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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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カテゴリ:映画のはなし( 463 )

最新映画レビュー 『世界の果てまでヒャッハー!』 結構楽しい、おしゃれ度ゼロの正真正銘の「バカ映画」

世界の果てまでヒャッハー!

2015年/フランス

監督:ニコラ・ブナム、フィリップ・ラショー
出演:フィリップ・ラショー、アリス・ダヴィッド、クリスチャン・クラヴィエ
配給:アルバトロス・フィルム
公開:11月19日よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿


重い映画が多い、と思われがちなフランス映画だが、
たまにしょうもないほど「バカな」コメディ映画がやってくる。
この映画もそんな一編で、90分というコメディとしては
ちょうどいい長さの間じゅう、「おいおい」と画面に
ツッコミを入れっぱなしだった。
だって出てくる登場人物たちが、揃いも揃ってバカばかり(笑)
ちなみに世の中には、女子が「あの映画、おバカで面白い」と
話題にする、ちょっとバカさ加減がおしゃれな感じで取られている
映画があるが、これは違う。バカ(笑)

ストーリーはこんな感じ。
恋人のソニアの父親が経営するブラジルのエコリゾートに招待された、漫画家のフランク。
彼はこの旅でソニアにプロポーズしようと指輪を用意していた。
この旅には二人の友人の3バカのサム、アレックス、エルネストら
も一緒だ。
行きの飛行機の中で、フランクが用意した指輪をいきなりアレックスが飲んでしまうというベタなギャグ。

リゾートは青い海と空、豊かな自然、ビキニの美女たち。
しかしフランクとソニアの心はすれ違い、
気弱なフランクはプロポーズができない。
そんな中、一行はソニアの祖母ヨランダを連れて飛行機で
奥地に向かい、ジャングルツアーに参加することに。
しかし行った先の洞窟でガイドが転落、行方不明になり、
一行はジャングルで途方にくれる。
そこに原住民の一行が突然現れ、、、

バカの一人、アレックスは旅の様子をずっとビデオで撮影している
という設定で、途中からはリゾートに残った人たちが
探しているうちにそのビデオを見つけ、
再生して行方不明になった事件の顛末を知るという構成だ。

ギャグの多くは古典的なので、こちらが結果を予測して
「おいおい、そうしたらダメだろ!」と
ツッコミを入れてみるのが楽しい。
たとえば洞窟を案内しているガイド。
ガイド「私はここに来るのは二度目ですが、前回は1週間迷いました」なんて言っていると、
「あーっ!」てガイドが穴に落ちる(笑)。
みんなが「大変だ!助けに行かなきゃ」
「どのくらい穴が深いんだろう」と言っていると、
バカのひとりが石を落とし
下から「ギャーッ」と悲鳴が聞こえる(笑)

「ロープを作って助けよう」と誰かが言い出し、
みんなが服を脱いで、女性は無駄にビキニ姿に(笑)
服をつないでロープができたと思ったら、バカはどこにも結ばず、
そのまま投込むもんだからロープは全部落下(笑)

こんな調子のコントのようなギャグは、
テレビの短いギャグをたくさん繋げたようだが、気楽に楽しめる。
教訓もホロリともさせない。
ただひたすらに画面にツッコミを入れる90分。
けっこう楽しめたよ(笑)
★★★
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by mahaera | 2016-11-19 17:17 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ガール・オン・ザ・トレイン』 “夫婦間スリラー”だが、記憶喪失に頼りすぎ?

