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旅行・映画ライター前原利行の徒然日記

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映画『七人の侍』 その1

三週間ほど前になるけど、久しぶりにテレビで『七人の侍』を見た。
BS放送をHDに録ってあったやつを、
息子が気になり観たいというので、僕も一緒にながら見始めた。

この映画を見るのはもう何回目になるのだろう。
僕が子供のころから、よくテレビで放映されていたが、最初にきちんと見たのは1975年のリバイバルの時だ。
当時僕は中学生だったが、その時の国語の先生が「絶対に見に行け!」と大絶賛。
もちろん僕はそのころ立派な映画少年だったけど、あまり日本映画は見ていなかった。
クラスの何人かでテアトル東京に見に行ったと思う。しかし父親と行ったような気もするので、
もしかしたら二回行ったのかもしれない。
侍が次々と揃っていくところはわくわくし、決戦に備えて緊張感が高まり、
そして大迫力の雨の中の戦いには我を忘れた。
中学生でもこの映画の面白さは十分にわかり、感動し、泣いた。

その後、名画座で何度か見たし、テレビでも時々やるので数年に一回は見続けていると思う。
この映画に関して、「飽きる」ということはない。
この映画で飽きてしまうようなら、その人はどんな映画を見ても飽きてしまうだろう。
今回も、最初は斜め見だったのだが、やがて手作業を止めて真剣に見出してしまった。
本作は休憩ありの三時間二十七分の長尺だ。
息子は途中で注意力散漫になり、妻は最初から興味なしで見ていない。
その脇で、ひとり涙を流す自分。。(笑)

この『七人の侍』を見ると必ず泣いてしまうところがいくつかある。
まず最初のほう。農民たちが勘兵衛(志村喬)に村を守ってくれるように頼むが、断られる。
武功にもならず、報償も得られず、ただ飯が食えるだけでは、ふつう誰でも断るだろう。
そこで今まで悪い奴だと思っていた人足(眉毛がつながった男)があるきっかけを作り、勘兵衛は村人を助ける決意をする。
「このめし、おろそかに食わぬぞ」のセリフ。 ここで侍のテーマ(音楽)が流れ、涙がじわっ。
勘兵衛のやさしさと決意を知り、侍ならずとも彼に惚れ込んでしまうシーンだ。

その後はテンポ良く侍集めのシーンが続く。宮口精二扮する久蔵が登場する果し合いのシーンはインパクト大。
やがて侍たちは村へ。侍と農民の間に緊張が走るが、菊千代(三船敏郎)の活躍でそれも回避。
野武士との戦いに備え、侍たちは村人を集めて訓練する。
その過程で菊千代が落ち武者狩りの武器を農民に差し出させる。
ここで再び侍たちと農民間に緊張が走る。侍たちははみな武者狩りで命を狙われたことがあるからだ。
その溝を埋めたのが、また菊千代だ。
菊千代「こいつはいいや。いったい百姓をなんだと思ってたんだ。百姓ぐらい悪びれた生き物はねえんだぜ」
百姓がいかに小ずるくて、悪賢いかと罵倒する。
農民出身の彼はそのことを良く知り、それが嫌で侍になろうとしたのだ。
菊千代「でもな、そんなけだものを作ったのは誰だ? お前たち侍だっ!」
ここで、涙どわーっ。菊千代の叫びが、胸に突き刺さる。侍に酷い目に合わされ、農民が嫌になった男。
三船敏郎の名演が光る。

続く
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by mahaera | 2008-10-31 09:57 | 映画のはなし | Comments(0)

映画『七人の侍』 その2

その1からの続き

訓練が続き、離脱しようとした農民を勘兵衛が引き止める名シーンがあり、やがて稲刈り、
斥候を討ち取り、夜襲をかけるシーン、平八の戦死、そして野武士の襲来シーンへと続く。
この平八の弔いから一転し、丘上に野武士の軍団が現れるシーンは、
僕にとって『ゴジラ』でゴジラが初めて丘上に顔を出すシーンと同じくらいのインパクトがある。
戦いのシーンでは、まず水車小屋が焼かれ、赤ん坊を抱いた菊千代が
「こいつは俺だっ!」と叫ぶシーンが泣ける。
小さいころテレビで『七人の侍』を見て、ストーリーは忘れたが、このシーンだけは強烈に覚えていた。

