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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2017年 02月 12日 ( 1 )

最新映画レビュー『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』 アメリカの裏歴史を描いた歴史大作だが…

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男
Free State of Jones
2016年/アメリカ

監督:ゲイリー・ロス
出演:マシュー・マコノヒー、ググ・ンバータ=ロー、マハーシャラ・アリ
配給:キノフィルムズ、木下グループ
公開:2017年2月4日より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中


たぶん多くの人は、この映画がいま公開されているか
知らないのではないかと思う。
話題性のある映画ではないアメリカの歴史映画だし、
出来もまあまあで、批評家が積極的に取り上げるわけでもない。
また、主演が日本では一般的にはそれほど有名でない
マシュー・マコノヒーだ。
ただし映画としてはいまひとつだが、歴史好きの僕には
「ああ、こんな人もいたんだ」と勉強になった作品だ。

物語は南北戦争中の1862年に始まる。日本で言えば幕末。
南軍の衛生兵として働くニュートン・ナイトは、
若い甥が目の前で倒れるのを見て、戦争に嫌気がさし、軍を脱走。
故郷のジョーンズ郡に戻るが、
そこでは農民たちが南軍の強制徴収に苦しめられていた。
刃向かったニュートンは、スワンプの奥にある
逃亡奴隷たちの隠れ家へ避難。
やがてそこには脱走兵たちも集まりだした。
ニュートンらは彼らを集めて「自由反乱軍」を名乗り、
南軍と戦い始める。

南北戦争の中のある地方で起きた事件。
それは、アメリカの歴史の中でもローカルな
小さなできごとだったのだろう。
しかしそこにスポットを当てたこの作品は、
北軍側でも南軍側でもない別の視点から描いているのが新鮮だ。
南北戦争ではとくに南軍側が自分たちを美化する傾向にあるが、
それは『風と共に去りぬ』の影響が強いのかもしれない。

というのも「南軍の誇り」を描くと、
スポットがあたるのは農園主など金持ち階級ばかり。
この映画ではそれを主人公に「金持ちの戦争」と
バッサリ切り捨てさせる。
戦争で死ぬのは、奴隷も持てない貧しい白人の小作農たち。
金持ちの子弟は徴兵免除
があるが、貧乏人は徴兵され、
わずかな農作物も奪われる。
ニュートンは、そんな自分たちは金持ちが使う奴隷と同じだと訴え、白人と黒人奴隷の共闘を作って反乱を起こす。

今やアメリカを代表する演技派俳優に成長したマシュー・マコノヒー。その彼が出ずっぱりで熱演する歴史大作だ。
ただ、この作品の狙いは「そんな英雄的な人がいた」ということではなく、今も白人と黒人の分断は続き、それを解決しなければならないと思わせることだ。
というのも、きれいにまとめるなら南北戦争の終了と共に
映画は終わるべきだが、映画はその後、ニュートンの願いが
かなわず、南部では戦前の勢力が回復し、
KKKが台頭するまでを描いている。
また、ニュートンの物語と平行して、ニュートンの子孫が1/8黒人の血が混じっているということで白人としてみなされず、白人との結婚が禁じられるという100年後のミシシッピの姿も描かれる。
つまり、ニュートンが戦わねばならない相手や制度は、
その後もずっと存続していたのだ。

そうしたアメリカの“裏歴史”を描いた作品が本作なのだ。

ただ、映画として面白いかというとそれはまた別で、マコノヒーの熱演にもかかわらず、作品としは凡庸な出来になってしまった。
ちょっと美談としてまとめようとしすぎてしまったからか、
盛り込みすぎてポイントがよくわからなくなってしまったからか、
日本の大河ドラマのようにダラダラと長く続く感じ。
製作・監督・脚本をつとめるゲイリー・ロスは、『ビッグ』の脚本家として注目を浴び、『シー・ビスケット』などでは監督もしていて手堅いのだが、どうも演出はシャープさに欠ける。
映画というよりは、大作TVドラマに近い印象を受けてしまったのが、正直なところだ。
どこで話を集約して最高潮に持っていくかの計算ミスだろう。
★★
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by mahaera | 2017-02-12 13:26 | 映画のはなし | Comments(0)