ガール・オン・ザ・トレイン

2016年/アメリカ
監督:テイト・テイラー
出演:エミリー・ブラント、ヘイリー・ベネット、レベッカ・ファーガソン、ジャスティン・セロー、ルーク・エヴァンス
配給:東宝東和
公開:11月18日より全国公開


酒がたたって会社をクビになったレイチェルだが、同居する友人の手前、毎朝通勤電車に乗ってマンハッタンに通っている。
通勤電車の車窓から見える郊外のかつての家では、
愛する夫トムと新しい妻のアナが赤ん坊と暮らしていた。
そんなレイチェルの慰めは、
その数軒先の家に住む若いカップルだった。
幸せそうなそのカップルに、“理想の夫婦”を見出したレイチェルだが、ある日、その家のベランダで若妻が他の男性と浮気をしている姿を目撃。
怒りにかられたレイチェルは途中下車してその家に向かうが、途中で記憶を失い、気がつくと血を流した状態で家に帰っていた。
やがてレイチェルは、その若妻が失踪したことを知る。
警察に届けたレイチェルだが、逆に彼女に嫌疑がかかる…。

別れた夫に未練タラタラで無言電話をかけたり、酒浸りで会社をクビになったりと、社会的にも落ちぶれてしまった主人公を演じるのは、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『ボーダーライン』など、それまで強い女性役が多かったエミリー・ブラント。
いつもと違うイメージだが、これはこれでアリか。

映画はその彼女と元夫、そして夫を奪った現在の妻の三角関係と、主人公が理想のカップルとみている若夫婦とその“浮気相手”という、6人の複雑な人間関係に、殺人事件が絡んで進んで行く。
最初に「夫婦間スリラー」と書いたのは、
「結婚していても相手の本当の顔を知っているのか」というのが本作の大きなテーマになっていること。
公開中のスリラー『ザ・ギフト』でも似たようなテーマが語られていたが、相手のことをよく知らないうちに結婚するのは考えものだと、今回も思う(笑)

ミステリーなんであまり筋を明かせないが、本作、面白いっちゃ面白いが、けっこう偶然によって成り立たせすぎないか?と感じる時あり、ちょっと納得できない。
というのも、僕は酒で記憶を失くしたことがないからかも。
主人公が都合よく記憶を失くし過ぎているので、
いや、酒飲んでもさすがにそんなに忘れないでしょ
と何度も思ってしまった。
自分を殴った人のこととかねえ。
あと、周りの人に聞くでしょ。
記憶ないけど本当はどうだったかとかねえ。
しかし、出てくる旦那二人とも情けないこと(笑) 
★★☆
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by mahaera | 2016-11-18 12:43 | 映画のはなし | Comments(0)

子供と見た午前十時の映画祭  『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』

子供と見た午前十時の映画祭
『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』

もう何度観たかわからない、大好きなマカロニウエスタン。
というか西部劇。
前作『夕陽のガンマン』もすばらしいが、本作から巨匠の風格が生まれたといっていいセルジオ・レオーネ。
僕も『荒野の用心棒』以降しか知らないが、
それ以降はすべて名作で、凡作駄作一切なし
という稀有な監督だ。
DVDもすべて持っているもの。

で、この『続・夕陽』、上映時間179分、南北戦争を背景にしたスペクタクルと、ボリュームたっぷり。
主な登場人物は3人、イーストウッド扮するガンマンのブロンディ、イーライ・ウォラック扮する卑劣漢のトゥーコ、そしてリー・ヴァン・クリーフ演じる非情な悪党のエンジェル・アイ。
内戦の中でも、自分の利益しか考えない男たち。
逆に戦争の中ではその利己主義っぷりが清々しく、
金をめぐっての殺し合いよりも、
戦争の方が非人間的に見えてくる。

映画の最大の見所は、やはりラストの墓地。
モリコーネ作曲の「黄金のエクスタシー」が流れる中、
トゥーコが延々と墓地を走るシーンは、
最初に見た時にはめまいがした。
そしてそのあとに「トリオ」の楽曲に乗って続く、
3人の決闘シーン。
にらみ合いが続き、3人の顔がどんどんアップになり、
目が大スクリーンいっぱいになるところは、
レオーネ演出の真骨頂。
延々引っ張ってテンションを高めたあと、
戦いはあっさり一発の銃声で決まる演出は、
タランティーノが今は引き継いでいる。