そして戦闘が終わり、勝四郎が「野武士はっ? 野武士はっ?」と叫ぶ。
勘兵衛「野武士はもうおらん!」 
その瞬間、子供のように泣く勝四郎。
もうこのあたりは号泣。

最後はみなさんも知っている通り、平和が戻った村の情景に勘兵衛の
「また負け戦だったな。勝ったのは俺たちではない。あの百姓たちだ」という名セリフがかぶる。
ここで小学生の息子「え?勝ったじゃない」と僕に聞く。
「そのうち、このセリフの本当の意味がわかるよ。あと何年かしたらね」と思うも、黙って聞き流す。

スピルバーグは今でも新作に取りかかるとき、『アラビアのロレンス』などと共にこの『七人の侍』を見直すという。
たぶん、こんな映画はもう二度と作れないだろうなあ。

その後、図書館で「黒澤明と『七人の侍』」という本を読んでそう確信した。
これは『七人の侍』製作のドキュメント本だ。これを読むと黒澤がいかに妥協しなかったかがわかる。
最初の制作費と日数は、まだ映画の三分の一しか撮り終わっていない段階で使い切ってしまったこと。
途中で打ち切りにならないよう、最後の決戦シーンの撮影は最後まで残しておいたこと。
水車小屋炎上シーンは撮影がうまくいかないとして、四回も燃やす羽目になったこと。
スタッフ、キャストすべてに、黒澤のペースを要求したこと。(毎晩の宴会に参加が必須というのは辛そう)
役者を精神的に追い詰めるほどダメ出しをしたこと。
勝四郎が志乃と初めて出合う山の花は、造花ではなく、
毎朝スタッフが山に本物を摘みに行って撮影したこと。

いまだと、そんな独裁的な監督には誰もついていかないし、
またそこまで無理強いしてもスタッフをコントロールできる監督もいないだろう。
映画のためにはすべてを犠牲にできる時代だったのかなあと。
そう思うと、最近の日本映画は、「映画」と呼べるものは少ないなあ。
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by mahaera | 2008-10-31 09:56 | 映画のはなし | Comments(0)

株安、円高が止まらない。そして海外旅行者は増えるか?

今日、とうとう平均株価が7500円を割り込んだそうだ。
まあ、少し戻って午前中の取り引きが終わったようだが。
こんなニュースを聞いても驚かなくなった。
別に株をやっているわけではないし、バブルの時の大暴落を知っているから。
円高も急速に進み、このままでは1ドル80円台突入目前だ。
これもあまり驚かない。前に79円にまでなったことがあるからだ。
前回の円高の時、個人的にラッキーだったのはちょうど長期の海外旅行に出る時で、87円の時、トラベラーズチェックと現金合わせて5000ドルぐらい買ったこと。その2か月前には106円ぐらいだったから、2ヶ月早く旅行に出るのに比べ、10万円ほど得したことになる。
その時の僕の旅行は1日1500円ぐらいしか使っていないから、
2か月、よけいに旅ができたということだ。

最近旅先で出会うバックパッカーは若い人が当然多いので、
バブル崩壊直後はまだ保育園とか小学生時代。
むかし、1ドル80円台だったというと、「いいですねえ」と言う。
あの時は急速な円高のおかげもあり、海外旅行するバックパッカーも増えたが、今回はそんなことはないだろうなあ。
最近の若者は、あの時の若者たちと違うからだ。
あの時はバブルの余韻で転職しても仕事には困らないという気分だったし、まあ世の中にお金があったので、若者にいろいろお金を与えて、
いろんなことをやらせていた。ほとんどが無駄金だったが、
「やればできる」という楽観的な未来感はみな持っていた。
まだ、才能がある人も無い人も、自分に賭けるぐらいの希望は持っていた。

いまはそんな世の中の雰囲気では無いので、旅行者が増えるかどうかは疑問だ。増えても若者ではなく、中年世代だろうなあ。

たぶんこのままで行くと、1ドル8487円ぐらいにはなるだろう。
しかしそこからまた1か月ぐらいでまた103106円ぐらいに戻ると思う。
それを見越してドルを買う人がたくさんいるようだが、
僕もお金があったらドルを買うな。ないけど。
オバマが大統領になった瞬間は、108円。
これが予想だけど当たるかな(笑)
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by mahaera | 2008-10-27 09:58 | 日常のはなし | Comments(0)

