスクリーンでは、
トランプが「スノーデンは死刑だ!」と叫んでいた。

オリバー・ストーンの映画というと色眼鏡で見ている人も多いが、
インタビューでの発言に比べると近年の彼の映画は、
それほど極端によっているわけではない。
政治思想を訴えるよりも、むしろ
「どうしようもない大きな力に翻弄されていく人間」
を描いている。
映画「スノーデン」は、
「国のために尽くして自分の存在意義を人に認めて欲しい」と至極まっとうなことを思っていた青年が、
国家のやり方に疑問を持ち、それを世間に公表する話だ。

「スノーデン事件」はご存知だと思うし、
前にもドキュメンタリーの「シチズンフォー スノーデンの真実」を紹介したことがあるので、
それを読んでいただいたことがあるかもしれない。
これは2013年6月にアメリカのNSA(国家安全情報局)の職員だったエドワード・スノーデンが、香港で複数のメディアに、アメリカが多くの個人情報の収集に関わっていることを告発した事件だ。

スノーデンの父は沿岸警備隊に勤めていた。
映画ではそうした環境から愛国心が強く、
9.11のテロに衝撃を受けて軍隊に志願したと描いている。
スノーデンはマッチョではなく、
むしろナード(オタク)だった。
高校は卒業せずに途中で退校し、
卒業資格を取って大学に入るがそれも卒業できなかった。
趣味はアニメやコンピューターゲームと日本語の学習。
しかしコンピュータには強く、部隊で両足骨折をして除隊すると、能力を買われてNSAにスカウトされる。
1年後、今度はCIAに採用されてコンピュータセキュリティの担当になる。
学歴はないスノーデンだったが、実力はあったのだろう。

映画では採用されたスノーデンが、
CIAの養成学校で次々と課題をクリアする様子を見せていく。
また、ネットで知りあった女性リンゼイとの交際が始まる。
バリバリのリベラルのリンゼイとは政治に関しては
正反対のスノーデンだが、ふたりはなぜか馬が合い、
付き合いだしていく。
CIAの仕事でジュネーブに転勤になったスノーデンは、
そこで初めて目的のためには一般人を利用するCIAのやり方に疑問を持ち、辞職。
しかしCIAと契約を結んでいたDELLから出向という形で、
横田基地のNSAの仕事に従事。
表向きは中国とのサイバー戦対策だが、
そのかたわら日本のエネルギー関連に
マルウェアを仕込んでいたと映画では明かされている。

驚いたのは、アメリカは同盟国である
日本を信頼していないということ。
アメリカは日本に一般人の個人情報の提供を依頼するが断られた。
そこで、もし日本が将来アメリカの同盟国を離れて、
敵国側に回った場合のことを考えて、
電気や通信などをすべてシャットダウンして、
日本を麻痺させることができるマルウェアを仕込んだとスノーデンは語っている。
これは人質と同じで、極端な話、日本がアメリカの言うことを聞かなかったら、外部操作で原発止めたり、
ネットを遮断したりできるということ。
そしてそれは日本だけではなく、
他の同盟国にも同じことをしているというのだ。
(映画では描写はないが、日本大使館の盗聴も行っていたことが後に発覚した)

さて、いろいろあって、スノーデンは自分を取り立ててくれた
CIA上司に選択を迫られる。
会議室のテレビ会話画面に映る上司(リス・エヴァンス好演)が
大きすぎて「1984」の世界だ。
一般人の情報を自由にコントロールできる国家。
しかしそもそも、そこまでする必要があるのだろうかとスノーデンは上司に問う。
そこで上司は言う。
「人々は自由よりも安全を求めている。そして安全のためなら進んで自由を投げ出す」と。

実際、国家はすべての電話は盗聴できるし、
個人のパスワードなども知ることができる。
Facebookやグーグルの検索記録も。
マイクロソフトもYahooもスカイプも
全てNSAに協力している。
でも、私たちはこう思うだろう。
「国家が知りたいのは犯罪者の情報だから構わない。
安全のためだ。それに私は後ろめたいことも秘密もないし、第一に国家は私のことを知ろうとも思わないだろう」
と。
こうして私たちは簡単に自分の自由を手放す。
映画『キャプテン・アメリカ/ウインターソルジャー』のキャプテンなら、こう言うだろう。
「しかし国家に脅威を及ぼすもの。それは誰が決めるんだ」
現実に犯罪者の捜査のための盗聴はある。
しかしそれには裁判所の許可が必要だ。
それでよくはないか?
もし日本で、裁判所の許可なしに警察が勝手に盗聴やデータを盗むことができたら?
盗むことができるなら改ざんもできる。
日本人なら、冤罪が多発する日本の警察を
そこまで信用していないだろう。
つまり、アメリカでもいくらでも“国家の敵”を
作り上げることだってできる。

映画「スノーデン」では推測だが、
国家が膨大な数の“国家の敵”を作り上げるのは、
裏に軍需産業の影が見えるとしている。
敵がいれば、予算を投下しやすいのだ。
CIAで低予算でできる情報収集システムを提案した男が左遷され、
それと同じことができるが10倍の予算がかかる大企業のシステムが導入されるという話が映画で出てくる。
東京オリンピックの予算と同じだ。

映画そのものは、スノーデンの成長物語とも青春映画としても見られると思う。
というわけで、今だからこそ、見るべき映画だろう
反論もあるだろうけどね。それを含めて。
★★★☆
[PR]
by mahaera | 2017-02-09 19:24 | 映画のはなし | Comments(0)