名作中の名作で、今回は久しぶりのスクリーン上映、
しかも初のデジタル鑑賞。
僕の見た新宿がよくなかっただけなのかわからないが、
信じられないくらい耳にキンキンくる高域の音声。
画質は良かっただけに残念。
(劇場の上映は終わってしまったんで、DVDでどうぞ)
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by mahaera | 2016-11-15 10:40 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ホライズン』 3人のバレエダンサーを通し「継承」とは何かを描くドキュメンタリー

ホライズン

2015年/スイス、キューバ
監督:アイリーン・ホーファー
出演:アリシア・アロンソ、ヴィエングセイ・ヴァルデス、アマンダ・デ・ヘスス
配給:T&Kテレフィルム
公開:11月12日より東京都写真美術館ホール、角川シネマ新宿にて公開中


イメージと違うかもしれないが、僕はバレエ好きである。
最近はめっきり見に行かなくなってしまったが、
独身時代は年に1〜2回はバレエを見ていた。
まあ、その時の彼女、あるいはどんな友人がいたかってこともあるが(笑)
なんでバレエ映画は見るのが好き。そもそも数は少ないけれど。
そんな訳で今回紹介するのは地味なドキュメンタリーだが、
個人的には興味を持ってみることができた。

舞台はキューバの首都ハバナにあるキューバ国立バレエ団。
おもな登場人物は3人だ。
ひとりは1920年生まれのアリシア・アロンソ。
世界的なプリマだったが、長年の目の煩いで失明。
しかしカストロ兄弟の助けを借りてこのバレエ団の中心人物となり、90歳を過ぎた今も指導・振付を続けている。
もうひとりは現在のバレエ団のトップダンサーである
ヴィエングセイ・ヴァルデス。
厳しい練習を毎日欠かさずしているが、
それでも目の見えないアリシアに厳しい指導を受けることがある。
3人目は国立バレエ団の入団を目指している
14歳のアマンダ・デ・ヘスス。
決して裕福には見えない両親だが、娘の将来に賭けて
それまでの仕事を辞めてハバナに出てきて、
娘のレッスン中心の生活を送っている。

カメラはこの3人を追い、国立バレエ団の、
いや、バレエの過去・現在・未来を見せ、
そして「継承すること」についてを描いていく。

キューバのバレエについては前知識がなく、
今回、アリシア・アロンソについて初めて知ったが、
映画には出てこないけっこうな逸話がありそうだ。
カストロ兄弟が国策としてバレエに力を入れていたのも、
初めて知ったし。
そして国内トップクラスのバレエ団なのに、
練習場所とかはふつうの公民館レベルというのも、
キューバらしい。

もう目が見えず、支えてもらっても歩く以上の踊りはできない96歳のアリシア・アロンソ。
もはや精神力だけで生きているだけという感じで、
家にいるときはただのおばあさんだが、
人前に出るとカリスマ性を発揮する。
そんな生き方ができるのは、人間だけかもしれない。(★★★
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by mahaera | 2016-11-14 12:19 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』 トムが活躍するアクション第2弾

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

2016年/アメリカ

監督:エドワード・ズウィック
出演:ハンクスでないトム、コビー・スマルダーズ
配給:東宝東和
公開:11月11日より全国で

元MP(憲兵隊)の指揮官だが組織に限界を感じ、
いまは全米を放浪しているジャック・リーチャー。
ふらりと町に現れて、弱きを助けて悪人を倒し、
事件を解決して去っていく。
西部劇のガンマンのような存在だが、
原作はずっと続いているそうで、今回はその18作目の「NEVER GO BACK」の映画化となる。

まあ、見ている間は面白いんだが、
正統派すぎて引っかからないと言えばそんな映画(笑)。
意外なのが、監督がエドワード・ズウィックということ。
『ラスト・サムライ』が有名だが、『グローリー』『ブラッド・ダイヤモンド』『完全なるチェックメイト』とか、歴史や大きな流れに翻弄される個人を描くのが好き。
たいてい脚本を兼ねているのだが、こうしたメッセージ性のない娯楽映画を撮るとは思わなかった。
製作も兼ねた前作の『完全なるチェックメイト』が、
制作費の半分も回収できなかったからなのかなあなどと想像してしまった。
困っているズウィックに、トムがもしかしたら手を差し伸べたのかもしれない。