『ザ・フー アメイジング・ジャーニー』

『伝説のロック・バンド、ザ・フーの来日に合わせて、
長年にわたる彼らの足跡をたどったヒストリー・ドキュメンタリー
『ザ・フー アメイジング・ジャーニー』が公開される。
(11月22日からシアターN渋谷にて)

このドキュメンタリーを一足早く、試写室で観てきた。

ザ・フーはザ・ローリング・ストーンズと並ぶ大物ロック・バンドながら、
日本では不当ともいえるほど評価が低かったバンドだ。
自分を振り返っても、ロックを聴きだした高校時代にビートルズやストーンズのレコードを持っている奴はけっこういたが、
ザ・フーのレコードは僕の知っている限り、学年で一人しか持っていなかった。
また、そのころ映画『トミー』が公開されて見に行ったが、どうも音楽にピンとこなかった。


で、ザ・フーがすごいと思ったのは70年代に作られた彼らのドキュメンタリー映画『キッズ・アー・オールライト』を観てから。
これはロック・ドキュメンタリーの傑作で、これを観て何にも感じない人がいたら、ロックに向いていない人だろう。
とにかく60年代中末期のライブ・パフォーマンスにおいては、ビートルズやストーンズを軽く抜いて、
クリーム、ツェッペリン、ジミヘンを凌ぐのではないかというほどのすごさだ。
このドキュメンタリーについては色々いいたいことがあるが、それはまたの機会。
今回は新作の『ザ・フー アメイジング・ジャーニー』だ。

『キッズ・アー・オールライト』は彼らのライブ・パフォーマンスを中心に構成されたものだが、
本作では彼らの曲はほとんど完奏されず、
メンバーや関係者たちのインタビューを中心に構成されたヒストリーものになっている。
その分、彼らの曲を知らないで観たら、よくわからないかも。
初心者はまず『キッズ・アー・オールライト』を観よう。
しかしファンには貴重な映像が目白押し。
ザ・フー最古の映像(ハイ・ナンバーズ時代)、
名盤「ライブ・アット・リーズ」のモノクロ映像(ちょっとだけだが)、
「フー・アー・ユー」録音前のライブ演奏(アレンジが少し違う)などなど。

しかしそれにも増して印象に残ったのは、現在残る二人のメンバー
Voのロジャー・ダルトリーとGuitarのピート・タウンゼンドの話。
この2人は仲が悪いことで知られていたが、ほんとうに険悪な時代があったのだ。

ザ・フーが他のバンドと違うのは、目立たないメンバーがいないこと。
どんなバンドにも陰と陽のメンバーがいるが、キース・ムーンがいたころのザ・フーでは、
ドラマーが一番目立つ存在。
ステージはまったく動かない不動のベーシスト、ジョン・エントウィッスルでも、ベースを弾くと
驚異的なフレーズの連続で、目が離せない。
そして曲のほとんどを作っているギターのピート・タウンゼンドは、派手なアクションを繰り出す。
そんな中では、いくらヴォーカルのロジャー・ダルトリーががんばっても、地味で普通に見えてしまう。

そのことを一番良く知っているのが、本人のロジャーで、とても辛かったようだ。
他の三人はドラッグざんまいなのに、「のどに悪いから」と一人やらないので仲間外れ。
もともとメンバー随一の不良で、バンド・リーダーだったのに、
オリジナル曲が中心になると、バンドの力関係が曲を書くピートに流れ、
ステージではドラムのほうが目立ってしまう。
あげくの果てにはケンカをしてリーダーなのにバンドをクビになり、
ワビを入れてバンドにやっと戻ったという悲しい話が語られる。

ロジャーがバンドからいなくなったことについて、ピート・タウンゼンドは
「俺は天才、キースもジョンも天才だが、ロジャーはふつうの人。
それをわかってやれなかったことを反省した」とまで言う。
ロジャーも「あのことでふっきれた。俺は自分ではなく、バンドの声として生きることを決意した」と言う。
「トミー」もピート・タウンゼンドが自分自身で歌うつもりだったところを、
ロジャーの努力の甲斐あって「トミー=ロジャー」というイメージをものにする。
しかし、その裏でケンカは絶えず、スタジオでは殴り合いのけんかになり、
ギターで殴られたロジャーが失神する事件も。

