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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

mahaera.exblog.jp

2017年 04月 09日 ( 1 )

最新映画レビュー『パッセンジャー』 重い興味深いテーマを含むが、鑑賞後はライト級になってしまい残念

パッセンジャー
Passengers

2016年/アメリカ

監督:モルテン・ティルドゥム
出演:ジェニファー・ローレンス、クリス・プラット
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開:3月24日より全国で公開中


『ラ・ラ・ランド』同様、今をときめく旬のふたりの俳優の共演。
演技力で言えば若手ではNo.1クラスのジェニファー・ローレンス、゜そして“演技”ではなく醸し出す雰囲気が人を好きにさせる現代のハリソンフォードとも言えるクリス・プラット
そのふたりのカップルによるSFエンタテインメント映画だ。

大まかなストーリーは、予告編を見ればわかる。
未来の宇宙で、5000人の乗客をのせた移民船が
120年の旅を続けていた。
船内の人間はすべて冬眠装置に入っていたが、
運命のいたずらでエンジニアのジムは90年早く目覚めてしまう。
すべてが整っている船内では、生きていくことができる。
ただし、彼は死ぬまでひとりだ。
生きる目的を失ったジムだが、もうひとりの乗客の女性オーロラが目覚めたことで、生きがいを見出していく。
やはり最初は絶望的になったオーロラだが、ジムと愛し合うよう
になり、やがて彼女も生きる希望を見出していく。
しかしそんなふたりを乗せた宇宙船に、大きなトラブルが…。

SFエンタテインメント大作らしく、ブレードが回転して重力を生む斬新なルックの宇宙船や、船内施設のデザインはすばらしい
ショッピングモールに、ただひとりしかいないような空虚感は、
大きなセットを作らないと生まれない。
そして『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』のオマージュが。

実はこの映画、映画のテーマに関わる大きな仕掛けが
中盤に施されており
、それは予告編などでは巧妙に隠されている。
また、それは事前に知らないほうがよく、
ネタバレ厳禁な作品でもある。
なのでここでも書けないのだが、
それは超ヘビーな倫理観にまつわるできごとだ。
もちろん映画的なクライマックスは、トラブルが起きて、
ドッカンドッカン爆発してのラストなんだが、
ドラマ的には中盤が、どひゃーとなる
ジェニファー・ローレンスの演技うますぎで、新ためてこの人、
若手No.1女優だと思う。
これじゃ映画評にならんが、しょうがない。
映画のテーについて書いたら、ネタバレになっちゃうから。

別なことで言えば、宇宙船は人が暮らす世界のメタファーであり、
そこで目覚めたただひとりジムは、人間であり、“アダム”である。
人は何のために生きるのか。
ただ生きて死ぬのではなく、人間には生きる目的が必要だ。
イブのいないエデンの園は、ジムにとっては楽園ではない
神の牢獄だ。
目覚めたオーロラは、そのジムにとってのイブとなる。
「オーロラ」という名のように、この映画の背景には
「眠りの森の美女」がある。
“眠り”についたオーロラをキスで目覚めさす王子のイメージや、
ドラゴンが吐く火を盾で防ぎながら倒すというイメージが、
クライマックスでも登場する。
真の愛を得るためには、自己犠牲的な行いが必要なのだ。

ということで、内容的にはかなりヘビーであり、
重い命題も含まれているのだが、
残念ながら手放しで絶賛できない出来でもある
というのもこの映画、大金をかけた大作であるから、
エンタテインメントとしてヒットが必要。
なので、観客にそっぽを向かれないようにと気をつかったのか、
終盤のクライマックスに向けてヘビーな命題は隅に置かれていき、
アクションを盛り込み、いつものドッカンドッカン。
で、何となく、観客が気持ち良くスクリーンを後にできるように、わかりやすいエピローグまでつけてしまった。
それによって、逆にというか、印象が薄くなってまったのだ。
まあでも、ビターな味わいにしたら名作になったかもしれないが、
それじゃお金をかけたインディペント映画みたくなっちゃうかも。そっちのほうがみたかったけどね。
つまり旬の若手2大スターを使う大作ながら、
『ラ・ラ・ランド』と反対の方に行ってしまったわけで、
その点が裏目に出てしまったともいえる。
いいところまで行っていたのに、最終的にはどこかで見た
“いつもの映画”に着地してしまった。

とはいえ、宇宙船のセットは大画面で見る価値は十分あるし、
ここでネタバレになるので書けなかった重要な“あること”について、
映画を見終わった後は友人や恋人と話し合って盛り上がれることは間違いないだろう。
監督はノルウェー出身で、初の英語作品『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』でいきなりアカデミー監督賞にノミネートされた新鋭のモルテン・ティルドゥム
★★★☆
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by mahaera | 2017-04-09 11:37 | 映画のはなし | Comments(0)