この映画で面白いと思ったのは、
リーチャーが軍の警察であるMP出身ということ。
日本では馴染みがないが、軍内の犯罪は一般警察ではなく、憲兵隊が調べる。その仕組みや過程が興味深かった。

で、イマイチに感じたのは、リーチャーが陰謀から助けるMPの将校が美人女性、そしてリーチャーの隠し子疑惑から不良少女を伴っての逃避行、つまりかみさんと娘という疑似家族なんだが、それがリーチャーのキャラに合っていない。
全然、アウトローじゃなくなっている。。。。

女性ファンへの目配せかもしらんが、
孤高のアウトローなら男臭いのを求む。

ということで★★☆ぐらいかなあ。
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by mahaera | 2016-11-11 14:07 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ザ・ギフト』 監督としての腕も確か。上質なスリラー

ザ・ギフト
The Gift
2015年/アメリカ

監督:ジョエル・エドガートン
出演:ジェイソン・ベイトマン、レベッカ・ホール、ジョエル・エドガートン
配給:ロングライド、バップ
公開:10月28日よりTOHOシネマズ新宿ほか

オーストラリア出身の俳優ジョエル・エドガートンを知っている人は、そう多くはないだろう。
正しくはエジャートンらしいが、日本では間違えたままずっとエドガートンで通ってしまっている。
僕が最初に彼をスクリーンで見たのは、2002年公開の『スター・ウォーズEP2/クローンの攻撃』。
若い頃のオーウェン・ラーズおじさん役でちらっと出てきて、それがよく似ているので、僕の中では、「若いラーズおじさんを演じていた人」という認識で覚えていた。
その後『スター・ウォーズEP3/シスの復讐』にも出ていたが、ちょい役。
俳優として気になったのは、陰惨な犯罪者一家の話『アニマル・キングダム』だ。
次はちょっとカート・ラッセル似の風貌からか『遊星からの物体Xファーストコンタクト』で、準主演級。
今年の『ブラック・スキャンダル』では、ジョニー・デップとダブル主演級で、「おお、ここまで出世したか」と感慨深いものがあった。
で、本作は、そのエドガートンが初監督と脚本、出演も兼ねたスリラーだ。

主人公は、旦那の実家近くにある高級住宅地に移り住んできた妻。
夫婦で買い物に出かけた時、夫に声をかけてくる男がいる。
彼は夫の高校時代の同級生だと親しそうに言うが、夫はうれしそうではない。
その男ゴードは、やがて家の玄関にプレゼントを置くようになる。
そして、夫が留守だとわかっているのに、家に現れるようになる。
ゴードの狙いはなんなのか。そして旦那はなぜ、彼を避けようとしているのか。

ショックシーン、暴力シーンもほとんどないが、じわじわとこの妻が追い詰められていく、上品なスリラーだ。
上昇志向が強くて仕事はやり手という夫を演じているのは、コメディ俳優のジェイソン・ベイトマン(『モンスター上司』とか『宇宙人ポール』とか)。
しかし本作では、まったく笑えない、意外性のある夫を演じている(裏表がある男がなかなか合っている)。
そして、挙動不審の男ゴードを、本作の監督・脚本であるエドガートンが演じている。
本当に不器用なのか、それともその裏にしたたかな面を持っているのか。
そんな夫の前では、すこしおどおどしてしまう主人公には、僕の御贔屓のレベッカ・ホール(笑)。
今回は出ずっぱりで、ゴードに対して同情したり、不気味に思ったり、そして夫に対して不信感を抱いたりと、見せ場が多い。