しかしキースが死に、ジョンも死に、メンバーは2人きりになり、ようやく2人は面と向かい合える存在になり、
今では、「お互いを必要な存在」として認めるようになった姿が感慨深い。
そこまでは本当に長い道のりだったんだなあと。

あとはあまり知らなかったベーシスト、ジョン・エントウィッスルの人生。
ツアー人生を愛していた彼は、ザ・フーが80年代に一時解散した後も同じような生活をしたく、
バンドを組んでツアーをするが浪費がひどく、彼の経済状態を救うために、
何度も再結成ツアーをしなければならなかったこと。
そしていよいよ全米ツアーという日の前日にラスベガスで(よっぽどうれしかったのかなあ)、
娼婦を買って部屋でドラッグをやって、そのまま死んでしまったこと。
最後までロックだったなあと。。

そんなザ・フーの道のりを勉強したあとは、いよいよ来月の来日を待つばかり。
僕は11月19日に行きます。
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by mahaera | 2008-10-24 09:59 | 音楽CD、ライブ、映画紹介 | Comments(0)

アメリカン・コメディって観ますか? ベン・スティラー

「アメリカでは大ヒット!」なのに、日本では劇場公開が見送られるジャンルがある。それはコメディ。
日本ではアメリカン・コメディはヒットしないというジンクスがある。
たとえば主演作は必ずと行っていいほど、その週の興行成績のトップになるベン・スティラー、アダム・サンドラー、ウィル・フェレルといったスターの作品でも、かなりの確率でDVDスルーになってしまうのだ。
え? 3人とも知らない? 仕方がない。日本で公開しても単館だったり、その人の名前を出していないんだから。

なかでも日本で比較的知られているのはベン・スティラー。
『メリーに首ったけ』の主人公はキャメロン・ディアスじゃなくて、彼女に惚れるベン・スティラー。
あとはロバート・デ・ニーロと共演した『ミート・ザ・ペアレンツ』、
SFXを多用したファミリー映画『ナイト・ミュージアム』の3作品はヒット。
でも、僕が彼の映画を好きになったのは『ズーランダー』。
スティラーが一流モデルで、マレーシア首相の暗殺を阻むという、くだらないギャグの連発なんだけど、わかる人にしか受けないだろうなあ。
ここで主人公のズーランダーのライバルで出ているのが、彼の盟友オーウェン・ウィルソン。
彼もまたおかしくて、ベン・スティラー映画にオーウェンが出ていないとさびしい。
『ロイヤル・テネンバウムズ』でも共演していたが、本当に仲がいいんだろうなあ。
その二人が往年のテレビシリーズの映画版リメイク『スターキー&ハッチ』で共演したけど、日本では劇場公開されず。ま、出来は今ひとつ。
まあまあ良かった『ポリーmy Love』もDVDスルー。
ジャック・ブラックと共演した『隣のリッチマン』もDVDスルー。
『ドッジボール』は劇場公開されたけど、主演じゃないし。。
散発的にドリュー・バリモア共演の『おまけつき新婚生活』が劇場で公開されたけど話題にならず。

そんな状況のなか、アメリカでは大ヒットし興行ランキング1位になった『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』が日本でお正月映画として公開される。もともとはこの時期に上映されるのはハリー・ポッターの新作だったんだけど、公開が半年延びたので、代役らしいが。。。
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』、ひどい映画です。
これは褒め言葉で、くだらないことを一生懸命やる、とことんやるベン・スティラーはすごい。共演のジャック・ブラックもすっかりかすんでしまうほど。

まだ彼の映画を観ていない人がいたら、まず『ズーランダー』を観て欲しい。あれに彼の芸風が集約されている。
『ミート・ザ・ペアレンツ』と『メリーに首ったけ』は、彼に限らなくても、映画としての出来がとてもいいので、お勧め。
同じくらい『ロイヤル・テネンバウムズ』も好きだけど、あれは監督の映画だから。
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by mahaera | 2008-10-17 10:00 | 映画のはなし | Comments(0)