で見終わって感じたのは、「傷つけられた人はずっとそのことを忘れずに覚えているし、何よりも謝罪の言葉が欲しい」ということ。
自分が暴力的になれない人は、やり返したりができないし、それを求めてはいない。
しかし、それを見透かして、いじめる卑劣な奴もいる。
ラストの落とし所(ザ・ギフト)は劇場で見てのお楽しみ。こういうのはあまり前知識なく、みたほうがいいからね。
(★★★)
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by mahaera | 2016-11-09 19:08 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー『われらが背きし者』、『フランコフォニア ルーヴルの記憶』

10月21日公開
『われらが背きし者』 スザンナ・ホワイト監督


ジョン・ル・カレ原作によるスパイ映画。
ル・カレ作品はよく映画化されているが、
最近の『裏切りのサーカス』や『ナイロビの蜂』は
非情な世界を英国俳優たちの抑えた演技で見せてくれ、
英国映画らしい、いい作品だった。
今回も派手な打ち合いはほとんど皆無の地味なスパイものだが、
なかなか見ごたえのある作品になっている。

映画は3人の男を軸に進む。
自分の浮気が原因で妻とはうまくいっていない大学教授(ユアン・マクレガー)が、関係を修復しようと妻とふたりでモロッコに旅行に行く。
そこで彼はロシアンマフィアのマネーロンダリング担当の男(ステラン・スカルスガルド)と出会い、彼に亡命の手助けを頼まれる。
まもなく用済みとなるマフィアは、
家族とともに組織に消される運命にあった。
教授から連絡を受けたイギリス情報部の担当者(ダミアン・ルイス)はマフィアを亡命させようとするが、
彼と個人的に対立する上層部に邪魔をされてできない。
そこで彼は情報部の上司に内緒で亡命工作を進めるが、、、。

主人公は暴力とは縁のない一般人。
その彼が危険な世界に巻き込まれていくうち、家族を救うために亡命しようとするマフィアと奇妙な友情で結ばれていく。
そして危険を乗り越えることで、
冷めていた夫婦の絆も取り戻していく。
主人公のユアン・マクレガーがイケメンすぎて、
いまひとつ大学教授に見えないのが残念。
しかしマフィア役のステラン・スカルスガルドは、
善悪両方の面を持つマフィアを深みのある演技で見せているし、
あまり知らない俳優のダミアン・ルイスも、
実際にイギリスにいそうな官僚タイプの情報部員の雰囲気をうまく出し、ともに好演。
キレはないかもしれないが、
こうした堅実に作られているB級映画は好きだ。
昔、名画座の2本立てで、お目当てじゃない1本で、
拾い物をした感じ。
(★★★)

10月29日公開
『フランコフォニア ルーヴルの記憶』 アレクサンドル・ソクーロフ監督


観念的な映画がダメなわけじゃないよ。
スカした映画が嫌いなわけじゃない。
ただ、この映画はアイデアが上滑りして、
それがこちらに伝わってこなかった。
ふつうの劇映画でもドキュメンタリーでもない本作は、
いくつかのイメージのつなぎ合わせだ。
冒頭、監督のもとに美術品を積んで荒波に揉まれている貨物船の船長から、ネットで連絡が入る。
再現ドラマでは、第二次世界大戦中に、ルーブルの館長とドイツ人将校が美術品を守ることで協力する話が演じられる。
それと夜のルーブルを徘徊するナポレオンと
フランス革命を象徴する女性が徘徊する。
大仰な音楽とかみ合わないテンポに、夢の世界に引き込まれた。(★)
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by mahaera | 2016-11-04 10:19 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー 『ハドソン川の奇跡』 ただの美談にせず、ひとりの男の物語として成功

ハドソン川の奇跡
Sully
トム・ハンクス主演、クリント・イーストウッド監督


前情報を入れていなかったので、
なんでこの事件をイーストウッドが撮るのか不思議だった。
だって当時ニュースでよく流れた有名な事件だし、
「奇跡の生還物語」として再現映像もよくやっている。
誰もが全員助かった事件と記憶しているので、
ゴールが見えている話だ(それも感動を呼ぶ結果が見えている)。
よほどうまくやらない限り、安っぽい感動ドラマになりかねない。
「わざわざ感動しに行くの、いやだなー」と思って
ノーマークだったが、評判がいい。
で、観に行ったのだが、これがいい意味で期待を裏切ってくれた作品だった。

エンジントラブルからハドソン川に着水したUSエアウェイズ機。
映画はもうその事故が終わったあと、サリー機長が飛行機がビルに激突する悪夢をみるところから始まる。
彼は生還したが、「もしも」という墜落の夢を見てしまうのだ。
マスコミは「彼は英雄」と持ち上げる。
しかし調査委員会からは、
「管制塔の指示に従っていれば無事に他の空港に着陸できたはず」
という意見が出される。
サリー機長の決断は、大惨事を招く
大きな判断ミスだったかもしれないと。
離陸から着水までわずか4分半ほどしかなかった。
エンジントラブル発生からは3分ほどしかない。
考える時間はたった30、40秒。

そんなそう、これは
「俺の判断にミスはなかったか。
俺は本当に正しい選択をしたのか」

といういつものイーストウッド映画だった。
人々は彼を英雄に祭り上げるが、その一方で非難をする人もいる。
悩む機長だが、その一方で何度考えても
「あれはあの状況では最善の選択だった」と確信する。

この映画で感銘を受けたのは、操縦士、客室乗務員、
そして救助にかけつけた人々のプロフェッショナルさだ。
それをいやらしく感動的に盛り上げるのではなく、
「仕事ですから」というスタンスなのがいい。
プロフェッショナルの格好良さを見せてくれるのだ。

そして、これは911の後の事件だということ。
ニューヨークでビルにまた旅客機が激突したら、、。
たぶん、ニューヨーク市民、いやアメリカの人々にとって、
悪夢が再びということになったろう。
だからこの全員が助かったハドソン川の着水事故は、
ただの事故以上のものがあったのだ。

ということで、「君の名は。」が現実世界ではできなかったことを
映画の世界で果たしてカタルシスを味わう「ポスト311映画」(「シン・ゴジラ」も)だったが、
この事故は「ポスト911」を
現実世界で果たしたものだったといえよう。
上映時間90分台と大作にしては短い上映時間だが、満足いく内容。
(★★★☆)
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by mahaera | 2016-11-02 11:58 | 映画のはなし | Comments(0)

最新映画レビュー セリフが説明過多な『ダゲレオタイプの女』、脚本が雑な『スタートレックBEYOND』

10月15日公開
『ダゲレオタイプの女』 黒沢清監督


怖〜い映画を撮るので、毎回見るのを躊躇する黒沢清監督作品。
今回はフランスに招かれて監督した作品。
「ダゲレオタイプ」は昔の写真の手法で、長時間露光が必要なので被写体を拘束具につけて固定して撮影する。
主人公の青年ジャンは、その写真家の助手に雇われているうち、固定されて被写体になっている写真家の娘マリーに恋をしていく。
前の被写体だったマリーの母はその屋敷で自殺していた。
ジャンはマリーを屋敷から連れ出そうとするが。。。

ドロドロとしたホラーではないが、ふつうに幽霊は出てくるし、
妄想も出てくる。
少人数の息詰まる人間関係。ただ、怖いというわけではない。
雰囲気でもっていく幽霊話は僕も大好きだが、
いかんせんセリフが説明的すぎてのれなかった。
物語の重要な部分を、アクションではなく、
すべてセリフで語ってしまうからだ。
たとえば推理もので
「佐藤の本当の父親は鈴木ではなく、田中だった!」みたいな、
観客が驚く展開があるとしよう。
映画ではテンション上げた上で、
ふと主人公がそれに気がついて観客が驚くシーンを用意する。
しかしここでは日本映画の悪い癖か、それをあっさり第三者の
「そうか!佐藤の本当の父親は鈴木ではなく、田中だっんだ」
というセリフですましてしまう。
本作にもそういうところがあり、それがかなりマイナスに。
★★☆