イギリスの少年A 映画『BOY A』

さて、『手紙』を観た翌日、試写で11月公開のイギリス映画『BOY A』を観た。
タイトルどおり、主人公はもと「少年A」。
10歳のときに犯したある罪で服役し、刑務所の外に24歳になって出る。
貴重な青少年時代に服役してたせいか、体は大人でも中身は子どものようだ。
彼はジャックと名前を変え、誰も知らない場所で新たな人生を送り始める。
そんな彼を支えるのは、父親のように親身になってくれるソーシャルワーカーのテリーだ。
運送会社で働く彼に、やがて友人や恋人ができる。
愛する人には本当のことを打ち明けたいと思うジャックだが、テリーは絶対に口外するなと思いとどまらせる。

世間では、かつて社会を騒がせた「悪魔の子=少年A」が出所し、どこかで暮らしていることが話題になっていた。
現在の顔がモンタージュで作られ、新聞のトップを飾る。ネットでは懸賞金がかけられる。
ジャックは目立つことを避け、真面目に生きようとするが、世間はそんな彼をまだ許していなかった。

前日に観た『手紙』と設定は似ているが出来は雲泥の差。
『手紙』は犯罪者の家族なのに対し、こちらは出所した犯罪者だが、世間の目を避けてなんとか生きようとしているところは同じだ。
同じように工場で働き、友人や彼を好きになる女性も出てくる。
ただしこちらのヒロインは沢尻エリカじゃなくて、「白鯨」とあだ名される太目の女性。
地方の運送会社に沢尻エリカがいたら、リアリティがない。
この彼女は沢尻エリカのように目立つショットもなく、すんなりジャックの物語に溶け込んでいる。

観ていて思ったのは、こちらはちゃんと時間をかけて少しずつ主人公ジャックの良さが観客にわかり、
彼に共感できるように作られていること。
『手紙』で足りなかったのは主人公の魅力だ。
ただ暗いというだけで、何で彼が女性にもてるかもサッパリだった。
暗い中にもちょっとしたやさしさを垣間見せるとか、そうした描写がなかったので説得力がなかったのだろう。
本作のジャックは、少年のような無垢さと小動物のような怖れを併せ持っている。
俳優の力量かもしれないが、ここはやはり演出力の差も大きいのだろう。

日本でも「酒鬼薔薇」少年が社会復帰したことが前に話題になっていた。
興味本位に彼を探し回ることは、この映画で世間が主人公を追い詰めていくことと同じだろう。
そんなことを考えさせてる佳作だった。
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by mahaera | 2008-10-10 10:01 | 映画のはなし | Comments(0)

エリック・クラプトン『ピルグリム』

90年代以降のクラプトンにはほとんど興味がなく、一度「チェンジ・ザ・ワールド」がヒットしていたらくらいに武道館に行ったんですが、客層がもうロック好きの人たちではなく、「おしゃれだから来ている」といった感じで、嫌になりました。アンコールでやる「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」もとってつけたようで。

ここ最近、自分の中ではクラプトンへの興味が上がってきたのですが、そのきっかけがデレク&ドミノスのライブだったりするので、70年代に入るころの彼の演奏が中心でした。
先月、町田のディスクユニオンで、クラプトンの98年の「ピリグリム」とその次の2001年の「レプタイル」が二枚で1000円しなかったので買いました。あなどっていたのですが、これらが実にいいのです。当時、ジャケットが嫌で聴かず嫌いだったことを後悔しました(笑)

で、アルバム『ピルグリム』です。静かなゆったりとしたリズムの曲が多く、ブルース色はほとんどありません。一曲目の「マイ・ファザーズ・アイズ」アルバムの中で一、二を競う名曲です。毎日一回は聞きたくなります。続いて二曲目の「リヴァー・オブ・ティアーズ」は全曲の余韻を受けながらのバラードです。これもいい。クラブっぽいサウンドの「ピルグリム」は深夜の都会派色男エリック(笑)が切々と歌い、これも意外にムーディながらも声にぴったり合ってます。

あとディラン好きの僕としては9曲目の「ボーン・イン・タイム」は外せない。もともとディランの90年のアルバム「アンダー・ザ・レッド・スカイ」に入っている名曲で、もとがいいのだが、ディランが歌うのでその良さはほとんど一般人にはわかってもらえなかった。クラプトンが歌うことで、よりこの曲の良さがわかりやすくなったと思う。切ない愛の歌だ。

トータルで80分。LP時代なら二枚組になるほどのボリュームだが、一気に聴きとおせる。邪魔にならない音楽だからかもしれないが、こちらもクラプトンと一緒に歳をとったということなのか。とにかくここしばらく、僕の愛聴盤になっている。
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by mahaera | 2008-10-09 10:09 | ぼくの音楽・バンド活動 | Comments(0)