10月21日公開
 『スタートレック BEYOND』 ジャスティン・リン監督


J・J・エイブラムスが、「スターウォーズ」に行ってしまたので(制作には残留)、監督が「ワイルドスピード」シリーズのジャスティン・リンに変わった3作目。
そのおかけで、タッチはかなり「ワイルドスピード」(笑) 
敵との戦いを見せるというより、いかにエンタープライズ号のチームプレイを見せるという方向に、ポイントがシフトしている。
いつものジャスティン・リン演出は知的ではないが、見せ場をちゃんと理解しているという娯楽映画としては王道の造り。
なので今回の「BEYOND」のダメさは、
脚本のひどさにあるのだろう。
出演のひとりのサイモン・ペッグが書いたものだが、
面白くないし、細部がかなりずさん。
結局設計図がダメなので、
バイトが作った定食のような出来になってしまった。
演技力がそれほどあるわけではない俳優たちも、
今回はその弱点が露出してしまい残念。
★★
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by mahaera | 2016-10-31 13:18 | 映画のはなし | Comments(0)

子供に教えている世界史・番外編 映画『最前線物語』と『史上最大の作戦』

教えている世界史も第二次世界大戦に入った。
第二次世界大戦を描いている映画はゴマンとあるが、
基本的にDVDで見るときは、食事をしながらの休憩時なので、
『プライベートライアン』のようなスプラッタは厳しい。
西部戦線をミクロな視点とマクロな視点で描句とどうなるかというので、何日かに分けてこの2本を見た。
それぞれ3時間弱の大作だ。

『最前線物語』
は、自分も第二次世界大戦の兵士だったサミュエル・フラー監督の1980年の隠れた名作映画。
知名度は高くないが、評価は高い。
特にリー・マービンの鬼軍曹役は絶品。
「スター・ウォーズ」のマーク・ハミルも出ている。
ストーリーは、その鬼軍曹に率いられた若い4人の第一分隊の歩兵の青年たちが、ヨーロッパ各地を転戦していくもの。
米軍最初の戦いは、北アフリカのヴィシー政権のフランス軍と戦うことだった。
その後、北アフリカ戦線、シチリア攻略、イタリア上陸、ノルマンディー上陸作戦、アルデンヌの戦い、ドイツ西部戦線、最後にはチェコの絶滅収容所の解放で終わるという、西部戦線をほぼ網羅しているので、流れを掴むのにはいいかなと思った。
実際の第一分隊も、有名な戦いのほとんどに参加しているという。
この映画がミクロな視点というのは、主人公たちが歩兵なので、
全体像ではなく、常に前線の一兵士の視点で語られていくこと。
いくつかのエピソードがブツブツと繋がっていき、いろいろなことを考えさせてくれるが、未消化のまま次へ次へと進む。
なので、見終わった後に、非常にモヤモヤした感じになるのだが、それこそがこの映画の魅力だ。
戦争で人を殺すことは、モヤモヤしたものなのだから。

『史上最大の作戦』は、『最前線物語』にも出てきたノルマンディー上陸作戦をマクロの視点で描いた大作。
2日間の出来事を数百人にインタビューしたコーネス・ライアンの原作は非常に面白く、高校時代に読みふけったものだ。
一兵卒から将軍、アメリカ軍、イギリス軍。ドイツ軍、フランスのレジスタンス、空挺部隊、上陸部隊、守るドイツ部隊と、あらゆる視点からこの上陸作戦を描く、いわば神の視点だ。
世界史を学ぶのは、こうした神の視点からの学習だが、
それだけだとそうなるのが必然な気がしてしまいがち。
戦争の悲惨さを知るには、やはりミクロな個人の視点と合わせているのがいいだろう。
先日、子供に見せた『トラ!トラ!トラ!』もマクロな視点だが、逆にそうした戦争映画は最近少なくなってきたなあ。
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by mahaera | 2016-10-26 11:08 | 映画のはなし | Comments(0)