帰国しました

先週の土曜日に帰国しました。
成田着6:30という、その日一番早い到着便だったため、空港はガラガラ。
到着ロビーの売店も開いてませんでした。
成田7:15発のリムジンバスに乗ったら、昼前に家に到着。

風呂入って、朝飯食べて、さあ寝ようとしたら、向かいの公園から大きな音楽が。
僕が住んでいるマンションの隣が保育園なのですが、そこの運動会の日でした。
「みなさーん、空を見て下さい。いいお天気ですねえ!」
と先生が園児に話しかける中、なんとか眠りにつこうと努力。
バンコク→成田の飛行時間は6時間もなく、食事だなんだでほとんど寝ていないので疲れてはいたのですが…。
それでも意識を失ってふと目を覚ますと、いつのまにか外は静かになっていました。

みなさんは日本に帰ったら、何を食べたいですか?
この日は、アジの開きと、夕飯は和風のカレーでした。

さて、月末にブルースバンドのライブ、もうひとつのバンドの練習もそろそろ入るので、指をならさないとと思っています。
バンド活動の近況については、また報告します。
あとは仕事のまとめですね。
原稿書きはこれからなので。
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by mahaera | 2008-10-09 10:04 | 日常のはなし | Comments(0)

映画『20世紀少年』を観て

帰国翌日の日曜日、楽しみにしていた映画『20世紀少年』を観に近くの劇場へ行ってきました。
なぜか小学生の息子も観たいらしく、一緒に連れて行きました。
予告編の覆面や、巨大ロボット、「せかいせいふく」にひかれたから?

映画は三部構成で公開される第一回目。
膨大な原作マンガの67巻ぐらいまで。時代でいうと「2000年12月31日の事件」です。
で、率直な感想。

マンガと同じ。

映画ならではのオリジナリティは皆無。監督や製作者たち、金は使っても頭は使っていない。
連載マンガだと毎回、次に興味をつながなくてはならないので、
とにかく(あとでがっかりされても)引っ張りや盛り上がりを作らなければならない。
しかし映画は、2時間ぐらいを標準に、クライマックスを作っていかねばなりません。
観始めて一息つく20分過ぎ、45分ごろにも小さな盛り上がりも必要で、最後2030分ぐらいに一気にクライマックスへと持っていく。

しかし原作マンガをほぼ忠実に映像化したこの作品では、そんな映画鑑賞時間の起伏を無視しており、
まるで大河ドラマの総集編のように事件がだらだらと連ねられ、途中で集中力がなくなってきてしまう。
そして原作でも弱かった「ともだちの正体は誰か」「過去にいったい何があったのか?」という謎解き部分が、よりどうでもよくなっている。
ふつうよくできたミステリーの場合、最初に登場人物たちをさらりと紹介し、その中から犯人を探す。
原作でも少年時代の秘密基地の友人たちの中に、カルト教団「ともだち」の首謀者がいるのではないかという設定があるが、
しかしマンガでは、あとから「あ、あいつもいた」「もうひとりいた」と増やしてしまっており、これでは謎解きにならない。
映画ではそれがいっそう進み、主人公たちは事件に対応しているだけで、一向に過去の謎解きをしようという気配がない。
主人公たちが謎解きをしないので、こちらもそんな設定は忘れてしまい、ただ、事件が起きて、流れていくだけになる。

原作の連載が始まったのは1999年ごろで、カルト教団「ともだち」の描写は、ロックコンサートを開いたり、選挙に出たり、テロを起こしたり、「絶交(ポア)」したりと、オウム真理教そのままだ。
オウムの発想自体が、小学生の考える世界観と同じことに、作者はインスピレーションを得て、「これはやばい」と思ったのだろう。
地下鉄における毒ガス・テロなんて、まるでショッカーのやることだし。
ただ、オウムが現代的だと思ったのは、それまで赤軍派にしても違法で隠れて活動していたのに対し、秘密組織でも何でもないこと。
まさかそんなオープンな組織がテロを行うとは誰も思っていなかったのだ。

マンガでも、そのカルトぶりやそれに気づかずに受け入れてしまう社会の怖さの描き方はいまひとつだったが、
映画ではそのあたりを意識的に切り捨ててしまい、「ともだち」が単なる秘密組織になってしまったのが残念。
教団員の日常とか幼児性、そして何で入信者が多いのかをもっと説得力を持って描けば良かったのに、
あれじゃショッカーに洗脳された戦闘員で、怖いというより、笑ってしまう。

マンガで僕が印象的だったエピソードや小ネタが消え、残念な部分もある。
オッチョも何でタイであんなことをしていたのか、呼ばれたら迷わず日本に来てしまったりとか、説明省きすぎ。
キャラクターの描写がないまま、エピソードを消化していくので、たぶんマンガを読んでいない人には感情移入できないのでは。

原作マンガを最後まで読んでいないので、今後どうなるかわからないが、
第一章を見た限りでは、それなりに楽しめたけど、「映画」としてはなってないとハッキリ言える。
100点満点で40点ぐらいだ。
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by mahaera | 2008-10-09 10:03 | 映画のはなし | Comments(0)

ひどかったなあ 泣けません 映画『手紙』

ケーブルテレビで日本映画『手紙』を観た。
少し前に話題になった作品で、新聞連載小説が原作。
殺人を犯して服役中の兄を持つ弟が主人公。
兄弟二人暮らしの兄が、弟を大学へ行かせるお金のために殺人を犯してしまう。
弟は大学を辞め、世間の冷たい目を避けながら仕事を転々として暮らしている。
殺人犯の弟とわかればアパートも借りられず、また会社もクビになるからだ。
ある地方の工場で働く彼を、食堂で働く沢尻エリカが好きになる。
しかし彼はその気持ちを受け取れない。
弟にはお笑いで成功したいという夢がある。
東京へ出た彼は、お笑いコンビで成功し始める。そして富豪の娘とも恋仲になるが、
有名になることはまた兄が服役していることが暴かれることでもあった。
お笑いをあきらめ、富豪の娘とも別れた彼を支えるのは、沢尻エリカだった。
兄を憎む弟は出紙を書くことを止めるが、兄からの手紙は続く。。。

ものすごいベタな映画だった。
映画というより、昼の帯ドラマのような感じ。
登場人物たちの次のセリフが予想通りだし、悲しければ泣く、辛ければ暴れて部屋のものを壊す、
陳腐としかいいようのない展開と表現で、泣けるどころか、途中から失笑という感じになってしまった。

ここまでやらないと、みんなストーリーとか、登場人物の心情がわからないのかなあ。
たぶん、、登場人物の心情は全部脚本にセリフかアクションで書かれているのだと思う。
でも映画でしょう。
画面の人物は笑っているんだけど、観客は「本当は心の中では辛いんだろう」と思って泣けるわけで、
先に号泣されちゃうとねえ。

犯罪者の家族が社会の冷たい視線を受けながら生きていくというのがテーマなのだろうが、
スターが沢尻エリカだけなせいか、彼女のアップやショットが多すぎで、画面が散漫。
脇役なのに出すぎなのだ。
主人公への偏見もベタで、「いまどきなあ」の感もある。
主人公と恋仲になるのが富豪の娘(大きなテーブルにワインを給仕する雇い人がいたりする描写には失笑)というのも。。。
案の定、彼女には婚約者がいて、その婚約者が幸せな2人の部屋に押しかけ、
「こいつの兄は犯罪者だ」「二度と彼女に近づかないでくれっ!」と叫ぶ。まるで韓国ドラマかっていう展開。

最後は主人公が兄の気持ちを思いやり、かつての相棒と再びコンビを組んで刑務所に慰問公演に。
兄の前で芸をする。弟の舞台に立つ姿を見て、手を合わせて号泣する兄。涙ぐむ弟。って違うだろ。
そこは兄は弟のお笑いに受けて笑っている顔をしているが、心で泣いていると想像させるとか、
弟だって泣きたい気持ちを隠しながら芸しているとか、そういうところが本来感動を呼ぶんじゃないかと。

ここ一年ぐらいに観た映画の中では『涙そうそう』『ラブソングができるまで』ぐらい酷かったが、
ネットで見ると、みんな感動して泣いているようだ。
ここまでわかりやすくしなけりゃわからないようなら、小津安二郎の『東京物語』みてもチンプンカンプンだろうねえ。

点数つけるなら、マイナス20点。
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by mahaera | 2008-10-09 10:02 | 映画のはなし | Comments(0)